異世界転生する話が大好きなお前らのためにコミュ症の私が現実世界の楽しさを教えてやるよwww

円田時雨

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橋本友希の学校生活

ボクっ娘!

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「いてっ! ちょっと……」
「ぅゎっ! すいませんすいませんすいませんすいませんすいません!」
 あの時のコミュ障(私の推測だけど)さんだった。
 私の顔をギロりと睨みつけて、溜め息をつきつつさっさとどこかへ行ってしまった。
「ぁ……ぁあの……」
 なんで話しかけたのか、私にもよく分からなかった。
 ずーっと誰かに話しかけようとしていた時に溜まっていたなにかが、ここで弾けたのかもしれない。
「なにか用かしら?」
 くるりと振り返って返事をしてくれた彼女は、堂々たる顔で私をキッと睨んだ。
 やっぱり悪いことしちゃったのかも……。
「あの……ぇぇっと……さっきは……すみませんでした……」
 彼女はヤレヤレと言わんばかりの顔をして、
「気にしないで。僕は怒ってないから」
そう言い残すと、腰よりちょっと上まで伸びた髪をたなびかせて去っていった。
 ……ん? 僕? ボクっ娘? もしかしてボクっ娘? ボクっ娘だボクっ娘だ! スゲェ本物初めて見た……。
 私はそこで決心した。絞り過ぎて水分なくなった濡れぞうきん以上に硬い覚悟を決めた。
 私、あの娘と友達になりたい。なってやる! 人生で初めて自分で友達を作るんだ。アミの時みたいな偶然の産物じゃなくて、自分で自分の友達を作るんだ! 
 私は彼女を追いかけて、ベストタイミングを狙って話しかけようとした。
 …………まるで隙がない。どうしようどうしようどうしよう……。
 ええい、こうなったら当たって砕けて爆発四散するだけだ! タイミングなんてどうでもいいから話しかけてやる!
「あ……あの……っ!」
 彼女はくるりと振り返って、マジで溜め息をついた。
 悪いことしたな……。
「なにかしら……? まさかここまでつけてきたんじゃないでしょうね……」
 その……まさかです……。
「ぇと……その……」
 ダメだ。上手い言葉が見つからない。
 僕と契約してお友達になってよ! なんて言ったら引かれるに違いないし……。
「私……私と……その……」
「あなたと……なに? 僕が君になにかしたらいいのかしら?」
 ちょっとイライラしたような声が返ってきた。
 マズイ。このままじゃ嫌われる……! なんとかしなきゃ!
「私と……ぉぉぉおお……ぉぉ友達に……友達になってください!」
 彼女の呆気に取られた顔は、おそらく呆気に取られるという言葉を顔全体で表していると言っても過言ではないだろう。そんだけ? って言いたそうにしているのが全面的に現れている。
 私にとってはそれがとっても重要なことなんです……。
 彼女はリアルなジト目をして私の肩にポムっと手を置いた。
「ごめんなさい……。僕は友達を作らない主義なの。あなたはきっとすごい勇気を振り絞ってさっきの言葉を言ってくれたもかもしれないけど、本当にごめんなさい。僕は友達を作る気はないので」
 彼女はくるっとUターンした。
「ぁの……せめて……名前を教えてくれますか?」
 彼女は立ち止まって、しばらく沈黙した。
「ごめんなさい。僕は人に名を名乗らない主義なの」
 そう言ってさっきよりも速いスピードで去っていった。
 もう追いつこうという気はない。

 友達を……作らない……? 

 名乗ることすら……しないの……? 

 どんなことがあったのか知らないけど、それってちょっと贅沢過ぎない? 
 それでも、1度決めた覚悟を無駄にする気は無い。せめてあの人から名前を聞こう。
 簡単な事だよね。ワットイズユアネームと言ったら私の勝ちだもん。
 家に帰ると、アミが大人しく待っていた。
「おかえりなさい友希! どう? どう? 準備は順調なの?」
 答えづらい……。
 アミの純粋な心が鋭く突き刺さる。ウソをついて誤魔化そうなんて考えたけど、そんなことしたらダメに決まってるよね。
 なんて答えたらいいのかな……?
「ぇと……ぁぁの……ちょっと……苦戦中です……」
 ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……。
 これで良かったのかな? 何が正解なのか分からないよぉ……。
「そっか……。でも、きっとアミならなんとかなるわよ! 私が保健するわ!」
 ……多分それを言うなら保証するじゃないのかな? 
 アミは私の文字通り目の前に手を差し出して、親指を下に立てた。
 え……? 地獄に落ちろってこと……? なの……?
「アレレ? 友希、私間違っちゃったのかしら? これってグッピョンのポーズだと思ってたけど……」
 いつも通りなアミをみて、心の底から安心した。なんだか……すっごく……!
「親指を上にするんですよ……。逆です。ぅぅ……」
 あれ? なんでだろ……。
 なんで泣いてるんだろ……私……。
「え……ちょっと……ゴメンね友希! まさか泣いちゃうなんて……。ゴメンなさい!」
「ぃぇ……いえ……違うんです……。アミさんに励ましてもらって……ぅぅぅぅ……嬉しいんです……」
 それを聞いたアミは、両手を大きく広げた。
「友希! ギューッて抱きしめてあげる!」
 私は無意識のうちにアミに抱きついていた。お母さんみたいな温もりを、体全体で感じていた。
「あ、そうだッ! 今日は私がお料理作ってあげる!」
 ……え?
「ぁの……。そこまでしなくても……」
「大丈夫よ! 友希のために、私頑張るモン!」
 アミのキラキラした目を見ると、今日くらいは頼んでみようという気がした。
「ぇと……じゃあお願いします……」
「うん! 私にまッかせてねッ!」
「はい……!」
 と、勢いよく返事したのはいいけど……。
 アミって料理出来たっけ?
 ボンッ!
「キャッ!」
 ェエ? 何事っ?
「どうしたんですか?」
「ゴメンなさい……友紀ィ……。卵を目玉焼きにしよっかなーって電子レンジにいれたら……爆発しちゃったよぉ……グスッ」
 アミは今にも泣きそうな顔になっていた。

 ものすごく懐かしいネタを披露してもらった気がした。
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