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橋本友希の学校生活
ボクっ娘は友達を作れない
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夕日が廊下にさしてこんで赤く照らされている。柱や窓から伸びる影は、赤く照らされた廊下をシマシマ模様に着飾ってなんかダサい。
目眩だろうか……? 定期的にぐにゃぐにゃと歪んだ見えるのは。
気持ち悪いので壁に手を付きながら歩き始める。壁のデコボコでちょっとした痛みを感じる。
夢じゃ……ない?
「ぁ……っ。ぁの……」
永遠に孤独の続く廊下の先に、あの時のボクっ娘がいた。
髪をたなびかせてくるりと振り返った彼女は、軽蔑するような目で私を見た。
「この前は……その……ご迷惑を…ぉぉお掛けしてすみません……でした」
彼女はそれを聞いて、まるでゴキブリを見るような目で答えた。
「そのことについてはもういいわ。僕は気にしてないから。でも、もう金輪際、一切話しかけてこないでくれる?」
「……ぇ?」
「友達を1人も作れないような臆病者のあなたと話したくないの。害虫さん」
害……虫……?
そんな……。
やっぱり私は…………私は……っ!
……って夢なのかよ! 今の夢かよ! 夢オチかよ!
まさか夢にまであの人が出てくるなんて。それに夢にまであの言葉が出てくるなんて……。そう言えば夢の中でほっぺたつねっても大して意味ないしな……。
ヤレヤレとばかり溜め息をつこうとするといきなりドアが開いた。朝から仕掛けてくるドッキリのネタばらしみたいな勢いだ。
「友希! 大丈夫? ゴキブリでも出てきたの?」
アミが転がるような勢いで部屋に入ってきた。両手には殺虫スプレーが2本ずつ握られている。
それじゃスプレー発射出来ないんじゃ……?
「害虫が害虫がってうなされてたけど大丈夫?」
うなされるほどヤバかったんだ私……。
「ぇと……大丈夫です……。ただの寝言ですから……」
アミはホッと溜め息をついて、ニッコリと微笑んでみせた。
「友希ッ! 準備頑張ってね!」
ずるいよアミは……。
眩しすぎて直視できないその笑顔に、私はコックリとうなずいた。
「頑張ります……!」
とは言ったものの、正直かなり不安だった。
さっきまで見てた悪夢のことだってあるしなぁ……。ホントに嫌われてたらどうしよう。
そんなことを考えていたらいつの間にか学校に着いていた。
教室に入ると、ボクっ娘と目が合ったので思わず目をそらしてしまう。するとボクっ娘がスッと近づいてきた。
「昨日はゴメンなさい、酷いことを言ってしまって」
「ぇ……ぃぇ……いえ気にしてないので……」
「そう……だったら良かったわ。てっきりあなたはそれで傷ついてるのかと思って気にしてたの。でも僕はあなたと、みんなと友達になる気はないから」
そう言って、彼女は去っていった。
でも前去る去る詐欺して追いかけたもんなぁ……。
今回もまた追いかけようかと思ったけど、彼女の意思は硬そうだ。あんまり軽率に関わろうとすると嫌われるかもしれない。
さて、今日学校でやることも、これまた大したことないものばかりだった。
おばあちゃん理事長からのありがたーい学校設立の歴史語り(これで何回目なんだろ?)と来年から始まる授業に向けて教科書を受け取るだけだ。
カバンがアホみたいに重くなるくらいしかやることがないってことだよね。
そんな日の休み時間。
食堂から校舎の間にある中庭と呼ばれるこじんまりとした芝生広場に、彼女が寝転がっているのを見かけた。
その目は空ではなく、何か別の……何かを見つめているようだった。
しばらく私が眺めていると、こっちの視線に気付いてパッと体を起こした。
「ぁっ……」
私が小さく声を漏らすと、彼女はこっちにやって来た。
「あなたは……。ずっと僕を見ていたの?」
「すす……すみません……たまたま見かけたのでつい……」
それを聞いて、彼女はクスクスと笑い始めた。
今のギャクとかじゃないんだけどな……。布団が吹っ飛んだの方がまだ笑えると思う。
あ、今日布団干すつもりだったのに忘れてた……。
「クスクス……ゴメンなさい。あなたっておもしろいわ」
「へ?」
「だってあなた、人と話す時にずーっと嫌われないようにしてるもん。一言一言を慎重に選びすぎてる。会話する度に心理戦してるみたいでつい笑っちゃったわ。言葉を交わすことって、そんなに難しいことかしら?」
そう言うと、彼女はまた遠い目をした。
「会話をするだけなら……ね」
彼女が囁くようにか細い声でそう言ったのを、私は聞き逃さなかった。
「あの……。1つ……教えてくれませんか?」
「何かしら?」
「どうして、友達を作ろうとしないんですか? ……私だって……作ろうとしてるんだから……きっとあなたなら友達100人でおにぎり食べるのだって出来るはずです。でも……なんで……?」
彼女はフーッと溜め息をついて、しばらく間を作ってから口を開いた。
「あなた、僕と出会ってスグに僕がコミュ障だって見抜いたでしょ?」
私はコックリとうなずいた。
「でも私はコミュ障じゃない。いや、正確にはコミュ障じゃなかった」
「どうして……コミュ障なんかになっちゃったんですか……?」
彼女は遠い目をして、しかしどこか遠くを睨むような目をして答えた。
「小学校の時に、僕はイジメにあったから」
目眩だろうか……? 定期的にぐにゃぐにゃと歪んだ見えるのは。
気持ち悪いので壁に手を付きながら歩き始める。壁のデコボコでちょっとした痛みを感じる。
夢じゃ……ない?
「ぁ……っ。ぁの……」
永遠に孤独の続く廊下の先に、あの時のボクっ娘がいた。
髪をたなびかせてくるりと振り返った彼女は、軽蔑するような目で私を見た。
「この前は……その……ご迷惑を…ぉぉお掛けしてすみません……でした」
彼女はそれを聞いて、まるでゴキブリを見るような目で答えた。
「そのことについてはもういいわ。僕は気にしてないから。でも、もう金輪際、一切話しかけてこないでくれる?」
「……ぇ?」
「友達を1人も作れないような臆病者のあなたと話したくないの。害虫さん」
害……虫……?
そんな……。
やっぱり私は…………私は……っ!
……って夢なのかよ! 今の夢かよ! 夢オチかよ!
まさか夢にまであの人が出てくるなんて。それに夢にまであの言葉が出てくるなんて……。そう言えば夢の中でほっぺたつねっても大して意味ないしな……。
ヤレヤレとばかり溜め息をつこうとするといきなりドアが開いた。朝から仕掛けてくるドッキリのネタばらしみたいな勢いだ。
「友希! 大丈夫? ゴキブリでも出てきたの?」
アミが転がるような勢いで部屋に入ってきた。両手には殺虫スプレーが2本ずつ握られている。
それじゃスプレー発射出来ないんじゃ……?
「害虫が害虫がってうなされてたけど大丈夫?」
うなされるほどヤバかったんだ私……。
「ぇと……大丈夫です……。ただの寝言ですから……」
アミはホッと溜め息をついて、ニッコリと微笑んでみせた。
「友希ッ! 準備頑張ってね!」
ずるいよアミは……。
眩しすぎて直視できないその笑顔に、私はコックリとうなずいた。
「頑張ります……!」
とは言ったものの、正直かなり不安だった。
さっきまで見てた悪夢のことだってあるしなぁ……。ホントに嫌われてたらどうしよう。
そんなことを考えていたらいつの間にか学校に着いていた。
教室に入ると、ボクっ娘と目が合ったので思わず目をそらしてしまう。するとボクっ娘がスッと近づいてきた。
「昨日はゴメンなさい、酷いことを言ってしまって」
「ぇ……ぃぇ……いえ気にしてないので……」
「そう……だったら良かったわ。てっきりあなたはそれで傷ついてるのかと思って気にしてたの。でも僕はあなたと、みんなと友達になる気はないから」
そう言って、彼女は去っていった。
でも前去る去る詐欺して追いかけたもんなぁ……。
今回もまた追いかけようかと思ったけど、彼女の意思は硬そうだ。あんまり軽率に関わろうとすると嫌われるかもしれない。
さて、今日学校でやることも、これまた大したことないものばかりだった。
おばあちゃん理事長からのありがたーい学校設立の歴史語り(これで何回目なんだろ?)と来年から始まる授業に向けて教科書を受け取るだけだ。
カバンがアホみたいに重くなるくらいしかやることがないってことだよね。
そんな日の休み時間。
食堂から校舎の間にある中庭と呼ばれるこじんまりとした芝生広場に、彼女が寝転がっているのを見かけた。
その目は空ではなく、何か別の……何かを見つめているようだった。
しばらく私が眺めていると、こっちの視線に気付いてパッと体を起こした。
「ぁっ……」
私が小さく声を漏らすと、彼女はこっちにやって来た。
「あなたは……。ずっと僕を見ていたの?」
「すす……すみません……たまたま見かけたのでつい……」
それを聞いて、彼女はクスクスと笑い始めた。
今のギャクとかじゃないんだけどな……。布団が吹っ飛んだの方がまだ笑えると思う。
あ、今日布団干すつもりだったのに忘れてた……。
「クスクス……ゴメンなさい。あなたっておもしろいわ」
「へ?」
「だってあなた、人と話す時にずーっと嫌われないようにしてるもん。一言一言を慎重に選びすぎてる。会話する度に心理戦してるみたいでつい笑っちゃったわ。言葉を交わすことって、そんなに難しいことかしら?」
そう言うと、彼女はまた遠い目をした。
「会話をするだけなら……ね」
彼女が囁くようにか細い声でそう言ったのを、私は聞き逃さなかった。
「あの……。1つ……教えてくれませんか?」
「何かしら?」
「どうして、友達を作ろうとしないんですか? ……私だって……作ろうとしてるんだから……きっとあなたなら友達100人でおにぎり食べるのだって出来るはずです。でも……なんで……?」
彼女はフーッと溜め息をついて、しばらく間を作ってから口を開いた。
「あなた、僕と出会ってスグに僕がコミュ障だって見抜いたでしょ?」
私はコックリとうなずいた。
「でも私はコミュ障じゃない。いや、正確にはコミュ障じゃなかった」
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