異世界転生する話が大好きなお前らのためにコミュ症の私が現実世界の楽しさを教えてやるよwww

円田時雨

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橋本友希の学校生活

永久不滅の剣!

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「どうして……コミュ障なんかになっちゃったんですか……?」
 彼女は遠い目をして、しかしどこか遠くを睨むような目をして答えた。
「小学校の時に、僕はイジメにあったから」
 イジメ……。
 私の脳裏にその頃の記憶が蘇る。私はイジメって言っていいのか分からないけど、受けていたことに変わりはない。
 全然喋らないからって人形呼ばわりされ、罵詈雑言を嵐のように浴びせられた。
 あの時の記憶が……。
「なんで……ぃイジメられたんですか……?」
 彼女は覚悟を決めたように私に向き直った。
「親に変な名前付けられたからね。幼稚園の頃は何事もなく平和だったんだけど、小学校の先生が私の名前を変だっていじり始めたのがキッカケでイジメられた」
 変な名前……?
「ぁあの……お名前は……?」
「あんまり人に言いたくない名前なんだけどね。ここまで話したんだから言わないわけにはいかないか」
 1つ、2つと溜め息をついて話を続けた。
「僕の名前は『佐藤永久不滅の剣エターナルブレイド』っていうの。俗に言うキラキラネームってやつ? 私はその被害者ね」
 そんな名前のアニソンもあったな~。
 じゃなくて、エターナルブレイド? 何その名前。しかも名字が佐藤って……。日本で一番有名な名字と、世界で一番珍しい名前の融合じゃん。
 まぁなんて言うか、それよりもツッコムべきところはいくらでもあるんだけどね……。
 割とマジで人間の名前なのかと疑いたくなるようなキラキラネームだ……。
「ぇ……エターナルブレイド……?」
 エターナルブレイドさんはくすくすと笑った。
「そうよね、普通そうなるよね。でも僕は、この名前が原因でいじめられた」
 キラキラネームと言っても、幼稚園時代であればかっこいい名前だとか珍しい名前だとかで友達に大人気だったらしい。
 しかし子どもの純粋な気持ちは時に残酷なものになるのだ。
 小学校に入ると、最初は幼稚園時代と変わりはなかった。ところが1人の男の子がそれを笑いの種にして軽くいじったところから事態は変わっていった。
 クラスのいじられ役に自然と抜擢されて、やがてそれがどんどんエスカレートして遂には暴力にまで発展してしまった。
 これなら先生にチくっちゃえばまだ解決していた問題かもしれない。でもそんなわけにはいかなかった。
 先生までもがおもしろがっていじり始めたのだ。
 こうなったら誰にも相談なんて出来るはずがなかった。
 親に言えばと考えたこともあったらしいけど、名付け親にそんなこと言えるはずがない。児童相談所とかコールセンターなんてのにも相談できるわけない。こんな恥ずかしい名前なんて知らない人に言って、しかもそれでいじめられてるなんて言いたくなかった。
 中学生になっても状況は変わらなかった。
 入学式の翌日のホームルームでまず先生がいじり始め、それに便乗したクラスメイトたちがエスカレートさせていった。中学生になったら変わると思ってたのに変わらなかった。むしろ人数が増えたせいでより一層酷くなったのかもしれない。
 だから高校は知り合いのいない実家からかなり離れた高校を選んだ。人との接触を避け、友達を作るなんて行為はやめた。自己紹介の時はできるだけミジンコボイスで、名前を呼ばれる機会を最小限にするために目立つこともやめた。
 そう語ったあと彼女は空をちらりと眺めてこっちに目線を送った。
 しかしその目はこっちを向いてるのに私を見向きもしていなかった。なにも見てないかのような虚無の視線だ。
「分かってくれた? 私は友達を作りたくない理由を」
 向けられた虚無の視線を感じながら1つの疑問を口にしてみる。
「……ぁの、どうして……私なんかにそんなことを……話してくれたんですか?」
 しばらく悩んだような顔をした彼女は、クスリと笑った。
「なんでかな。なんとなくあなたは信頼出来る気がしたのかしら?」
 信頼出来るなんて……えへへ……。
「あら、そろそろ授業よ。僕は先に行くね」
 私はそう行ってツッタカターと去ろうとする彼女の肩を思わず掴んでいた。無自覚でやってたのでこの行為に気付くのは数秒あとの話だ。
「え? なにかしら?」
 目をパチくりさせる彼女に見つめ、ありったけの覚悟をかき集めた。探し物は目の前にある。友達!
「ぁの……ぁの……っ!」
「ど、どうしたの?」


 今こそ一生言えないと嘆いていた言葉をいう時が来たんだ。
 覚悟をかき集めたんだから私にだって出来るはず……。


「私と、友達になってください!」


 やや間があった。
 驚き半分嬉しさ半分みたいなブレンドの顔をした彼女は、しばらく迷ったように顔をしかめた。
「ぇと……絶対にあなたを……いじめるなんてしません! ただ私を……友達にしてください!」
 バレンタインで本命チョコを渡すツンデレみたいに顔を真っ赤にした私を、彼女は暖かい目で見つめた。少し不安げでもある。
「絶対……バカにしない?」
「もちろんです……!」
 やっぱりダメなのかな……? 私じゃ。
「……どうやら愚問だったようね。あなたがそんなことするわけないか」
 彼女は決心を固めたような顔で私を見た。しっかりと私に向かって目線を送っている。
「……分かった。友達になりましょ、あなたと」
 ぇ……ホントに……? いいの?
「フフッ、よろしくね。えっと……」
「橋本……友紀です……」
「いい名前じゃない。あ、はやく教室に戻らないとチャイムなるわよ!」
 凄いスピードで彼女は教室に向かって……あれ? 戻ってきた?
「そうだ。今日あなたの家に行ってもいいかしら? 友達の家に行くっていうのが久しぶりだからやってみたいのよ」
 え……ちょ……。
 彼女はそう言うとすぐに教室に引き返した。 
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