異世界めぐりの白と黒

小望月 白

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第二の世界

ルルの報告

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ルルの話によれば私がぷっつんしたあの時、突然強い風が吹いたという。そして私は人が変わった様にいつもと違った雰囲気に見えたらしい。


ーー風は私も何となく覚えてる



そして花が沢山舞い、とても綺麗だと思った。しかし直ぐに私を止めようと思って動こうとしたが身体が動かず声も出なかった。後から確認すれば他の護衛騎士達も同じ様な現象が起こっていたという。


そして気を張っていないと何故か私に目が釘付けになり、舞う花々の中心にいる様子をぼーっと眺めていたいと考えてしまうので、正気を保つのに手一杯だったそうだ。


「そんな事が……」 


ーーなんていうか、やっぱり……私?がやったのかな



全く自覚が無い。今同じ事をしろと言われてもやり方もわからないし、今の話を聞いても本当に自分がやったのかと疑いたくなる現象だ。


「ふんっ」


「……レイチェル様、一応お聞きしますがそれは一体何をされているのでしょう」


「え、風もういっかい起こせるかなって」


「………」


「ちょっと。その真顔やめてよ!ちょっとできるかなって思っただけなのに!」


すると見かねたルルが間に入ってくる


「レイチェル様、私の話を聞いて何か思い当たる事やお身体の事で気になる事はございませんか?」


「え?あー……んんー……ルルの話を聞いて花壇の所での事は思い出したけど、別にそれだけで特には……身体も特に大丈夫」


「そうですか。念の為もう少し休まれて下さい。まだ早いですし」


そしてふと外を見たがなんだか薄暗い。天気が悪いのかと思っていたがどうやらまだ早朝の様だった。


「わかった。じゃあ、少し休む」


私がそう言うとさっとアリネスが布団を直してくれる


「ありがとう。アリネスもルルも休んで。本当に体調何ともないから」


しかしアリネスもルルも渋るので「2人が休まないなら私も休まない。起きとく」と言って無理矢理下がって貰った。
そしてドアを閉めるギリギリまで2人とも「何かあればすぐにお呼びくださいね」と何度も言うものだから少し吹き出してしまったくらいだ。



ーーもう一眠りして、ご飯食べて、動けそうなら軽く散歩にでも行こうかな


「アリネスが許してくれればいいけど」


さっきのドアを閉める直前まで心配してくれていた2人を思い出す


「心配性ね」


漏れ出る笑いを誤魔化すかのように呟き、目を閉じた。






















「ん……」


ゆっくりと目を開けるとアリネスがいた

「おはようございますレイチェル様。もう少し眠られてても大丈夫ですよ」


しかし外はもうちゃんと明るい


「ううん。起きる」


のそのそと起き上がればアリネスが素早く手伝ってくれる


「体調はいかがですか?」


「大丈夫よありがとう。それよりアリネス、あなたちゃんと寝た?」


「……はい勿論」


ーー怪しいなぁ


「何かお召し上がりになられますか?」


「うん、ありがとう」


するとすぐに先程と同じ野菜スープとふわふわのパン、ヨーグルト、フルーツが運ばれてきた


「先程食欲はあるようでしたので、今回はもう少し品数を増やしてみました。無理はしなくてよいのでまた食べられるだけどうぞ」



ぐぅ




アリネスの言葉が終わると同時になるお腹



ーーっ!!毎度毎度……!!



「遠慮なくどうぞ」


クスクスと笑うアリネスに感謝をしつつ睨んでスプーンでスープを掬う。
ふわりと食欲を唆る香りが鼻を突き抜ける


「あれ?これさっきのスープじゃないの?もしかしてまたわざわざ作ってくれた?」


「ええ、今ご用意させて頂いた物も先程と同じ様に野菜を細かく切ってはいますが今回は香草を少し入れているのと、ブイヨンも少し使ったそうです」


「そうなの。凄くいい匂いね、ありがとう。でもさっきのスープは無駄になってしまったの?私同じのが続けて出てきても全然気にしないわよ?」


すると一瞬何を言われたのかわからないような顔をしたアリネスはすぐに「ああ」と言って微笑んだ。


「大丈夫ですよレイチェル様。あれは夜勤の使用人達の夜食に使わせて頂きましたので材料も、使用人達の手間も無駄にはなっておりません」


「それならよかった」


なんだかアリネスと向かい合って食事をするのが久しぶりな気がする。凄く楽しい。


「あっ、そういえばお茶会までもうあと3日よね。ごめんねアリネス。私ずっと寝てたから滞ってるんじゃない?」


「ご安心をレイチェル様、抜かりはありません。もう全て終わっております。
後は前日、当日に焼き菓子等を用意したりレイチェル様を着飾るだけでございます」


「……そう、ありがとう。でも私を着飾るのはいいわ」


思わず真顔で首を振るとアリネスも真顔で首を振る


「何を仰るのですがレイチェル様。あなた様の美しさを当日来られるお嬢様方にも知らしめるのです。そしてレイチェル様を崇め奉る人々を一気に増やすのです」



ーー真顔で怖い事言ってる



とりあえず聞き流しながらパンを齧る。これはクルミとレーズンが入っていた。
これも早朝に食べた物よりは少し重ためにしてくれた様だ。クルミの歯ごたえにレーズンの甘酸っぱさが合わさりどんどん食べたくなる。



「そうだアリネス。食べ終わったら私、少し身体を動かしたくて」


「舞はさせませんよ」


「ぶふっ!大丈夫。私もこれだけ寝続けてていきなりあの舞をできるとは思ってない」


思ってもみなかった言葉に思わず吹き出してしまった


「違う違う。散歩をしたくて。祈りの花ランカも見に行きたいし」


すると思ったよりもあっさりと「まあ、いいでしょう」との許可が出た


ーーまあ侍女が主人に許可ってのもおかしいのかもしれないけど


私の中であまり主従関係という意識がないので特に何とも思わないがこれも他の人からすれば『外聞が良くない』のだろうか



ーーま、どうでもいいけども



とにかく散歩の許可ゲットだ。



「じゃあ急いで食べないと!」


「花は逃げませんので、ゆっくり噛んで食べて下さいね」


「………へーい」



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