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第二の世界
メリザ
しおりを挟むーーん?聞き間違いかな?
想像もしていなかった言葉に思わず気のせいかと思って周りを見渡すとあんぐりと口を開けて固まっているワカウィー、微笑みながら無の境地のルル、小さく肩を震わせて笑っているナファリにうんうんと頷くアリネス、「あはっ」と言いながら真顔で抜刀しようとしているノメル、顔は見えないが固まっているカーヌ。そして少し前にいるウォレンの両耳は真っ赤だった。
ーー今しれっと抜刀しようとしてる奴いたな
慌ててノメルにぶんぶんと首を振るとにっこりと笑いながら頷かれた。
ーーちゃんと意味伝わったわよね?!
やや不安になりながらも前を向く
「あの………」
話しかけようとすると女性が「キャーー!」と言いながら手を前に突き出してバタバタとさせる
「ごごごごごめんなさいごめんなさいごめん!違うんです間違えました!いや、間違いでは無いんですけど間違いっていうか、あの、本当、とりあえずごめんなさいすみません」
「……大丈夫ですから落ち着いて」
「すすすすみません!そうですよね!申し訳ありません、貴重なレイチェル様のお時間を私なんががあの!」
ーーあ、だめだ話が進まない
「大丈夫です。えっと、お名前を伺っても宜しいですか?」
なんとか落ち着かせようとするとハッとした表情になった女性はモジモジとしながら小さな声で「メリザ・ランドーレと申します」と言った。
ーーん?ランドーレ?あ……
私が思い出すよりも早く護衛騎士達が反応する。皆一斉に構え再び私を守る態勢に入る。
「あああああのっ!本日はっ!先日兄が取った失礼な言動の数々をお詫びしたくて参りました!!」
「兄……」
「は、はい。お恥ずかしい話なのですが本来ならば実際に失態を犯した兄・ミザン自らレイチェル様の元へとお詫びに来るのが礼儀かとは思うのですが少々出てこられない状態でございまして。失礼を承知でわたくしが代理で参りました」
そしてガバッと頭を下げ振り絞りだす様な様な声で「先日は失礼な言動の数々、まことに申し訳ございませんでした!」と叫んだ。
「ちょ、ちょっと待って下さい!大丈夫ですよ。何なら私もかなり失礼な事をしましたし。それと……お兄様、ミザン様は臥せっておられるとの事でしたが大丈夫なのでしょうか。そんなに酷いのですか?」
そう聞くと少し顔を上げ、一瞬目があったかと思えばまたすぐに顔を反らしたメリザと名乗る女性は少し複雑そうな顔をした。
「いえ、臥せっているという表現は少々語弊があると言いますか………」
「?」
「ええっとですね……」
ーーこれはしっかり話を聞いた方が良さそうな感じよね
「あの、もし宜しければ御茶でも飲みながらお話致しませんか?お互い立ちっぱなしなのも何ですし。というか距離がその……遠いし」
そう。メリザと私の距離は最初の場所から変わっていない。なので正直真剣な話をする距離ではない。きっと側から見ればかなりシュールだ。
しかし私の言葉を聞いたメリザはビクッと肩を震わせて慌て出す
「そそそそそうですよね!レイチェル様お疲れになりますよね。倒れられていたのに」
ーーいや、有り難いけど気にして欲しいのは距離………
「申し訳ありません申し訳ありません申し訳ありません。すぐに終わらせますので!私の話などすぐに終わらせますので!なんでしたら、もう大丈夫でございます!」
そういってまたガバッと頭を下げるメリザ
ーーおおおお……どう言ったら伝わるかな
「いや、私は別に……ああ、そうですね。私も疲れますし少し休みたいです。でもメリザ様のお話も聞きたいのでどうかこちらへいらして下さりませんか?」
『御茶を』と言ったときの顔が悲壮だったのでとりあえず距離だけでも詰めよう、そう思って聞けばメリザは当然のように目の前のウォレンを気にしだす
「あの、良いのでしょうか」
ーーまあ、気になるわよね
顔は見えないがきっとがっつりと睨んでいるのだろう。メリザに少々申し訳ない。
「大丈夫ですよ。それよりこちらで少しお話を致しましょう。花壇の前でお花を見ながらお話をするなら大丈夫ですか?」
そう言ってにっこり笑うとメリザはコクコクと激しく首を縦に振る
ーー私が行ってもいいけど、私が動いたら大移動になるからメリザ様に来てもらった方がいいし、それにお花を見ながらなら少しは緊張が解けるかもしれない
「改めまして、お初にお目にかかります。メリザ・ランドーレと申します。先程は大変失礼を致しました」
俯きがちに話すメリザはウォレンにの方を出来るだけ見ないようにしているのがよくわかった
ーーまあ、とりあえず物理的な距離を詰めるのは成功と。
「こちらそこ失礼を致しました。レイチェルです。よろしくお願いします」
握手をしようとすればアリネスに後ろからスカートを引っ張られた
ーーだめなのか
仕方ないので前にアリネスにちらっと教わった『淑女風』の礼をしておいた。
ーーこれ意外と筋肉使うのよね……
なんとかプルプルしているのを誤魔化しながら態勢を戻すとメリザがこちらを見ながら「ほあー」と気の抜けた声を出していた。
「あの、メリザ様?」
「……はっ!申し訳ございません!私ったらまた失礼を!」
「ああいえ、体調が優れないなどではないのなら良いのです」
そしてメリザは少し護衛騎士達の事を気にしながらどうして盗み見をしていたのかなどを話し出してくれた。
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