最弱ダンジョン商人、ドラゴンスレイヤーになる

杉戸 雪人

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断末魔の残穢

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「あんた知らないの? 聖水詐欺。ちゃんとした聖水とただの水がよく一緒に売られているわ。酷いと全部ただの水」

とんでもない話だ。

「知りませんでした……闇のダンジョンより深い闇だ……」

そんなことをする同業者がいるなんて、信じたくなかった。俺が所属する商人ギルドでも、そんな話を聞いたことがない。

俺が「信じられない」という顔をしていると、「あんたもそういう顔するのね」とミリアが小瓶を持ちながら横目で見てくる。

「ちょっと見直したわ」
「お褒めにあずかり光栄です」

普段ツンツンしている女性の褒め言葉は、どうして価値が高く感じられるのだろうか。

心の不思議について考えていると、ネリスが両手に聖水の小瓶を持って感嘆の声を上げる。

「本物の聖水はありがたい! 私たちも手持ちが少ないんだ!」

そう、ほとんどの冒険者は闇のダンジョンを攻略する時は、聖水を用意している。というのも、生息する魔物の多くが呪いを扱う攻撃をしてくるからだ。1領域につき最低1つは必要だと聞いたことがある。

「ご要望とあらば、お売りしますよ」

これは商機しょうき

「いくらだい?」
「それぞれ一つ、金貨1枚です」
「ふむ、高いな」
「恐れ入ります」

ミリアが「高すぎでしょ!」と割り込んでくる。

「まあまあミリア。危険な場所なんだから仕方ないだろう」
「どう考えても足元見られてるわよ!」

……黒いローブはスカート状になっているため、生足がしっかりと見えている。足先まで視線を落とすと、靴先が反り返ったいかにも魔女らしいブーツを履いていた。

だが、やはり俺の視線は自然と上がってゆき――

「足元見てんじゃないわよ」
「――なまあ……失礼しました」

俺は黙って聖水をミリアに差し出した。金貨1枚分の価値はある。

ミリアは「ば、ばか。どういう意味よ!」と若干怒って、若干恥ずかしがっていたが、背に腹は代えられないと聖水を受け取った。

「こちら、ほんのサービスです。残りの聖水については、後払いしていただくことも可能ですし……ぅ、ぐっ――」

突如、脇腹に小さな痛みが連続する。
なぜかテナが俺の脇腹に猫パンチを繰り返しているようだった。

ちょっとした痛みには構わず、呆れ顔のミリアと微笑を浮かべたネリスを交互に見る。

「――こちらの聖水、全てただ・・でお渡しすることも、可能です」
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