最弱ダンジョン商人、ドラゴンスレイヤーになる

杉戸 雪人

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断末魔の残穢

08

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ネリスは俺の意志を確認したことで、少しかしこまっていた表情を崩した。やはり、彼女は笑顔がよく似合う。

「こちらとしても君の加護は助かる。できるかぎり些末な戦闘は避けたいと思っていたところだったんだ」

そう言って手を差し伸べてきたので、俺もその手をとった。

固い握手を交わしていると、「ミ゛ッ……ミ゛ゥッ……!」というたまに聞く鳴き声をテナが出した。

「ねえあんたの猫ちゃん、すっごくショックを受けてそうなんだけど」
「え、そうですか?」

テナの目は虚ろで、どこか遠くを見ていた。そんなテナの背中を、ミリアが優しく撫でている。

「あんたの主人、ヤバいわね……」
「ミィ……」

その光景を見ていると、なんだか微笑ましい気持ちになってきた。テナだって、たまには俺以外の人と話した方が楽しいだろう。ヤバいという評価は、少し気にかかるが。

ネリスも同じ気持ちらしく、にこやかにその様子を眺めていた。そして、意を決したように、人魂が彷徨う霧の先に剣を向ける。

「我々の目的は一致した。行こう」
「ええ、行きましょう」

騎士のネリス、魔法使いのミリア、アイテム屋のルウィン、相棒のテナ……世にも奇妙な組み合わせで始まったダンジョン災害攻略。

全員で歩もうとしたその時、ネリスが「なあ」と呼びかけてきた。

「ルウィン、君のその大きな背負い箱の中には何が入っているんだい?」

そうだ、きちんと説明しておかなければならなかった。

「夢と希望、ですね」
「なるほどなぁ」

ネリスとしみじみした空気を堪能していると、真ん中を歩いていたミリアがわざわざ数歩先を歩いて行き、振り返る。

彼女は人差し指を立てて口を開いた。

「なるほどなぁ…………じゃないわよ!」

俺は感動した。わざわざそれだけを言うために前に出てくれるとは。他者という存在のありがたさを、改めて彼女は教えてくれた。であれば、俺もミリアに報いるべきだろう。

「この背負い箱には、夢と希望が詰まっています」
「それは聞いたわよ」

「物凄く具体的なお話をすると――」

所持品:
 ・聖水      ×150
 ・砥石      ×2
 ・ナイフ     ×3
 ・干し肉     ×12
 ・ポーション   ×48
 ・ダンジョン日誌 ×1

「――ですね」

幸い、魔よけの加護のおかげでこうしたアイテムたちのほとんどは消費せずに済んでいた。食べ物に関しては減る一方だが。

背負い箱から引き出したかたよった商品の数々に、ミリアが一番に目を輝かせる。

「うそ……! これって全部ちゃんとした聖水じゃない! よくあるただの水じゃない! しかもこんなにたくさん……」
「え、ただの水を聖水として――!?」

――売るのか!?
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