最弱ダンジョン商人、ドラゴンスレイヤーになる

杉戸 雪人

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地獄の狂炎

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§ 火のダンジョン 第5領域 『巨人の大釜』 §

火のダンジョン、第5領域は『巨人の大釜』。円形の領域の外周を囲むのは、真っ赤な溶岩の海である。

その中心で、二人の冒険者がぐったりと身を寄せ合っていた。

そして、その二人を守るA級冒険者――幻視の魔女ウィッチサイトミリアと鎚魔導士ハンマージウォロクは、血の海を泳ぐ火龍に翻弄されていた。

「ミリアよ、なんとかならんのか!」

その龍には翼はあれど手足はなく、燃え盛る身体を大蛇のようにしならせ、溶岩から姿を現わしては隠れることを繰り返すのだ。

「詠唱さえできれば……!」

二人の魔法使いが強力な魔法をしかけようとすると、火龍は弱った冒険者たちを狙って、口から岩とマグマを混ぜ合わせた弾丸を飛ばしてくるのである。

今は、炎にも強いドワーフのウォロクが、前衛として盾の役割を担っていた。

「前に出るのは苦手だわいッ!」

ウォロクは巨大なハンマーを振り回し、龍が飛ばしてくる巨大な塊を砕き――

「どう見ても前衛でしょッ!」

――ミリアは無詠唱で魔法を行使し、風の障壁を生みだす。ウォロクが砕いた岩の破片とマグマから、動けない冒険者たちを守っていた。

ミリアは火龍をじっと睨み、隙をうかがう。
が、隙らしい隙は一向に見えてこない。

(こいつ、戦い慣れしてるッ!)

火龍は派手な動きは一切見せず、こちらの動きを見てから口から弾丸を飛ばし、時には身体と尻尾を使ってマグマを散らしてくる。

自分からは決して大技は出さず、じっくり弱火で攻めてくるという嫌な戦い方だ。

(まるで遊ばれているみたい……っ)

そのせいでミリアの方から大魔法を繰り出すこともできず、お互いに牽制しあう状況が続いていた。

ウォロクが「あちち」と飛んでくるマグマの弾丸を砕きながら、背後のミリアに向かって叫ぶ。

「このままじゃわしら鍋の具材じゃあッ!」

ミリアはその叫びを聞いて、ふと自分の相棒である騎士の姿が思い浮かんだ。

ネリス……こんな時、あんたがいれば。そう呟いてから、ミリアは歯を食いしばる。

(違うでしょ……!)

ミリアは、ウォロクと自分自身を鼓舞した。

「アイテム屋の二人が必ず応援を呼んでくる! そうなればあたしたちの勝ち! 絶対に耐えるわよ!」
「……のっほっほ! 倒してしまってもよいのかのう?」
「倒せるもんなら倒しなさいよ!」
「無理だのぉ!」

……軽口を叩けているうちはまだ大丈夫ね。ミリアは小さく笑う。

(けど、自分たちだけでもこの危機を乗り越える手段を考えないと……)

何か、何か糸口が欲しい……小さなきっかけでも、何でもいいから!

(だめ、そんな考え方ではこの龍を倒すことはできない……)

いつだって、今あるものでしか戦えない。
それが、冒険者ってものでしょ……!

ミリアは、熱くなってきた頭を冷やそうと努める。

(ウォロクが砕いた岩石とマグマの破片を、あたしが風で防いでいる……防いだマグマは周囲に散らばりって――)

――冷えて固まっていた。
そのことに気がついたミリアの銀色の瞳が光る。

(変化なら、最初からあったんだわ)

ミリアはウォロクに呼びかけた。

「あんたが魔法使いに戻る策を思いついたわ!」
「わしは最初から魔法使いなんじゃが!?」
「合図するから、その時が鎚魔導士ハンマージとしてのあんたの出番よ!」
「……のっほっほ! その時までは死んでも死に切れんのお!」

ウォロクは、これまで以上に気合を入れてハンマーを振るう。砕ける巨石と飛び散るマグマ――ミリアがそれらを風でいなし、マグマを倒れた冒険者たちの周囲に流す。

(さあ、マグマ遊びの時間よ……!)

少しずつ、少しずつ。
砂の城を作るかのように、ミリアはマグマの壁を築き始めた。

(たった一度でいい。攻撃を防げたなら、そこから流れを変えてみせる……!)




§ 火のダンジョン 第3領域 『熱水の密林』 §

一方そのころ――

「にゃにゃにゃにゃ!!」
「おらおらおらおら!!」

――決死のダンジョン移動の直後、俺とテナは肌着姿で叫びながら耐火ポーションを調合していた。

本来ならばミリアのために集めていた素材だが、命につりあう素材はない。

というわけで、テナの背負い袋リュックに常備してある調理道具一式で、素材をかき回しているのであった。

一方、凶刃キャルはポーションで熱水による火傷を治しながら、ご満悦といった顔で笑う。

「キャハハ! がんばれー!」

まったく、のんびり鑑賞とはいいご身分だ。こっちは命がけの気分だというのに。

だが、この調合ばかりは息の揃った二人でなければ効率が悪い。

このままいいご身分でいてもらおう。

「「……できた!!」」

~~~~~~~~収穫~~~~~~~~

耐火ポーション ×24(New !)

耐火ポーションの素材
 ・水竜血晶   ×20
 ・耐火樹の樹液 ×0


 ・炎魔晶石          ×12
 ・紅玉の原石         ×3
 ・小さな琥珀         ×4
 ・カサブタの欠片       ×5
 ・ゴールデンキングカブト   ×15
 ・ゴールデンキングラーヴァ  ×10
 ・ゴールデンキングオオカブト ×2
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

調合を終えた俺たちに、キャルは背を向けて言う。

「じゃあ、行こっか♪ 龍殺し♪」
「「いえっさー!」」

キャルが俺たちを巻き込むのは、応援を呼ばれて自分の楽しみが減ることを嫌っているのだろうか。そんなことを考えていると、不意にキャルが首だけ振り返ってくる。

「キミたち、とってもいいよ」

妖しい瞳が鈍く光っていた。

「キャハハハ!」

怖すぎる。
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