最弱ダンジョン商人、ドラゴンスレイヤーになる

杉戸 雪人

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氷室の水禍

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「おはよう。スーシー」
「おはようございます。奥様」
「あらやだ! 下半身が動かないわ!」
「私もです! 奥様!」

この人たち、目覚めて早々元気だな。

「奥様……」
「どうしたのスーシー?」
「気のせいでしょうか……なんだかとっても熱いです――」
「言われてみれば……とっても熱い――」

地獄の小炎インフェルナーノが二人の間で燃えてるからな。

二人のエルフが上半身だけ魚のようにピチピチしだす。




「「――熱々あつあつエルフゥゥゥ!」」

既に動じない自分が怖い。
テナも同じらしく、それこそ死んだ魚のような目で俺の方を見上げた。

「なんでセリフがそろうの」
「……確かに」

ともかく俺たちは、シルヴィアとスーシーを解凍しきった。彼女たちのもろもろの反応も見終わった。

あと一応お礼も言われた。

「わたくしったら、まさかもう一度焼かれるなんて思ってもみませんでしたわ! ありがとうございます!」
「私も、まさかもう一度焼かれるなんて思ってもみませんでした。ありがとうございます」

引っかかる言い方だったが、今はそれどころじゃない。

「お二人に協力していただきたいことがあります」
「「協力?」」

龍にも怯まない二人がいれば、きっとできる。

「俺たちと、龍を倒してください。助けたい人がいるんです」

俺がそう言うと、シルヴィアとスーシーはきょとんとした顔をした。その顔のまま二人はお互いの手を両手で合わせ、頬をいっそう赤らめる。

「奥様……この人……!」
イキ……!」

テナが「シャーッ!!」と警戒しているが、ともかく協力はしてくれるらしい。

「では、スーシーさん」
「はい」
「龍の正確な位置は把握できますか?」

スーシーは目を瞑ると、「この領域内のほぼ中心にいます」と答える。

「どこに向かっていますか?」
「第3領域の方ですね」

即答……しかも、テナの直感と一致か。これは信頼できる。俺とテナは目を合わせ、うなずき合った。

「状況を整理しましょう。龍が水のある第3領域『氷河の流刑地』に向かっているのはほぼ明らか。水の中に入られてしまっては、もう二度と龍を倒せず、龍に張りついて凍っているキャルさんを助けられない」

シルヴィアとスーシーは「キャルさん?」と首をかしげたが、「友人です」と簡潔に説明する。

「ならばここ、『琥珀遺跡』で倒さなければならない……と思っていたのですが、考えが変わりました。龍は第3領域『氷河の流刑地』で倒します」

俺がそう言うと、シルヴィアが「待ってくださいな」と遮る。

「『氷河の流刑地』とは、こことは違ってほとんど平面のあそこですの?」
「ええ、お二人も白い木がたくさん生えている第2領域の『白林湖』を通ってきたと思いますが、その先の領域です」
「でしたら、わたくしは反対いたします」
「なぜでしょうか」
「ここには身を隠すのに便利な遺跡がたくさんあります。遺跡に隠れながら龍に接近し、側面から逆鱗急所を狙うべきかと思いますわ」

スーシーが「龍の動きも遅いようですので、可能かと」と補足する。

「もっともなご意見。ですが、あの龍の急所にシルヴィアさんの矢が当たった時、氷に防がれたのを覚えているでしょう? あれをどうにかしなければなりません」
「それなら、わたくしの『纏いの矢』で解決できますわ」
「纏いの矢?」
「わたくしたちを燃やしてくださった地獄の業火を矢に纏うことで、矢の威力を底上げいたします。それで一撃……仕留めて見せますわ」

シルヴィアは、「お約束いたします」とこれまでとは打って変わって真剣な目で見てくる。熱々エルフはどこへ行ったのやら。

「あはは……」
「ルウィン様、わたくしは本気ですのよ?」
「いえ……本気で反対してくれて、本気で約束してくれたから……安心してつい笑ってしまいました」
「じゃあ……!」

明るいエルフ二人に対し、テナの不安そうな表情を見て、俺は決断する。

「俺たちはこれから、第5領域・・・・に入ります」
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