最弱ダンジョン商人、ドラゴンスレイヤーになる

杉戸 雪人

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マンドレイクの春

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「あの、その……ひょっとして……わたしを助けてくれたのです?」

少女は自分の手を胸に押し当て、俺たちに問うてくる。俺はその姿を見て、深く感動した。テナもそうらしく、俺たちは無意識のうちに拍手を始める。

「素晴らしい。この方は熱々エルフと違って俺たちを犯人扱いしないようだ」
「にゃ」

何のことかまったくわかっていない様子で、

「熱々エルフ??? なぜ拍手???」

と困惑する少女だったが、無理もない。
テナと微笑み合っていると、俺たちは重要なことに気がつく。

「あれ、よくよく考えるとこの人が気絶したのって俺のせいでは!?」
「たしかに!?」

気絶していた当の本人を置いてけぼりにしていると、彼女が大きな翼をはためかせた。

「あの! 助けてくれたのですよね……?」

彼女の再度の問いかけに、俺はテナと顔を見合わせる。

「助けましたが」「ボクたちのせいだ」

翼の生えた少女はさらに首をかしげ、頭の触角めいた寝癖を?にする。

「自己紹介がまだでしたね。俺はルウィン、アイテム屋で冒険者です。こちら猫人のテナ、俺の相棒です。どうぞよろしくお願いします。」
「ルウィンさん、テナさん……わたしはアルメリゼといいます。命を救ってくださり、ありがとうございます」

シルヴィアとスーシーとは違って話が早い。が、今回ははっきりと俺たちが悪かった。

「その、まずは経緯を説明させてください」

俺は不要な感謝を避けるべく、彼女の目の前にマンドレイクを突き出す。マンドレイクは、今は散り際のかそけき声を出していた。

「ア゛ァ……ァゥ……ゥゥ……ゥヴェ」

うん、実に死にかけ。
ではなく――

「――このマンドレイクを俺が引き抜いてしまったせいで、アルメリゼさんを危険な目に合わせてしまったんです。誠に申し訳ございませんでした……!」

俺は目を丸くしたアルメリゼに対し、頭を下げ、そのまま地面につけた。
テナも同じように「ごめんなさい……!」をする。

すまない、テナは悪くないのに。

「……………………」

一向に反応がない。どんなお叱りも覚悟していたのだが。

「ルウィン……」
「テナ、今は誠心誠意、謝罪の時だ」
「気絶してるよ」
「え? あっ」

アルメリゼが、上体を起こしたまま固まっている。

「なぜだ」
「ボク、気持ちわかる」




再びアルメリゼが目覚めた時、俺は改めて彼女に謝罪し、事情を説明した。
アルメリゼは「えっと――」と困ったような顔をしていたが、テナのフォローもあって何とか理解してもらうにいたる。

「――つまり、わたしは二人が引き抜いたマンドレイクで気絶してしまって、その隙にモンスターに襲われそうになっていたところを、お二人が助けてくれた……ということですか」
「テナが悪くないという点を除けば、その通りです。とにかく、何かお詫びをさせてください。俺にできることであれば、何でもしますから……」

俺がそう言うと、なぜかテナが「にゃッ! にゃんでも……!?」と動揺していた。勘違いするな、一応『できること』という予防線も張ってある。

アルメリゼの方を見ると、「なるほど」と何かを考え始めていた。

何を要求されるのだろうかと天を――もとい、ダンジョンの天井をあおぐ。天井にまで苔がみっしりだ。

(苔って売れるのだろうか)

苔を探し始めて数秒経ってから、彼女は冒険者として実に意外な言葉を口にした。

「お詫びは、必要ありません――」
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