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マンドレイクの春
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オーガスが両手を大きく広げる。
「――結論から言おうか。マンドレイクの悲鳴の対抗薬は作れない。いや、あともう少し……基準値を満たすものを作れなかったと言うべきだろうねぇ」
なんだと……。
「マンドレイクの悲鳴は、現状やはり聴かないことでしか対応できないんだ」
オーガスの言葉は、俺たちにとって無慈悲なものだった。
「僕は魔法が使えないからねぇ、音魔法が得意な人に対抗呪文をかけてもらったりしたけど、やっぱりだめだった。どうしても発狂してしまうんだぁ」
テナが「はにゃあ……?」と怪訝そうにする。既に発狂しているだろうと言いたいらしい。
ミリアが銀色の瞳を輝かせ、今度は真面目な調子で話に入る。
「魔法全般の基本は『知る』こと。そして、音魔法の基本は音を実際に聴くこと。全てを聴かない内に気絶してしまう音に対抗する魔法を作るのは、難しいでしょうね」
ミリアの補足に対し、「その通り!」とオーガスは嬉しそうにした。
「まったく、何が嬉しいのよ」とミリアは冷たく言う。
だが、何かが引っかかる。
違和感の正体を掴めないでいると、テナが先に口を開いた。
「大きな音で悲鳴を防げたりしないの?」
「ナイス変態! だけどちょっとやそっとの爆音を鳴らしたところで、マンドレイクの悲鳴は防げない! それに、そんな爆音を鳴らし続けたら自分たちだって危険だからねぇ」
『いい質問!』みたいに『変態』と言われたテナは、「ミ゛ッ」と膝から崩れ落ちる。かわいそうに。しばらく立ち直れなさそうだ。
オーガスは、改めて俺の目を真っすぐ見てきた。
「さあ、君ならどうやってこの問題を解決する? 新たに現れた恋茄龍の討伐の準備にそう時間はかけられない今、凡人の僕達には何ができる?」
オーガスの言うところの凡人とは、冒険者になれない存在のことだろうか。
普通の冒険者にはできない発想。
それを今、オーガスに問われている。
そんな気がした。
俺はどうだろうか。
ミリアの方を向いて、俺は尋ねる。
「俺の第一印象って、どんな感じでした?」
「自殺志願者」
「あっ……なぜ?」
「戦えもしないくせに警報中のダンジョンに入って、楽器弾いたりしてるからよ」
「楽器を弾いたら、だめです?」
「あんたねぇ……闇のダンジョンはただでさえ暗いのに、さらに霧まで出ていたあの場所で楽器とか普通演奏しないでしょ? どのダンジョンでもそうだけど、耳から入る情報が減るのは死活問題よ……まったく」
ああ、そうか。ようやく分かった。
こんな当たり前で単純な、凡人の発想に俺は気が付かなかったらしい。
オーガスは、『あともう少し……基準値を満たすものを作れなかった』と言っていた。
自らを凡人と称する変態が、『もう少し』で諦めるだろうか。
いや、諦めない。
俺は確信を持って彼と向き合う。
「オーガス。細長い棒か何か、持っているか?」
俺の問いかけにオーガスは目を輝かせた。
「――ナイス変態」
「――結論から言おうか。マンドレイクの悲鳴の対抗薬は作れない。いや、あともう少し……基準値を満たすものを作れなかったと言うべきだろうねぇ」
なんだと……。
「マンドレイクの悲鳴は、現状やはり聴かないことでしか対応できないんだ」
オーガスの言葉は、俺たちにとって無慈悲なものだった。
「僕は魔法が使えないからねぇ、音魔法が得意な人に対抗呪文をかけてもらったりしたけど、やっぱりだめだった。どうしても発狂してしまうんだぁ」
テナが「はにゃあ……?」と怪訝そうにする。既に発狂しているだろうと言いたいらしい。
ミリアが銀色の瞳を輝かせ、今度は真面目な調子で話に入る。
「魔法全般の基本は『知る』こと。そして、音魔法の基本は音を実際に聴くこと。全てを聴かない内に気絶してしまう音に対抗する魔法を作るのは、難しいでしょうね」
ミリアの補足に対し、「その通り!」とオーガスは嬉しそうにした。
「まったく、何が嬉しいのよ」とミリアは冷たく言う。
だが、何かが引っかかる。
違和感の正体を掴めないでいると、テナが先に口を開いた。
「大きな音で悲鳴を防げたりしないの?」
「ナイス変態! だけどちょっとやそっとの爆音を鳴らしたところで、マンドレイクの悲鳴は防げない! それに、そんな爆音を鳴らし続けたら自分たちだって危険だからねぇ」
『いい質問!』みたいに『変態』と言われたテナは、「ミ゛ッ」と膝から崩れ落ちる。かわいそうに。しばらく立ち直れなさそうだ。
オーガスは、改めて俺の目を真っすぐ見てきた。
「さあ、君ならどうやってこの問題を解決する? 新たに現れた恋茄龍の討伐の準備にそう時間はかけられない今、凡人の僕達には何ができる?」
オーガスの言うところの凡人とは、冒険者になれない存在のことだろうか。
普通の冒険者にはできない発想。
それを今、オーガスに問われている。
そんな気がした。
俺はどうだろうか。
ミリアの方を向いて、俺は尋ねる。
「俺の第一印象って、どんな感じでした?」
「自殺志願者」
「あっ……なぜ?」
「戦えもしないくせに警報中のダンジョンに入って、楽器弾いたりしてるからよ」
「楽器を弾いたら、だめです?」
「あんたねぇ……闇のダンジョンはただでさえ暗いのに、さらに霧まで出ていたあの場所で楽器とか普通演奏しないでしょ? どのダンジョンでもそうだけど、耳から入る情報が減るのは死活問題よ……まったく」
ああ、そうか。ようやく分かった。
こんな当たり前で単純な、凡人の発想に俺は気が付かなかったらしい。
オーガスは、『あともう少し……基準値を満たすものを作れなかった』と言っていた。
自らを凡人と称する変態が、『もう少し』で諦めるだろうか。
いや、諦めない。
俺は確信を持って彼と向き合う。
「オーガス。細長い棒か何か、持っているか?」
俺の問いかけにオーガスは目を輝かせた。
「――ナイス変態」
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