最弱ダンジョン商人、ドラゴンスレイヤーになる

杉戸 雪人

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マンドレイクの春

91 決戦前の回想③

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全滅という言葉を聞いて、ギルドの空気は凍った。俺はその反応を見て、少しうつむく。

(買いかぶりすぎかもしれない――)

――龍が果たして、そこまで考えるだろうか。だが、腹の中に人間を蓄えたあの光景が、ふと思い浮かんだ疑問をかき消すのである。

「あんたの言うことは……よく分かったわ」

ミリアは分かったと言いながら、頭を抱えていた。何に対して頭を抱えているのか、いくつか候補が浮かんだが分からない。

「あの、ミリアさん。俺の考え、どこかおかしな点がありましたか……?」
「…………」

俺の問いかけに対して、ミリアは答えなかった。代わりに、ネリスが口を開く。

「ミリアはこう考えている。『そこまで危険な相手だと分かっているのに、どうして下級冒険者のあんたが率先して挑もうとしてるのよ』とな」
「ちょ、ちょっと!」
「そしてこうも考えている。『だけど今、恋茄龍に対して最も理解度が高いのは実際に遭遇したルウィンたち……危険な目に合わせたくない……! けど……くっ……!』とな」
「なにどうでもいい細かい部分まで説明してんのよッ!!」

どうやら正鵠せいこくを射たようで、ミリアは否定はせずに顔を真っ赤にしていた。

「キャハハ! ミリア図星だー♪」
「うっさい!」

ミリアが半分切れていると、ウォロクが落ち着いた声で、しかしはっきりとした声を出す。

「守ればええ」

たった一言だったが、それだけで俺は不思議と胸がじんと温かくなった。なんという心強さだろうか。

「奥様! このドワーフのおじい様、かっこいいセリフを言ってから顔がほんのりと赤いです!」
「あらやだほんと! なんで赤いんですの!? なんで赤いんですの!?」

かっこよかったウォロクが、シルヴィアとスーシーのせいで一瞬でたじたじになっていた。「のほぉぉ///」ごつごつした両手で顔を隠し、先ほどまでの面影はもうない。

そんなウォロクはさて置くように、ネリスはミリアを説得していた。

「そういうことだ。ミリア」
「けど……ッ!」
「ルウィンたちは私が守ってみせるよ。この盾に誓って」
「ネリス……あんたねぇ……」

そんな騎士と魔女の姿を見て顔を赤くしている少女がいた。アルメリゼだ。

「はわぁぁ……かっこいいのです……!」

興奮気味に翼を動かしてはバサバサと音を立てている。テナの尻尾のようなものだろうか。感情が分かりやすい。

(というか、なんだろう……全体的に甘ったるい雰囲気だな。まるで恋する乙女のような……)

そんなことを考えていると、テナが裾を引っ張ってくる。

「ねえ、ルウィン……なんか匂うよ……」

そう言うテナの顔も何だか赤らんでいて、俺も少しばかり妙な気分になってきた。匂うって、どこからだ?

テナが指さす先に、大量のマンドレイクをどこからか持ってきた鍋で煮込んでいる変態――もとい、オーガスの姿があった。
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