最弱ダンジョン商人、ドラゴンスレイヤーになる

杉戸 雪人

文字の大きさ
91 / 100
マンドレイクの春

92 決戦前の回想④

しおりを挟む
「ああ……このマンドレイクから漂う変態的なにおいスメル……! 素晴らしいねえ! あ、ルウィン君! 君の話はしっかりと聞いているよ! 実に変態的な考察だ! 続けてくれたまえ! 僕は抗マンドレイク薬を作っているから!」

マンドレイクたちが小さな悲鳴を上げ続けている。やはり生き物には人に近い顔をつけるべきではないな。むごい。

……などと考えている場合じゃない

「オーガス。なんだか、匂うんだが」
「ああ、スメルか!」
「……スメル?」
「吸うと変態的な気持ちになってくるという匂いさ。僕にはよく分からないのだけれど、このスメルのせいなのか屋敷の使用人たちの間でカップルが乱立してしまってねぇ。いやあ、困った困った!」
「媚薬……なのか?」
「そうとも言えるねぇ。実際、このスメルを嗅ぐと周囲の人間が輝いて見えたりもするらしい。だが、媚薬以外にも使えるんだよ? 少し気を大きくさせたり、幻覚で不思議な世界に旅行トリップできたりするようだ」
「……どうりで周りの人たちが妙に色っぽく見えるわけだ」

周囲を見渡すと、ギルド全体の雰囲気も妙に色めいている。

「オーガス、どうすればみんな元に戻るんだ?」
「僕が持っているマンドレイクポーションでも戻るけれど、これくらいの症状なら必要ないさぁ」

と、ミリアが俺の胸を優しく叩いてきた。

「ちょっと……まだ話は終わってないんだからね……! はやく……続き……!」
「えっと……はい……」

やはり、妙に色っぽい。
と思っていると、ネリスが肩を掴んでくる。

「ルウィン、私が守ってやるからな」

凛とした表情だったが、ほのかな赤みが頬に見えた。雄々しさと可憐さが同居しているネリスの様子に、俺は思わずドキッとする。

「……え/// じゃなくって、二人とも近いです!」
「なによ……」「つれないな……」

身を引いたかと思えば、ミリアとネリスはテナを触り始めた。

「あんた……いつにも増してかわいいわね」
「テナ、私が守ってやる」
「うにゃぁ……」

まんざらでもないテナの姿を見て、なぜか安堵と後悔が同時に押し寄せてくる。くそ、俺ももう少しあのまま――

(――ではなく!)

首を振って正面を見据えると、少し離れたテーブルの上に横たわる二人のエルフ――シルヴィアとスーシーの姿があった。エルフたちは顔だけをこちらに向けて、物欲しそうな目で俺をじっと見ている。

「スーシー、なぜでしょう。わたくし、ルウィン様を見ていると、ずっと昔に胸の奥にしまった……熱々の想いがこみ上げてくる気がしますわ……///」
「奥様……私もです……///」

なんてことを言うんだ。

「く、なぜか二人がかわいく見える……!」

さすがに未亡人を相手に心惑わせてはいけない気がする……というか、あの二人はあれで平常なのか……とにかく、しっかりするんだ俺!

と、アルメリゼが急に叫び出した。

「いやぁ! 来ないでください!」

誰もいないというのに、何かが見えているようだった。

「アルメリゼさん! しっかり!」
「……はっ! ルウィンさん……! わたし……!」

俺が呼びかけると、アルメリゼは正気を取り戻したようだった。だが、俺と目が合ってからずっとそのままだ。俺もなぜか目を背けることができないでいた。

「な、なんなんだ、この気持ちは!」
「な、なんなのですか、この気持ちは!」

二人して胸を手で押さえ、なんとかお互いに目を逸らした。

「な……ッ!」

人と目線を合わせないようにするために床を見下ろしたのだが、そこにはしゃがんだまま俺を見上げている少女――キャルの姿があった。

「抱っこ♪」
「抱っこッ!?」

それはまずいだろう!?
と思っていると、受付嬢のニーナが突然現れ、キャルを抱き上げた。

「いい子いい子~♪」
「キャッキャッ♪」

俺は一体何を見ているんだ。目を離せないでいると、ニーナが俺に流し目をする。

「ルウィン君……二人目、欲しいな……?」
「作りましょう」

俺がついに正気を失いかけたその時、ウォロクがぬっと現れた。

「ルウィン、わしも」
「『わしも』じゃなーいッ!!!」

俺は自分の太ももを思い切り両手で叩きまくった。その音と怒声を聞いて、ギルド全体がはっとした表情で俺たちの方を見る。

「のっほっほ、正気に戻ったな」
「助かったよおじいちゃん。けどさ、もう少しいい夢を見ていたかった気もするんだ」
「……………………のほほ!」
「のほほじゃあないですよ……のほほじゃあ……!」

俺はウォロクに対して感謝と憎しみをぶつけるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...