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マンドレイクの春
92 決戦前の回想④
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「ああ……このマンドレイクから漂う変態的なにおい……! 素晴らしいねえ! あ、ルウィン君! 君の話はしっかりと聞いているよ! 実に変態的な考察だ! 続けてくれたまえ! 僕は抗マンドレイク薬を作っているから!」
マンドレイクたちが小さな悲鳴を上げ続けている。やはり生き物には人に近い顔をつけるべきではないな。むごい。
……などと考えている場合じゃない
「オーガス。なんだか、匂うんだが」
「ああ、スメルか!」
「……スメル?」
「吸うと変態的な気持ちになってくるという匂いさ。僕にはよく分からないのだけれど、このスメルのせいなのか屋敷の使用人たちの間でカップルが乱立してしまってねぇ。いやあ、困った困った!」
「媚薬……なのか?」
「そうとも言えるねぇ。実際、このスメルを嗅ぐと周囲の人間が輝いて見えたりもするらしい。だが、媚薬以外にも使えるんだよ? 少し気を大きくさせたり、幻覚で不思議な世界に旅行できたりするようだ」
「……どうりで周りの人たちが妙に色っぽく見えるわけだ」
周囲を見渡すと、ギルド全体の雰囲気も妙に色めいている。
「オーガス、どうすればみんな元に戻るんだ?」
「僕が持っているマンドレイクポーションでも戻るけれど、これくらいの症状なら必要ないさぁ」
と、ミリアが俺の胸を優しく叩いてきた。
「ちょっと……まだ話は終わってないんだからね……! はやく……続き……!」
「えっと……はい……」
やはり、妙に色っぽい。
と思っていると、ネリスが肩を掴んでくる。
「ルウィン、私が守ってやるからな」
凛とした表情だったが、ほのかな赤みが頬に見えた。雄々しさと可憐さが同居しているネリスの様子に、俺は思わずドキッとする。
「……え/// じゃなくって、二人とも近いです!」
「なによ……」「つれないな……」
身を引いたかと思えば、ミリアとネリスはテナを触り始めた。
「あんた……いつにも増してかわいいわね」
「テナ、私が守ってやる」
「うにゃぁ……」
まんざらでもないテナの姿を見て、なぜか安堵と後悔が同時に押し寄せてくる。くそ、俺ももう少しあのまま――
(――ではなく!)
首を振って正面を見据えると、少し離れたテーブルの上に横たわる二人のエルフ――シルヴィアとスーシーの姿があった。エルフたちは顔だけをこちらに向けて、物欲しそうな目で俺をじっと見ている。
「スーシー、なぜでしょう。わたくし、ルウィン様を見ていると、ずっと昔に胸の奥にしまった……熱々の想いがこみ上げてくる気がしますわ……///」
「奥様……私もです……///」
なんてことを言うんだ。
「く、なぜか二人がかわいく見える……!」
さすがに未亡人を相手に心惑わせてはいけない気がする……というか、あの二人はあれで平常なのか……とにかく、しっかりするんだ俺!
と、アルメリゼが急に叫び出した。
「いやぁ! 来ないでください!」
誰もいないというのに、何かが見えているようだった。
「アルメリゼさん! しっかり!」
「……はっ! ルウィンさん……! わたし……!」
俺が呼びかけると、アルメリゼは正気を取り戻したようだった。だが、俺と目が合ってからずっとそのままだ。俺もなぜか目を背けることができないでいた。
「な、なんなんだ、この気持ちは!」
「な、なんなのですか、この気持ちは!」
二人して胸を手で押さえ、なんとかお互いに目を逸らした。
「な……ッ!」
人と目線を合わせないようにするために床を見下ろしたのだが、そこにはしゃがんだまま俺を見上げている少女――キャルの姿があった。
「抱っこ♪」
「抱っこッ!?」
それはまずいだろう!?
と思っていると、受付嬢のニーナが突然現れ、キャルを抱き上げた。
「いい子いい子~♪」
「キャッキャッ♪」
俺は一体何を見ているんだ。目を離せないでいると、ニーナが俺に流し目をする。
「ルウィン君……二人目、欲しいな……?」
「作りましょう」
俺がついに正気を失いかけたその時、ウォロクがぬっと現れた。
「ルウィン、わしも」
「『わしも』じゃなーいッ!!!」
俺は自分の太ももを思い切り両手で叩きまくった。その音と怒声を聞いて、ギルド全体がはっとした表情で俺たちの方を見る。
「のっほっほ、正気に戻ったな」
「助かったよおじいちゃん。けどさ、もう少しいい夢を見ていたかった気もするんだ」
「……………………のほほ!」
「のほほじゃあないですよ……のほほじゃあ……!」
俺はウォロクに対して感謝と憎しみをぶつけるのだった。
マンドレイクたちが小さな悲鳴を上げ続けている。やはり生き物には人に近い顔をつけるべきではないな。むごい。
……などと考えている場合じゃない
「オーガス。なんだか、匂うんだが」
「ああ、スメルか!」
「……スメル?」
「吸うと変態的な気持ちになってくるという匂いさ。僕にはよく分からないのだけれど、このスメルのせいなのか屋敷の使用人たちの間でカップルが乱立してしまってねぇ。いやあ、困った困った!」
「媚薬……なのか?」
「そうとも言えるねぇ。実際、このスメルを嗅ぐと周囲の人間が輝いて見えたりもするらしい。だが、媚薬以外にも使えるんだよ? 少し気を大きくさせたり、幻覚で不思議な世界に旅行できたりするようだ」
「……どうりで周りの人たちが妙に色っぽく見えるわけだ」
周囲を見渡すと、ギルド全体の雰囲気も妙に色めいている。
「オーガス、どうすればみんな元に戻るんだ?」
「僕が持っているマンドレイクポーションでも戻るけれど、これくらいの症状なら必要ないさぁ」
と、ミリアが俺の胸を優しく叩いてきた。
「ちょっと……まだ話は終わってないんだからね……! はやく……続き……!」
「えっと……はい……」
やはり、妙に色っぽい。
と思っていると、ネリスが肩を掴んでくる。
「ルウィン、私が守ってやるからな」
凛とした表情だったが、ほのかな赤みが頬に見えた。雄々しさと可憐さが同居しているネリスの様子に、俺は思わずドキッとする。
「……え/// じゃなくって、二人とも近いです!」
「なによ……」「つれないな……」
身を引いたかと思えば、ミリアとネリスはテナを触り始めた。
「あんた……いつにも増してかわいいわね」
「テナ、私が守ってやる」
「うにゃぁ……」
まんざらでもないテナの姿を見て、なぜか安堵と後悔が同時に押し寄せてくる。くそ、俺ももう少しあのまま――
(――ではなく!)
首を振って正面を見据えると、少し離れたテーブルの上に横たわる二人のエルフ――シルヴィアとスーシーの姿があった。エルフたちは顔だけをこちらに向けて、物欲しそうな目で俺をじっと見ている。
「スーシー、なぜでしょう。わたくし、ルウィン様を見ていると、ずっと昔に胸の奥にしまった……熱々の想いがこみ上げてくる気がしますわ……///」
「奥様……私もです……///」
なんてことを言うんだ。
「く、なぜか二人がかわいく見える……!」
さすがに未亡人を相手に心惑わせてはいけない気がする……というか、あの二人はあれで平常なのか……とにかく、しっかりするんだ俺!
と、アルメリゼが急に叫び出した。
「いやぁ! 来ないでください!」
誰もいないというのに、何かが見えているようだった。
「アルメリゼさん! しっかり!」
「……はっ! ルウィンさん……! わたし……!」
俺が呼びかけると、アルメリゼは正気を取り戻したようだった。だが、俺と目が合ってからずっとそのままだ。俺もなぜか目を背けることができないでいた。
「な、なんなんだ、この気持ちは!」
「な、なんなのですか、この気持ちは!」
二人して胸を手で押さえ、なんとかお互いに目を逸らした。
「な……ッ!」
人と目線を合わせないようにするために床を見下ろしたのだが、そこにはしゃがんだまま俺を見上げている少女――キャルの姿があった。
「抱っこ♪」
「抱っこッ!?」
それはまずいだろう!?
と思っていると、受付嬢のニーナが突然現れ、キャルを抱き上げた。
「いい子いい子~♪」
「キャッキャッ♪」
俺は一体何を見ているんだ。目を離せないでいると、ニーナが俺に流し目をする。
「ルウィン君……二人目、欲しいな……?」
「作りましょう」
俺がついに正気を失いかけたその時、ウォロクがぬっと現れた。
「ルウィン、わしも」
「『わしも』じゃなーいッ!!!」
俺は自分の太ももを思い切り両手で叩きまくった。その音と怒声を聞いて、ギルド全体がはっとした表情で俺たちの方を見る。
「のっほっほ、正気に戻ったな」
「助かったよおじいちゃん。けどさ、もう少しいい夢を見ていたかった気もするんだ」
「……………………のほほ!」
「のほほじゃあないですよ……のほほじゃあ……!」
俺はウォロクに対して感謝と憎しみをぶつけるのだった。
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