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マンドレイクの春
93 決戦前の回想⑤
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「話を戻しましょう――」
マンドレイクの色香に当てられた俺たちは、かろうじて正気を取り戻していた。
「ミリアさん、マンドラゴラスが第1領域で奇襲をしかけてくる可能性については、十分理解していただけましたか?」
「ええ」
ミリアは賢者のような目をしていたが、俺は気にしないことにする。
「マンドラゴラスは、テナとアルメリゼさんという二つの想定外に対し、恐ろしい策を打って出ました。ですが、奴の知らない想定外がここにあります」
「抗マンドレイク薬……そしてルウィン、あんたね」
「はい。魔よけの加護があるからこそ、第1領域に出現した魔物の蔓が龍によるものだと推測できました。これにより、第1領域で行われるであろう奇襲は奇襲でなくなります。ですが、蔓による奇襲以外にも警戒すべきことがあります」
「マンドレイクの叫び――でもそれは、抗マンドレイク薬で防げる、か」
「その通り。今この時において、既に形勢は逆転しました。龍にとっての奇襲は、今や俺たちのものなんです」
俺たちのやり取りを聞いて、ギルドが大いに湧き始める。マンドレイクのスメルの後遺症もあるのだろうが、士気が上がるのは良いことだ。
と、ネリスが笑い出す。
「あっはっは! なんだか勝てそうな気がしてきたじゃないか! だがルウィン、マンドレイクの叫びは防げるとして、蔓による奇襲も予測できたとしよう……しかし、その上でどう奇襲を仕掛けるんだ?」
「俺たちは、甘んじて奇襲を受けましょう」
「……なんだと?」
「敵は、俺たちを殺しはしません。根拠は二つあります。一つは、俺とテナがアルメリゼさんが殺されずに絡めとられていたという事実です。もし、生死を問わないのであれば、マンドレイクの叫びで気絶した直後に首を絞めるなりすればいいはず」
これを聞いたアルメリゼがぞっとした顔をして椅子に座る。
「そっか……わたし、死んでたかもしれないのですか……」
俺とテナは「本当にごめんなさい」と謝った。ごめんで済む話ではないが。
へたり込んでいるアルメリゼの頭を、シルヴィアとスーシーがテーブルの上で横になったまま撫で始める。いつまで寝転がっているんだ……。
ネリスは「なるほどな。一理ある」と微笑むと、そのまま言葉を続ける。「もう一つはやはり、龍の腹の中にいた冒険者だな?」
「その通り。外傷のない冒険者たちを腹の中に蓄えていたという事実から、通常の魔物とは異なり、少しずつ命を吸い取って生きる性質があるのだと考えます」
ただ、これはあくまでも希望的観測だった。そして、この希望的観測を確かなものにしてくれるのは、テナだ。テナの顔色をうかがうと、テナは微笑んでくれた。これ以上に信頼できるものはない。
「あっはっは! 面白いな! なあミリア、やはり闇のダンジョンでルウィンを買うべきだったんじゃないか?」
「あんたねえ……」ミリアは感慨深げに目を細める。「まあ――」
「――そうかもね」
それから、俺たちは奇襲に対する奇襲について話し合った。
「――あっはっは! あっ……そういえば、耐火ポーションが余っていたな? あれを使おう」
それぞれが持つ能力と知恵を束ねて、全身が蔓でできた巨大な龍を倒す作戦の大枠が完成する。
「奥様! 私たち大活躍できますね!」
「あらやだー///」
複数パターンの予測を立て、いかなる対応もできるように作戦も練りに練った。みんなが顔を見合わせてやる気が高まっている中、テナだけは浮かない顔をしている。
「ルウィン……本当にこれで大丈夫なの……?」
「いや、まだ考えるべきことがある」
俺とテナのやり取りを聞いていたミリアが「どういうこと……?」と言って瞬きした。
「プランA、プランB、プランC、いずれのプランでも龍を倒しきれないという最悪のケースを俺は考えています」
俺は自分を見つめる仲間たちに向けて言う。
「絶対に龍を倒しきるプランとして、プランA・B・Cから移行する最終プラン――『マンドレイクの春』を提案します――」
マンドレイクの色香に当てられた俺たちは、かろうじて正気を取り戻していた。
「ミリアさん、マンドラゴラスが第1領域で奇襲をしかけてくる可能性については、十分理解していただけましたか?」
「ええ」
ミリアは賢者のような目をしていたが、俺は気にしないことにする。
「マンドラゴラスは、テナとアルメリゼさんという二つの想定外に対し、恐ろしい策を打って出ました。ですが、奴の知らない想定外がここにあります」
「抗マンドレイク薬……そしてルウィン、あんたね」
「はい。魔よけの加護があるからこそ、第1領域に出現した魔物の蔓が龍によるものだと推測できました。これにより、第1領域で行われるであろう奇襲は奇襲でなくなります。ですが、蔓による奇襲以外にも警戒すべきことがあります」
「マンドレイクの叫び――でもそれは、抗マンドレイク薬で防げる、か」
「その通り。今この時において、既に形勢は逆転しました。龍にとっての奇襲は、今や俺たちのものなんです」
俺たちのやり取りを聞いて、ギルドが大いに湧き始める。マンドレイクのスメルの後遺症もあるのだろうが、士気が上がるのは良いことだ。
と、ネリスが笑い出す。
「あっはっは! なんだか勝てそうな気がしてきたじゃないか! だがルウィン、マンドレイクの叫びは防げるとして、蔓による奇襲も予測できたとしよう……しかし、その上でどう奇襲を仕掛けるんだ?」
「俺たちは、甘んじて奇襲を受けましょう」
「……なんだと?」
「敵は、俺たちを殺しはしません。根拠は二つあります。一つは、俺とテナがアルメリゼさんが殺されずに絡めとられていたという事実です。もし、生死を問わないのであれば、マンドレイクの叫びで気絶した直後に首を絞めるなりすればいいはず」
これを聞いたアルメリゼがぞっとした顔をして椅子に座る。
「そっか……わたし、死んでたかもしれないのですか……」
俺とテナは「本当にごめんなさい」と謝った。ごめんで済む話ではないが。
へたり込んでいるアルメリゼの頭を、シルヴィアとスーシーがテーブルの上で横になったまま撫で始める。いつまで寝転がっているんだ……。
ネリスは「なるほどな。一理ある」と微笑むと、そのまま言葉を続ける。「もう一つはやはり、龍の腹の中にいた冒険者だな?」
「その通り。外傷のない冒険者たちを腹の中に蓄えていたという事実から、通常の魔物とは異なり、少しずつ命を吸い取って生きる性質があるのだと考えます」
ただ、これはあくまでも希望的観測だった。そして、この希望的観測を確かなものにしてくれるのは、テナだ。テナの顔色をうかがうと、テナは微笑んでくれた。これ以上に信頼できるものはない。
「あっはっは! 面白いな! なあミリア、やはり闇のダンジョンでルウィンを買うべきだったんじゃないか?」
「あんたねえ……」ミリアは感慨深げに目を細める。「まあ――」
「――そうかもね」
それから、俺たちは奇襲に対する奇襲について話し合った。
「――あっはっは! あっ……そういえば、耐火ポーションが余っていたな? あれを使おう」
それぞれが持つ能力と知恵を束ねて、全身が蔓でできた巨大な龍を倒す作戦の大枠が完成する。
「奥様! 私たち大活躍できますね!」
「あらやだー///」
複数パターンの予測を立て、いかなる対応もできるように作戦も練りに練った。みんなが顔を見合わせてやる気が高まっている中、テナだけは浮かない顔をしている。
「ルウィン……本当にこれで大丈夫なの……?」
「いや、まだ考えるべきことがある」
俺とテナのやり取りを聞いていたミリアが「どういうこと……?」と言って瞬きした。
「プランA、プランB、プランC、いずれのプランでも龍を倒しきれないという最悪のケースを俺は考えています」
俺は自分を見つめる仲間たちに向けて言う。
「絶対に龍を倒しきるプランとして、プランA・B・Cから移行する最終プラン――『マンドレイクの春』を提案します――」
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