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マンドレイクの春
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巨大な龍の身体が――腹から上の部分が綺麗に切り取られ、前のめりに崩れ落ちようとしていた。凶刃キャルの想定外の改心の一撃を見届けたアルメリゼは、すかさず羽ばたく。
(すごい……ッ!)
これは、予定されていなかった行動……だが、焦りではなく決意がその翼を大きく動かした。
ダンジョンに入る前、ルウィンが言っていたことを思い出す。
『地上組が龍に追いついたら、全員で総攻撃を仕掛けます。その時になったら、号令をかけます』
そのことを、アルメリゼが忘れていたわけではない。
(ですが……キャルさんが作ったチャンスを、無駄にはできないのです――)
――翼を持つわたしが、どうしてダンジョンに潜ったのか。それはきっと、この時のためなのです。わたしが、みなさんを助ける……!
かつて地上を魔王災厄が襲った時、アルメリゼは確信したのだ。本当に戦わなければならない場所は、遥か地上の空ではなく、暗い地面の奥底なのだと。
「……ッ!」
呼吸する時間すら惜しみ、全身全霊で地底の空を飛ぶ。先ほどまで激しかった蔓による猛攻が、今は嘘のように大人しくなっていた。だが、急所が腹より上にないことは想定済み……油断はしない。龍は生きている。
と、不意にルウィンの言葉がアルメリゼの脳裏によぎる。
『運悪く3体もの龍と出くわして、思うんです。危険だと分かっていても、飛び込まなければならない瞬間があると。それが、冒険者ってやつなのかな……なんて、大して強くもないくせに思うんです――』
わたしが冒険者になるのは……今この時ッ!
マンドラゴラスの空っぽの身体の奥底――乾いた腹の底に、13人もの冒険者が横たわっているのが見える。
「13人ッ! 腹の底ッ!」
風精霊を通してルウィンに短く報告し、アルメリゼは救出のために急降下する。と、待ってましたと言わんばかりに残された胴体部分から蔓が伸びてきた。
(……ッ!)
このまま腹の中に入れば、蔓に絡めとられてしまうのは目に見えている。アルメリゼの持つ短槍の穂先には刃があるが、剣に比べると遥かにリーチが短い。急所の見えない細長い蔓が相手では不利だった。かといって、慣れない剣を持ってくるわけにもいかなかったのである。
(けれど――)
――切り取られた腹から上の部分が微動だにしていない。それは結局のところ、どんなに大きく見えても全て蔓の一部でしかないということ。実際、これまで切り落とした蔓の残骸も、今となっては動かない屍だった。
(背中を切るッ!)
アルメリゼは、マンドラゴラスの空っぽな胴体の外側に短槍を振り下ろした。
「せやあ゛あああぁぁぁぁッ!!!」
力加減を誤れば即座に刃が止まるところ、急降下の勢いのまま、短い穂先で龍の背中を両断する。
ここまで、キャルが龍を切り落としてからわずか数秒の攻防だった。
『こちらルウィン! アルメリゼさん! 状況は!?』
「こちらアルメリゼ、敵の背中を両断したのです! 今、敵から距離を取り、安全圏に戻りました! あ、キャルさんも戦闘に戻っているのです! 敵の勢いがさっきよりも弱まって見えます!」
(すごい……ッ!)
これは、予定されていなかった行動……だが、焦りではなく決意がその翼を大きく動かした。
ダンジョンに入る前、ルウィンが言っていたことを思い出す。
『地上組が龍に追いついたら、全員で総攻撃を仕掛けます。その時になったら、号令をかけます』
そのことを、アルメリゼが忘れていたわけではない。
(ですが……キャルさんが作ったチャンスを、無駄にはできないのです――)
――翼を持つわたしが、どうしてダンジョンに潜ったのか。それはきっと、この時のためなのです。わたしが、みなさんを助ける……!
かつて地上を魔王災厄が襲った時、アルメリゼは確信したのだ。本当に戦わなければならない場所は、遥か地上の空ではなく、暗い地面の奥底なのだと。
「……ッ!」
呼吸する時間すら惜しみ、全身全霊で地底の空を飛ぶ。先ほどまで激しかった蔓による猛攻が、今は嘘のように大人しくなっていた。だが、急所が腹より上にないことは想定済み……油断はしない。龍は生きている。
と、不意にルウィンの言葉がアルメリゼの脳裏によぎる。
『運悪く3体もの龍と出くわして、思うんです。危険だと分かっていても、飛び込まなければならない瞬間があると。それが、冒険者ってやつなのかな……なんて、大して強くもないくせに思うんです――』
わたしが冒険者になるのは……今この時ッ!
マンドラゴラスの空っぽの身体の奥底――乾いた腹の底に、13人もの冒険者が横たわっているのが見える。
「13人ッ! 腹の底ッ!」
風精霊を通してルウィンに短く報告し、アルメリゼは救出のために急降下する。と、待ってましたと言わんばかりに残された胴体部分から蔓が伸びてきた。
(……ッ!)
このまま腹の中に入れば、蔓に絡めとられてしまうのは目に見えている。アルメリゼの持つ短槍の穂先には刃があるが、剣に比べると遥かにリーチが短い。急所の見えない細長い蔓が相手では不利だった。かといって、慣れない剣を持ってくるわけにもいかなかったのである。
(けれど――)
――切り取られた腹から上の部分が微動だにしていない。それは結局のところ、どんなに大きく見えても全て蔓の一部でしかないということ。実際、これまで切り落とした蔓の残骸も、今となっては動かない屍だった。
(背中を切るッ!)
アルメリゼは、マンドラゴラスの空っぽな胴体の外側に短槍を振り下ろした。
「せやあ゛あああぁぁぁぁッ!!!」
力加減を誤れば即座に刃が止まるところ、急降下の勢いのまま、短い穂先で龍の背中を両断する。
ここまで、キャルが龍を切り落としてからわずか数秒の攻防だった。
『こちらルウィン! アルメリゼさん! 状況は!?』
「こちらアルメリゼ、敵の背中を両断したのです! 今、敵から距離を取り、安全圏に戻りました! あ、キャルさんも戦闘に戻っているのです! 敵の勢いがさっきよりも弱まって見えます!」
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