3 / 6
第01章 認証登録(キス)から始まる運命的邂逅(ボーイ・ミーツ・ガール)
01-02「人造勇者、初陣」①
しおりを挟む
①
「呪われた聖剣」ことノインツィア=シュヴェルトが持つ能力。
それは。
【魂を喰らう者】。
その名の通り、生命を奪った者の魂を喰らう。
魂の質は基本的に知能水準と比例する。
つまり、より知的な生命体を取りこんだ方がより効率的な強化を期待できる。
その効果により、手の内にある人造聖剣を通して自らの中に力が流れ込んでくるのを人造勇者は感じていた。
「力があふれる……!」
この力は命だ。
つい先程自分が命を奪った人間たちの命の輝きだ。
誰よりもそのことをゼクシズ自身が感じていた。
「無駄にはしない……!」
そう声を絞り出し、誓いを立てる。
だが、謝罪はしない。
それは彼らの覚悟への冒涜に他ならないからだ。
(やれそう?)
肉声ではない。
ゼクシズの頭の中に直接ノインツィアの声が響く。
声ならぬその声は所謂、念話、テレパシーという表現が適当だろうか。
「ああ」
それに対し、念話での経験がないゼクシズは口頭で返事をする。
(いい返事ね。でもそれだけでは不十分よ)
「と、言うと?」
(時間がないわ。手短に説明するわね)
「頼む」
(人造聖剣には勇者が使う強力な秘技、勇技が導入されているわ)
「勇技……」
(人造聖剣を介せば人造勇者はいつでも勇技を使用可能よ)
「どうすればいい?」
(「勇技」という単語を思い浮かべるだけでいいわ)
今、人造勇者と人造聖剣は同調している。
今ならばゼクシズがノインツィアの記憶領域に接続することは容易だ。
「勇技……」
ノインツィアに促された通りにゼクシズがその言葉への接続を開始する。
その刹那。
「……!」
人造勇者の頭の中をまるで洪水のように情報が流れこんでくる。
ゼクシズは「知らないはずなのに知っている」という奇妙な既視感を暫しの間味わう。
技の名前、技の出し方、技を出す最適な時機。
それらがすべてノインツィアからゼクシズへと共有される。
それはほんのわずかな時間でゼクシズを百戦錬磨の勇者へと変えた。
シュッ!
ヒュン!
空を斬る音が部屋の中に響き渡る。
剣を振るい、ゼクシズがいくつかの型を確かめているからだ。
いくら人造聖剣に勇技が導入されているとはいえ、実戦でいきなり試そうとするほど人造勇者は大胆ではなかった。
やがてゼクシズがその動きを止める。
目を閉じて少年は立ち尽くす。
(ゼクシズ?)
「…………」
それにゼクシズは応えない。
無視しているわけではない。
ノインツィアの呼びかけが届いていないのだ。
ゼクシズは心はしばし彼一人の世界にあった。
自分は人の手によって造られた勇者であると告げられ、促されるままに多くの人間の命を奪い、それを取りこんだ。
ここまでで半刻にも満たない。
彼にも思うところがあるのだろう。
しかし、そんな思案の時間はほんの束の間。
魔族たちの手はもうすぐそばまで伸びてきていた。
ゼクシズが目覚めたのは頑丈な鉄扉によって閉ざされていた部屋。
しかし、その程度の障害など魔族にとってはほんのわずかな時間稼ぎ程度にしかならない。
ズガアアアアッ!
この部屋と外界を隔絶してきた分厚い鉄扉は、けたたましい音を立てながら、その役目を終えた。
魔族たちの侵攻はほんのわずかな感傷に浸る時間さえも許してはくれなかった。
「呪われた聖剣」ことノインツィア=シュヴェルトが持つ能力。
それは。
【魂を喰らう者】。
その名の通り、生命を奪った者の魂を喰らう。
魂の質は基本的に知能水準と比例する。
つまり、より知的な生命体を取りこんだ方がより効率的な強化を期待できる。
その効果により、手の内にある人造聖剣を通して自らの中に力が流れ込んでくるのを人造勇者は感じていた。
「力があふれる……!」
この力は命だ。
つい先程自分が命を奪った人間たちの命の輝きだ。
誰よりもそのことをゼクシズ自身が感じていた。
「無駄にはしない……!」
そう声を絞り出し、誓いを立てる。
だが、謝罪はしない。
それは彼らの覚悟への冒涜に他ならないからだ。
(やれそう?)
肉声ではない。
ゼクシズの頭の中に直接ノインツィアの声が響く。
声ならぬその声は所謂、念話、テレパシーという表現が適当だろうか。
「ああ」
それに対し、念話での経験がないゼクシズは口頭で返事をする。
(いい返事ね。でもそれだけでは不十分よ)
「と、言うと?」
(時間がないわ。手短に説明するわね)
「頼む」
(人造聖剣には勇者が使う強力な秘技、勇技が導入されているわ)
「勇技……」
(人造聖剣を介せば人造勇者はいつでも勇技を使用可能よ)
「どうすればいい?」
(「勇技」という単語を思い浮かべるだけでいいわ)
今、人造勇者と人造聖剣は同調している。
今ならばゼクシズがノインツィアの記憶領域に接続することは容易だ。
「勇技……」
ノインツィアに促された通りにゼクシズがその言葉への接続を開始する。
その刹那。
「……!」
人造勇者の頭の中をまるで洪水のように情報が流れこんでくる。
ゼクシズは「知らないはずなのに知っている」という奇妙な既視感を暫しの間味わう。
技の名前、技の出し方、技を出す最適な時機。
それらがすべてノインツィアからゼクシズへと共有される。
それはほんのわずかな時間でゼクシズを百戦錬磨の勇者へと変えた。
シュッ!
ヒュン!
空を斬る音が部屋の中に響き渡る。
剣を振るい、ゼクシズがいくつかの型を確かめているからだ。
いくら人造聖剣に勇技が導入されているとはいえ、実戦でいきなり試そうとするほど人造勇者は大胆ではなかった。
やがてゼクシズがその動きを止める。
目を閉じて少年は立ち尽くす。
(ゼクシズ?)
「…………」
それにゼクシズは応えない。
無視しているわけではない。
ノインツィアの呼びかけが届いていないのだ。
ゼクシズは心はしばし彼一人の世界にあった。
自分は人の手によって造られた勇者であると告げられ、促されるままに多くの人間の命を奪い、それを取りこんだ。
ここまでで半刻にも満たない。
彼にも思うところがあるのだろう。
しかし、そんな思案の時間はほんの束の間。
魔族たちの手はもうすぐそばまで伸びてきていた。
ゼクシズが目覚めたのは頑丈な鉄扉によって閉ざされていた部屋。
しかし、その程度の障害など魔族にとってはほんのわずかな時間稼ぎ程度にしかならない。
ズガアアアアッ!
この部屋と外界を隔絶してきた分厚い鉄扉は、けたたましい音を立てながら、その役目を終えた。
魔族たちの侵攻はほんのわずかな感傷に浸る時間さえも許してはくれなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる