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第01章 認証登録(キス)から始まる運命的邂逅(ボーイ・ミーツ・ガール)
01-01「人造勇者、覚醒」②
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②
「彼女を『使って』お前たちを『殺す』?」
視線を少女の方に向けながら、老人の言葉の真意を図りかねるゼクシズ。
「そうだ。彼女はお前に唯一適合した人造聖剣」
「人造聖剣……!」
自分とは異なり、感情豊かに見える目の前の少女も己と同様、造られた存在なのだという。
ゼクシズは驚愕せずにはいられなかった。
「自己紹介するわね」
少女がその可憐な唇を開いた。
「私はノインツィア=シュヴェルト」
そう名乗った彼女は自らの胸に手を当てながら言葉を続ける。
「文字通り、いつでもあなたの『剣』になるわ」
人造聖剣である彼女は言う。
「認証登録も済ませたことだしね」
悪戯っぽく自らの唇をぺろり、と舐めて彼女は笑った。
その表情はどこか艶めかしい。
「どうすればいい?」
短く少年は少女に問う。
「刃化。それが合言葉よ」
その言葉に頷くゼクシズ。
「刃化!」
少年がそう叫んだ瞬間、少女の体は無数の光の粒に包まれ、その姿を剣へと変えた。
眩い銀の輝きを放つ美しい剣。
少年の手の内にその剣は在った。
ぴったりと吸いつくように手に馴染む。
重くも軽くもない。
ずっと前から自分はこの剣を握る感覚を知っている。
まるで自分の体の一部のようだ。
少年はそう思った。
「俺以外に人造勇者はいないのか?」
「あれを人造勇者、と呼んで良いものか……」
ゼクシズのその問いに対し苦い表情を浮かべて独り言のように長が呟く。
そして。
「……他の区画で目覚めさせている者もいる」
少し考えた素振りを見せた後にそう返答した。
「ならば、協力した方が良いのではないか?」
「それは無理な話だ」
ゼクシズのその提案に彼は首を横に振る。
「我が強く、お前のように大人しくはしてくれなかったのでな。長い間……本当に長い間。凍結せざるを得なんだ」
「今は目覚めさせても構わないと?」
「戦力としてはこれ以上ないほど頼りになる。奪われるくらいなら一か八かの可能性に賭けることにしたのだ。上手く機能すればお前たちを脱出させるくらいの時間稼ぎにはなる」
「そんな土壇場に来て俺たちを起動させた理由は?」
「今までお前たちを運用できない理由があった。それは後でゆっくり尋ねるといい。今ここにいる者も、まだここにはいない敵も、すべて滅ぼした後でな」
錬金術師たちはいなくなる。
自ずと尋ねるべき相手は一人だけだ。
ゼクシズもそれ以上は深く追求しない。
「我々を殺せばお前の力は増大する。それだけわかっていれば良い」
「説明を受ける時間はないのか?」
そうだ、と老錬金術師は頷く。
事態は切迫している。それだけは確かなようだ。
「あなたたちに尋ねておきたいのだけれど」
刀身から少女の声が響く。
人造聖剣はその身を剣と化した状態でも会話を行うことができるのだ。
ただし、その声は肉声ではなくどこか不自然な、作り物であるかのような印象を聞く者に与えていた。
「私は神に背きし人造聖剣……。人造聖剣を使って生命を奪われた場合は天国にも地獄にも行けるとは思わないで。私に斬られた者の行く先は完全な『無』よ。……本当にいいの?」
「覚悟の上だ」
老錬金術師は一切の躊躇いを見せずに答える。
「散々世界に犠牲を強いてきた我々だ。自分たちの命が惜しい、などという戯言は例え口が裂けたとて言葉にできん」
「そう……」
剣と化し表情こそ窺い知ることができないものの、ノインツィアはそう嘆息する。
彼女にも思うところがあるのだろう。
「必要なことはすべて彼女が把握している。何も心配することはない」
「わかった。短いつき合いだったな」
淡々とゼクシズはそれに応えた。
そして。
血の雨が降る。
次から次へと。
命じられるがままに。
力を得るために。
彼「ら」はそこにいたすべての人間たちの首を刎ね飛ばした。
「彼女を『使って』お前たちを『殺す』?」
視線を少女の方に向けながら、老人の言葉の真意を図りかねるゼクシズ。
「そうだ。彼女はお前に唯一適合した人造聖剣」
「人造聖剣……!」
自分とは異なり、感情豊かに見える目の前の少女も己と同様、造られた存在なのだという。
ゼクシズは驚愕せずにはいられなかった。
「自己紹介するわね」
少女がその可憐な唇を開いた。
「私はノインツィア=シュヴェルト」
そう名乗った彼女は自らの胸に手を当てながら言葉を続ける。
「文字通り、いつでもあなたの『剣』になるわ」
人造聖剣である彼女は言う。
「認証登録も済ませたことだしね」
悪戯っぽく自らの唇をぺろり、と舐めて彼女は笑った。
その表情はどこか艶めかしい。
「どうすればいい?」
短く少年は少女に問う。
「刃化。それが合言葉よ」
その言葉に頷くゼクシズ。
「刃化!」
少年がそう叫んだ瞬間、少女の体は無数の光の粒に包まれ、その姿を剣へと変えた。
眩い銀の輝きを放つ美しい剣。
少年の手の内にその剣は在った。
ぴったりと吸いつくように手に馴染む。
重くも軽くもない。
ずっと前から自分はこの剣を握る感覚を知っている。
まるで自分の体の一部のようだ。
少年はそう思った。
「俺以外に人造勇者はいないのか?」
「あれを人造勇者、と呼んで良いものか……」
ゼクシズのその問いに対し苦い表情を浮かべて独り言のように長が呟く。
そして。
「……他の区画で目覚めさせている者もいる」
少し考えた素振りを見せた後にそう返答した。
「ならば、協力した方が良いのではないか?」
「それは無理な話だ」
ゼクシズのその提案に彼は首を横に振る。
「我が強く、お前のように大人しくはしてくれなかったのでな。長い間……本当に長い間。凍結せざるを得なんだ」
「今は目覚めさせても構わないと?」
「戦力としてはこれ以上ないほど頼りになる。奪われるくらいなら一か八かの可能性に賭けることにしたのだ。上手く機能すればお前たちを脱出させるくらいの時間稼ぎにはなる」
「そんな土壇場に来て俺たちを起動させた理由は?」
「今までお前たちを運用できない理由があった。それは後でゆっくり尋ねるといい。今ここにいる者も、まだここにはいない敵も、すべて滅ぼした後でな」
錬金術師たちはいなくなる。
自ずと尋ねるべき相手は一人だけだ。
ゼクシズもそれ以上は深く追求しない。
「我々を殺せばお前の力は増大する。それだけわかっていれば良い」
「説明を受ける時間はないのか?」
そうだ、と老錬金術師は頷く。
事態は切迫している。それだけは確かなようだ。
「あなたたちに尋ねておきたいのだけれど」
刀身から少女の声が響く。
人造聖剣はその身を剣と化した状態でも会話を行うことができるのだ。
ただし、その声は肉声ではなくどこか不自然な、作り物であるかのような印象を聞く者に与えていた。
「私は神に背きし人造聖剣……。人造聖剣を使って生命を奪われた場合は天国にも地獄にも行けるとは思わないで。私に斬られた者の行く先は完全な『無』よ。……本当にいいの?」
「覚悟の上だ」
老錬金術師は一切の躊躇いを見せずに答える。
「散々世界に犠牲を強いてきた我々だ。自分たちの命が惜しい、などという戯言は例え口が裂けたとて言葉にできん」
「そう……」
剣と化し表情こそ窺い知ることができないものの、ノインツィアはそう嘆息する。
彼女にも思うところがあるのだろう。
「必要なことはすべて彼女が把握している。何も心配することはない」
「わかった。短いつき合いだったな」
淡々とゼクシズはそれに応えた。
そして。
血の雨が降る。
次から次へと。
命じられるがままに。
力を得るために。
彼「ら」はそこにいたすべての人間たちの首を刎ね飛ばした。
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