少年が気持ちよくなる方法

三木

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「今は細すぎるぐらいでも、これからいっぱい食べて肉がついて、大人になったらもっとずっとスタイルがよくなるんだろうなと思うと、このひょろっちいのも今だけだろ。今のうちにいっぱい触って見ておかなきゃなって気がするよ」
 ちゅ、と音を立てて喉に口づけてやると、良は裕司の肩を押しやってきた。
「わかったからもういいよ……」
 顔を見ても良と目が合わなくて、裕司はほくそ笑んだ。
「何でここで照れるんだよ」
「……あんたがそんなに俺に興味持ってるなんて思わなかったんだよ……」
 この期に及んでそんなことを言うのか、と、裕司は口を開けて良を見つめてしまう。裕司が良にとことん甘く、良に心を砕いていることを知っていて、無関心であるはずがないとこれまで気付かなかったのだろうか。
「……じゃあお前、俺がどれだけお前にこだわってるか知ったらドン引きするな」
 赤い目許に触れながら言ってやると、やっと黒い目がこちらを見た。
「引いたりとかはしないよ……」
「そうなのか?」
「うん…………しない」
 良はそう言って、裕司の胸に顔を押し付けてきた。
 心臓の音が聞こえているだろうことに気恥ずかしくなりながらも、裕司は良の背中を抱き寄せる。
「……寒くないか?」
 肉の薄い背中を撫でて訊いてみると、胸元から静かな返答があった。
「あんたがあったかいから平気……」
 可愛いこと言いやがって、と、簡単に嬉しくなってしまう自分に笑いながら、良のうなじを手で包んで、その耳を口に含む。ふわ、と驚いた声がした。
「……びっくりするじゃん」
 良は食まれた耳を手で押さえて、睨むような、と言うには幾分弱い目で裕司を見上げてきた。
「耳弱いよな、お前」
「いきなりかじられたらみんな驚くでしょ」
 かじってねーよ、と笑って、裕司は良の肩を抱き寄せて言った。
「いきなりじゃなかったら、好きにしていいのか?」
 良の目が見開かれて、そしてその瞳に、じわりと欲が滲むのが見えた気がした。
「……いいよ……好きにして」
 その声にわずかな緊張を感じて、裕司の中に色んな感情が湧き出した。嬉しくて、愛しくて、たまらなく可愛くて、うんと優しくしてやりたいと思うと同時に、いじめてやりたいとも思う。愛情と欲情が入り混じって、境界線がわからなかった。
 良の髪を撫でて、抱き寄せて、良が嫌がらないのを確かめながら、耳朶を舐めて、ゆるく歯を立てた。声になりそこねたような吐息が良の唇から漏れて、やはり感じるのだと思いながら指と唇と舌で丁寧になぶった。
「……っあ……!」
 短い声を上げて、良は背中を震わせた。その反応に満足して、裕司は良の顔を覗き込んだ。
「……こういうのを、お前の身体中にしてやりたいんだが……イヤなことはちゃんとイヤって言っといた方がいいぞ?」
 見返してくる良の瞳は明らかに熱を帯びていて、誘われていると錯覚してしまいそうだった。ここまで来て勘違いはしたくないと思いながら返事を待つと、良は裕司の肩に顔をうずめてきた。
「……もしかしなくても、あんたすっごいやらしいね……」
 その言われようはいささか不本意で、裕司は手慰みに良の髪を撫でながら言った。
「俺がやらしいならお前だってそうだろうが」
「……俺あんたほど経験ないし」
「あんだけ積極的だったくせにどうしたよ」
 怖気づいたとしても仕方ない、と思いながら、裕司は言う。良が本当に怖がるなら、無理強いはすまいと思っていた。
 その気になった心も身体も抑えるのはつらかったが、彼を傷付けることはもはや裕司にとって論外だった。
 なかなか返事が返ってこないので、温めるつもりで細い身体を抱いてゆっくりと撫ぜる。心臓が速く打っているのが伝わってきて、それがまた愛しさを膨らませた。
「…………だよ」
 良の呟きの語尾しか聞こえなくて、え? と裕司は問い返す。良は強く裕司の背中にしがみついてきた。
「……あんたが、本当に俺のこと抱く気なんだって思ったら、嬉しくて今泣きそうなんだけど、どうしてくれんの?」
 言っていることと言葉の調子がちぐはぐで、裕司は何と反応してよいかわからなかった。
 それでも良の言葉を疑う頭ははなからなくて、裕司はそっと良の顔を上げさせてその顔を見る。黒い瞳は彷徨ってなかなか目を合わせてくれなかったが、頭を撫でているとやがて裕司の目を見てくれた。
 本当に泣きそうな目をしているのがたまらなくて、裕司は思わずくしゃりと笑った。
「……これ以上ないってくらい、甘やかして抱きたいよ」
「……俺が初めてだから?」
 裕司は少し考えて、そして言った。
「俺がお前を抱くのが初めてだから、かな……」

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