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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
144.サクッと
しおりを挟む馬鹿でアホで下品で変態で騒がしくて有能で、(仕事は)優秀な部下を思い出しながら、静かな王城を進む。
すれ違う貴族や王城勤めの従者に手を振りながら宝物庫の門前に行き、一応ウィール様に見張りを説き伏せてもらう。
「世界樹ウィール様と精霊妃様ですね。許可証はお持ちでしょうか。」
「あいにく持っていないのだけれど、宝物庫に入るには許可証がいるのかい?」
「はい。王族の皆様であろうと必要になります。申し訳ありませんが、規則ですので。」
「君を責めたりはしないよ。邪魔して悪かったね。小鳥美、行こう。」
「ええ、仕方ありませんもの。お邪魔しました、お仕事頑張ってくださいな。」
『精霊妃』として見張りの騎士に一礼し、踵を返して無人の執務室へと向かう。
「一心。」
「なめないでください、マスター。斧はここに。」
「さすが♪私の息子は優秀だねぇ。お母さん嬉しい。」
「全く…今代の精霊妃は手癖が悪いね。」
「「何のことやら。/何のことでしょう。」」
時間稼ぎの間に一心がしっかり盗ってきてくれたので、執務室の書類を整理してもらう間に武器を眺める。
「やはりゲームの世界で友人に作ってもらったものだから、性能は抜群のうえ手によくなじむ。嗚呼、やはり素晴らしい。」
(「なんだか恍惚と見ているけれどいいのかい?」)
(「いつものことですよ、認めたくはないですけれど。」)
(「あんなに武器が好きだったんだねぇ。」)
(「正確には、友人たちが自分の為だけに作ってくれたオーダーメイドの武器だから、あんなに嬉しくなっているのでしょう。マスターは仲間と友人たちには優しいですから。」)
「そこ、聞こえてるからね。」
「「何のことでしょう。/なんのことだい?」」
「全く何をやっているのやら。」
傷がない事を入念に確認した後一心に放り投げる。基本的に一心が使ってる武器だからね、これ。
「あーあ。籠手欲しい籠手。」
「隣国ですよ。」
「分かっちゃいるけれどね?欲しいじゃんメイン武器。」
誰の気配もしないことをいいことに、ぶーぶーと文句をたれる。
「はぁ…。」
呆れた顔を隠すことなく主を見る一心。そしてあくまで、あくまで執事らしい口調で諭し始めた。
「そもそも、隣国に関することは慎重に行うと決めたのは貴方でしょう?根回しも仕事もうまくいっている状況ですが、放り出して無に帰し行くおつもりで?たかだか武器一つの為に?」
「うっ…。」
「仕事もやっと、精霊妃であるマスターが動けない分『私が』頑張った結果、やっとここまで信頼を得られたというのに?」
「うぐっ。」
「それに、元の世界ほど殺伐とした状況ではないのですから武器必要ないでしょうが。馬鹿だったのですか?」
「ぐはっ。」
滅多打ち。それが一番似合うこの状況はどうにかしたいがどうにもならない。
(今言ったら肉片にされる。言葉に切り刻まれる!)
「ご所望でしたら切り刻みましょうか?」
「ドMじゃないので遠慮します。」
「遠慮は必要ありませんよ?マスターにはいつもお世話になっておりますから、たっぷりと礼をしなくてはいけませんしね。」
いっそ清々しい笑顔でにこやかに語る一心。怖い、怖いよ息子。君は昔もっと純粋だったは………。
…………………
(一心が純粋な時期なんてあったっけ?)
気付いた時には師匠と千葉に毒されていたなそういえば。
見た目は自分でニアの時みたいに作らせて…戦闘は師匠のまねで…思考回路はなぜか千葉に似ていて…
…私成分あるのかこれ…?
…………
…………
…………
ウン!ワタシワカンナイナー!私は一心の母親です。文句は受け付けん。
「マスター?どうしました?ついに崩壊しましたか?」
「してないよ何言ってんの一心。」
「いえ。」
「これはひとまず諦めるよ。異世界の生き物が来たっていう報告もないから、精霊の土地で戦いに行く必要もないからね。」
パンッと手を叩いて思考を切り替え、頭の中で情報を整理し始めた。
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