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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

145.精霊の守り人

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当初の予定通り、精霊妃『精霊妃』のことが書かれた本は既に民の間で広まっている。
その上結構な人数の時に貴族を放り投げたから貴族の信頼は最低をさまよっている。予定は少し狂ったもののこれで土台は出来た。

貴族の意識を一掃するためには、これぐらいのオーバーキル過剰攻撃がちょうどいいだろう?

ふと気になって、少し小ぶりの書類が重なっている山から一枚を引き抜くと、『精霊妃』あてのお茶会の招待状らしいことが分かった。

(招待状を送るのは禁止って各国の国王に伝えたはずだけれど…。)

「一心、家名記録して片付けておいて。」

「かしこまりました。」

「ウィール様、こっちの書類内容別に分けられます?」

「もちろん。」

ふわりと書類が浮かび空中に積み上げられていくのを横目に、了承のサインと手元の書類に書かれたサインを見比べる。

「ウィール様、これ、どう思います?」

「ん?……書いてあるのは同じ名前だけれど、本人が書いたとは思えないね。」

「ですよねぇ。一心、一応筆跡鑑定してもらえる?」

「すでに終わっております。同一人物の可能性が20.3%です。まぁ、素人が似せて書いたにしてはうまく書けたのではないですか?」

「やっぱりそのレベルだよねぇ。」

偽の国王のサインが書かれた書類をアイテム倉庫にしまい、ペンで国王の名前でサインを書く。

「一心、筆跡鑑定。」

「……流石ですね。同一人物の可能性92.4%です。」

「じゃ、このまま進めますか。」

(「ニア、聞こえる?片手間でいいから、薬草の半分を部分ごとに分けてすりつぶしておいて。今送る。」)

(「了解しました、マスター。」)

執務室の椅子に座って書類を片付けていく。

「小鳥美、私も手伝おうか?」

正直なところ手伝ってもらう事もないのだが、なら顔合わせでもしてもらおうかな。

「じゃあウィール様、一緒に顔合わせに行きましょうか。一心、ここ頼んだよ。ダーネスに教えてもらった精霊見える人のところに行って、病人強制療養させてくる。」

「はぁ。了解いたしましたマスター。まったく、人使いが荒いのではありませんか?」

「すぐ戻って来るよ!」

光の透明な膜に覆われたのを確認して窓を開け、死神の黒いローブを身に纏う。

そのまま窓から外に出て、頼りなくもしっかりと浮かんでいることを確認してウィール様と目を合わせる。

それを見たウィール様は苦笑して、トンッと軽く跳ねて浮きそのまま先導してくれた。

「おっといけない。ウィール様、病人の回収忘れてました。」

「私もすっかり忘れていたよ。一番大事なことなのにね。居場所はもう分っているのかい?」

「ええ、こっちです。」

王城に戻り、広めの部屋に監禁されている病人をより深く魔法で眠らせる。まぁ、暴れられても困るしね。

念には念をと、偽物置いてからサクッと攫い、改めて目的地へと向かう。

王都からわずかに離れたその場所は、よく見れば精霊達が多く集まっているのが分かる。

「ウィール様!いらっしゃいませ。闇の精霊王様よりお話は伺っております。このような何も無い地ではありますが、どうぞ疲れを癒してください。」

やや小ぶりな建物から出てきたのは茶髪の男性。

柔らかい視線を向ける茶色の目と周りに集まっている精霊達が、彼の優しさを物語っている。

「久しぶり、リーザル。こっちが精霊妃の小鳥美だよ。たまに千利とも呼ばれるから、その時は千利と呼んであげて?」

「初めましてリーザル。私が今代の精霊妃、小鳥美と言う。元の世界では名前が二つあってな。そのもう一つが千利なんだ。その場に合わせてくれれば助かるが、迷ったら姫とでも呼んでくれ。

そしてリーザル。先ほどから気になっているであろうこの布にまかれた人物についてだが……。」

「ええ、先ほどから気になっておりました。しかし、先日闇の精霊王様が来られた時にはおっしゃっておりませんでした。私には伝えられないこと、いえ、伝えない方が良いとウィール様方が判断されたことなのでしょう。ならば私に異論などございません。」

寂しそうに言うリーザルは、それでも私達を責めない。

「ただ、私に協力できる事がありましたら、何なりとお申し付けください。」

ただただ静かに微笑んでいた。
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