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都会に出る時は・・・知り合いがいれば心強いものですよね? 19
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第一章 十五話
「ようこそおいで下さいました。当家の執事長を務めますクリステンセンです」
正面玄関で僕を出迎えたのは、執事長を名乗る30前後の男性だった。アルフレートさんに近い美しい所作で礼をされる。
「カナタ・コウサカです。お召しにより参上致しました。御当主にお取り次ぎ願います」
密かに邸内を観察しながら案内を促す。
「直ちにご案内致します。当主のブランデルが応接室にてお待ちしております」
そう言って先導を勤めるクリステンセンに付いて3分程歩くと重厚な扉の前で立ち止まり、ノックして声を掛ける。
「カナタ・コーサカ様をご案内しました」
「入っていただけ」
クリステンセンが此方を向き、重厚な扉を開けて入室を促す。一応室内の人数と配置をエコーロケーションで確認しつつ室内に入る。
「お初にお目にかかる。ビットナー伯爵家当主を務めるブランデル・フォン・ビットナーだ。些か不本意な形での招待になってしまい汗顔の至りだ。そして.....こやつの事は既にご存知かと思うが改めて紹介しよう。娘のヒルデガルドだ」
「初めまして。お召しにより参上致しました。カナタ・コウサカです。ヒルデガルド様には格別のご助力を頂き感謝の言葉もありません」
序盤は社交辞令から入る。ビットナー伯爵は年齢50代前後、如何にも歴戦の武人を思わせるがっしりした体系の男性だ。
「いや、それは当方こそだ。まずは何を措いても娘の窮地を救って頂いた事にお礼申し上げる。誠にありがとう御座いました」
「コーサカ殿。その節は多大なご助力、誠にありがとう御座いました。お陰で兵たちの命も無駄に散らす事なく済みました」
深々と頭を下げられた。若干の戸惑いを覚えるが改めて言葉を紡ぐ。
「お気遣い無用です。先に無償で助力を頂いたのは此方の方ですので...」
「そう言って貰えると助かる。まずはお掛け頂こう。すぐに茶を用意させる」
そう言ってソファーに座るよう促された。今のところ伯爵は礼儀正しく振る舞い殊更傲慢でもない。そろそろ本題に入っても構わないだろう。
「本日は砦での事をお知りになりたいとの事ですが...」
「そうだな。取り繕っても始まるまい。あなたが砦に現れた経緯や実際に起こった事については報告を受けている。その上で幾つかお聞きしたい」
「返答可能な事であれば...」
「まずは貴殿の素性について。正直な所を申せば貴殿程の“魔法使い”がいる国は寡聞にして存じ上げない。出身国はどちらなのだろうか?」
順当な質問だな。以前ヒルデガルドに語った内容に加えてグンドルフの村での話を改めて話す。
「僕の素性としてはお話し出来るのは以上です。王都に来る迄に仕入れた情報では、僕の様な黒髪で黒い瞳の容姿は東方の国の出身者に多いそうですので、取り急ぎ其方から手掛かりを探そうかと考えています」
「...なるほど。ちなみに出入りの行商人とは面識などは?」
「残念ながら顔を見たら分かる程度です。また、僕の村は本来、外界との接触を出来る限り避けて古代の“失われた魔法”を保存、研究する為の村なのです。従って本来は強力な結界で覆われ、出入りの商人も数世代前に離村した村の出身者の子孫の為ほぼ情報収集は不可能です」
こう言っておけば多少“風変わり”な魔法を使ってもごまかしやすいだろう...
「なんと...その様な村が...しかしそれでは幾らかの場所に当たりをつけても発見は困難なのではないですかな?」
「...ヒルデガルド様にも申し上げましたが、僕本来の魔力は長距離転移魔法の失敗でかなり霧散してしまいました。目算ではあと2ヶ月程で回復の目処が立ちます。それまでには結界その物を探査する魔法の開発を考えております」
「いやはや...話は変わるが帝国の武器を奪取した魔法はやはり転移魔法で?」
「すいません。其方は秘匿事項なので詳しい事はお答え出来ません。ただし類する物とお考え頂いて結構です」
「なるほど。それでは貴殿はこの王都に拠点を置いて故郷の探索を進めると考えていいのですかな?」
「お許し頂けるならば...そうしたいと考えております」
「...ここは誠実にお話するべきでしょうな。先日の砦での一件は既に陛下のお耳にも入っております。陛下や私個人の考えでは、あなたのような大きな力をもった個人は良かれ悪しかれ周囲に大きな影響を及ぼす.....可能な限り早急に帰還して頂くのが最良と考えております」
「なるほど。全くもって仰る通りですね」
「しかし同時にあなたは一兵も損なう事なく彼の国からの侵攻を防いだ英雄でもあります。その恩を仇で返すのも国家の矜持としては許容出来かねる」
「買い被りだと思いますが...」
「つまり我が国としては、早急に帰還して頂く為に最大限の援助をさせて頂く。その代わり、あなたの存在はこの国でも一部の存在のみの秘匿事項とし、特に周辺諸国には絶対の禁忌とする。そういう形にてお願いしたいのです」
ふむ。概ね悪くない形だ。だが...
「...幾つか条件があります」
「...聞かせて頂きましょう」
「そうですね、まずソファーをもう一客用意して貰いましょうか。立ちっぱなしではそろそろお疲れではないですか?」
そう言って部屋の隅に向かって話しかける。すると...うっすらした人影が次第に明確な輪郭を持ち始めて最後には灰色のローブ姿の少女が現れた。
一同驚愕の表情。特に魔法使いの少女は“納得出来ない!”という表情をしている。
「まあ、何処の馬の骨とも分からない輩ですからね。監視位は構いません。あまりプライベートまで踏み込まれては辟易するでしょうが...」
「やはりアナタは認識阻害が“発動している”にも関わらず私を捉えた。おかしい、理屈に合わない...」
「これは僕自身が常々心掛けている事ですが、自分の認識にそぐわないからと言って事実が変わる事はありません。世界は広く新たな知識に限りはありません。精進なさるといいでしょう」
「ググムーッ!」
変な声で唸っている。無視して話を進めよう。
「ビットナー伯爵。お申し出は有り難いのですが無償の援助はお断り致します。健全な関係を続ける為には一方的な依存は望ましくありません。代わりと言ってはなんですが私に出来る事があれば侵略行為や秘匿魔法の開示以外は“仕事として請け負う”というのはどうでしょう? 私も仕事の報酬としてならば金銭を受け取り易い。それに普段の調査行為は出来うる限り秘密裏に行うと約束させて頂きます」
「...それは願ってもない提案だが...此方からも幾つか確認したい。まず契約が一方的に反故にされた時はどうする? 其方はともかく此方はペナルティーを課す事が出来ない。それに...此方の依頼内容に付いて何処まで実現可能かという事だ。貴殿が規格外の魔法使いだというのは理解している。しかし上限の判断基準は何処まで設定すればいいのだ?」
「そうですね...まずは今現在、大人しくお話を聞いている事で多少信用して頂くしかありません。それに...隠れてでなければ、仕事の際には目付役の存在も受け入れましょう。あとは...ペナルティーというなら報酬を無くせば宜しいのですよ。僕は別に霞を食べて生きている訳ではありません。帰還の為にも“余計な妨害”や、行動を阻害する“金銭的負担”は避けたいのが偽らざるところです」
「なる程...」
伯爵たちが頷いた。
「後は私が出来る事の上限ですが……」
{ミネルヴァ、状況提示プランCを発動する。設定は済んでるかい?}
{範囲設定・座標設定、共に完了しております。何時でもどうぞ!}
そしてゆっくりと発動ワードを呟く...
「エクスチェンジ!」
スキルが発動した瞬間、部屋に有ったソファーやテーブルごと4人の人間が転移する。
僕以外の人間は表情をひきつらせて周囲を確認している。説明したほうがいいだろうか...
「此方から見るのは初めてでしょうか?まあ今出来るのはこれ位の事ですね。もう少し回復すれば多少はましになりますが...」
其処は王城前広場にある演説用の高台だった。
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正面玄関で僕を出迎えたのは、執事長を名乗る30前後の男性だった。アルフレートさんに近い美しい所作で礼をされる。
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密かに邸内を観察しながら案内を促す。
「直ちにご案内致します。当主のブランデルが応接室にてお待ちしております」
そう言って先導を勤めるクリステンセンに付いて3分程歩くと重厚な扉の前で立ち止まり、ノックして声を掛ける。
「カナタ・コーサカ様をご案内しました」
「入っていただけ」
クリステンセンが此方を向き、重厚な扉を開けて入室を促す。一応室内の人数と配置をエコーロケーションで確認しつつ室内に入る。
「お初にお目にかかる。ビットナー伯爵家当主を務めるブランデル・フォン・ビットナーだ。些か不本意な形での招待になってしまい汗顔の至りだ。そして.....こやつの事は既にご存知かと思うが改めて紹介しよう。娘のヒルデガルドだ」
「初めまして。お召しにより参上致しました。カナタ・コウサカです。ヒルデガルド様には格別のご助力を頂き感謝の言葉もありません」
序盤は社交辞令から入る。ビットナー伯爵は年齢50代前後、如何にも歴戦の武人を思わせるがっしりした体系の男性だ。
「いや、それは当方こそだ。まずは何を措いても娘の窮地を救って頂いた事にお礼申し上げる。誠にありがとう御座いました」
「コーサカ殿。その節は多大なご助力、誠にありがとう御座いました。お陰で兵たちの命も無駄に散らす事なく済みました」
深々と頭を下げられた。若干の戸惑いを覚えるが改めて言葉を紡ぐ。
「お気遣い無用です。先に無償で助力を頂いたのは此方の方ですので...」
「そう言って貰えると助かる。まずはお掛け頂こう。すぐに茶を用意させる」
そう言ってソファーに座るよう促された。今のところ伯爵は礼儀正しく振る舞い殊更傲慢でもない。そろそろ本題に入っても構わないだろう。
「本日は砦での事をお知りになりたいとの事ですが...」
「そうだな。取り繕っても始まるまい。あなたが砦に現れた経緯や実際に起こった事については報告を受けている。その上で幾つかお聞きしたい」
「返答可能な事であれば...」
「まずは貴殿の素性について。正直な所を申せば貴殿程の“魔法使い”がいる国は寡聞にして存じ上げない。出身国はどちらなのだろうか?」
順当な質問だな。以前ヒルデガルドに語った内容に加えてグンドルフの村での話を改めて話す。
「僕の素性としてはお話し出来るのは以上です。王都に来る迄に仕入れた情報では、僕の様な黒髪で黒い瞳の容姿は東方の国の出身者に多いそうですので、取り急ぎ其方から手掛かりを探そうかと考えています」
「...なるほど。ちなみに出入りの行商人とは面識などは?」
「残念ながら顔を見たら分かる程度です。また、僕の村は本来、外界との接触を出来る限り避けて古代の“失われた魔法”を保存、研究する為の村なのです。従って本来は強力な結界で覆われ、出入りの商人も数世代前に離村した村の出身者の子孫の為ほぼ情報収集は不可能です」
こう言っておけば多少“風変わり”な魔法を使ってもごまかしやすいだろう...
「なんと...その様な村が...しかしそれでは幾らかの場所に当たりをつけても発見は困難なのではないですかな?」
「...ヒルデガルド様にも申し上げましたが、僕本来の魔力は長距離転移魔法の失敗でかなり霧散してしまいました。目算ではあと2ヶ月程で回復の目処が立ちます。それまでには結界その物を探査する魔法の開発を考えております」
「いやはや...話は変わるが帝国の武器を奪取した魔法はやはり転移魔法で?」
「すいません。其方は秘匿事項なので詳しい事はお答え出来ません。ただし類する物とお考え頂いて結構です」
「なるほど。それでは貴殿はこの王都に拠点を置いて故郷の探索を進めると考えていいのですかな?」
「お許し頂けるならば...そうしたいと考えております」
「...ここは誠実にお話するべきでしょうな。先日の砦での一件は既に陛下のお耳にも入っております。陛下や私個人の考えでは、あなたのような大きな力をもった個人は良かれ悪しかれ周囲に大きな影響を及ぼす.....可能な限り早急に帰還して頂くのが最良と考えております」
「なるほど。全くもって仰る通りですね」
「しかし同時にあなたは一兵も損なう事なく彼の国からの侵攻を防いだ英雄でもあります。その恩を仇で返すのも国家の矜持としては許容出来かねる」
「買い被りだと思いますが...」
「つまり我が国としては、早急に帰還して頂く為に最大限の援助をさせて頂く。その代わり、あなたの存在はこの国でも一部の存在のみの秘匿事項とし、特に周辺諸国には絶対の禁忌とする。そういう形にてお願いしたいのです」
ふむ。概ね悪くない形だ。だが...
「...幾つか条件があります」
「...聞かせて頂きましょう」
「そうですね、まずソファーをもう一客用意して貰いましょうか。立ちっぱなしではそろそろお疲れではないですか?」
そう言って部屋の隅に向かって話しかける。すると...うっすらした人影が次第に明確な輪郭を持ち始めて最後には灰色のローブ姿の少女が現れた。
一同驚愕の表情。特に魔法使いの少女は“納得出来ない!”という表情をしている。
「まあ、何処の馬の骨とも分からない輩ですからね。監視位は構いません。あまりプライベートまで踏み込まれては辟易するでしょうが...」
「やはりアナタは認識阻害が“発動している”にも関わらず私を捉えた。おかしい、理屈に合わない...」
「これは僕自身が常々心掛けている事ですが、自分の認識にそぐわないからと言って事実が変わる事はありません。世界は広く新たな知識に限りはありません。精進なさるといいでしょう」
「ググムーッ!」
変な声で唸っている。無視して話を進めよう。
「ビットナー伯爵。お申し出は有り難いのですが無償の援助はお断り致します。健全な関係を続ける為には一方的な依存は望ましくありません。代わりと言ってはなんですが私に出来る事があれば侵略行為や秘匿魔法の開示以外は“仕事として請け負う”というのはどうでしょう? 私も仕事の報酬としてならば金銭を受け取り易い。それに普段の調査行為は出来うる限り秘密裏に行うと約束させて頂きます」
「...それは願ってもない提案だが...此方からも幾つか確認したい。まず契約が一方的に反故にされた時はどうする? 其方はともかく此方はペナルティーを課す事が出来ない。それに...此方の依頼内容に付いて何処まで実現可能かという事だ。貴殿が規格外の魔法使いだというのは理解している。しかし上限の判断基準は何処まで設定すればいいのだ?」
「そうですね...まずは今現在、大人しくお話を聞いている事で多少信用して頂くしかありません。それに...隠れてでなければ、仕事の際には目付役の存在も受け入れましょう。あとは...ペナルティーというなら報酬を無くせば宜しいのですよ。僕は別に霞を食べて生きている訳ではありません。帰還の為にも“余計な妨害”や、行動を阻害する“金銭的負担”は避けたいのが偽らざるところです」
「なる程...」
伯爵たちが頷いた。
「後は私が出来る事の上限ですが……」
{ミネルヴァ、状況提示プランCを発動する。設定は済んでるかい?}
{範囲設定・座標設定、共に完了しております。何時でもどうぞ!}
そしてゆっくりと発動ワードを呟く...
「エクスチェンジ!」
スキルが発動した瞬間、部屋に有ったソファーやテーブルごと4人の人間が転移する。
僕以外の人間は表情をひきつらせて周囲を確認している。説明したほうがいいだろうか...
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