トランスファー “空間とか異次元とかってそんなに簡単なんですか?”

ajakaty

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外国には・・・外国の事情がある物ですよね? 55

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      第一章  五一話

 三首の神獣ギドルガモンを活動停止に追い込んだ翌日・・・僕たちはローランドさんが村長をしている村の広場にいた。

 その場にはアローナとグラブフット、他にロアナ、ローランドさん、サブリナが居る。

 ギルムガンの兵士達は、村で拘束した留守部隊と合わせてテンプオーダーエンター2にて改めて拘束した。一応、中は生活するのに不自由しない最低限の環境は整えてある。

 アローナは部隊を完全に掌握しているらしく、兵達からは表だって不満は出ない。当然だがアローナやグラブフットの言動を100%信用する事など出来ない以上、戦力の分断という意味でも、人質という意味でも、現状ではこの形が最良だろう。

ーーーーーーーーーーー

 実は、昨晩については、まだ誰にも話していない。あの場の全員が“理解し納得する説明”は難しかったのもあるが・・・僕自身も、を咀嚼するのに時間が欲しかった。

 結果、後日の説明を約束した上で、ローランドさんの村に転移し現在に至る。

 村に戻った時点でドローンオウルミニミネルヴァを通じ、マルグリットとヒルデガルドにはざっと事情を説明してある。まぁ、両方ともかなり驚いて、更に詳しい説明を求められたが・・・面倒なので後日にして貰った・・・ヒルデガルドの背後からはシドーニエが “自分が居ないとどこまで無茶をするんだ!” と怒っている声が聞こえていたが・・・

「それでは手筈通り、アローナさんにはギルムガン王国まで案内して貰いましょうか・・・」

「案内はいいんだけど・・・本当に“地母神の涙ガイアラドライト”は手に入れたの?」

 アローナからな質問を受けた。結局あの後、ギドルガモンのコアから新たな応用魔法構文アプリケーションをダウンロードしたが、周囲の人間には何も話してない。グラブフットには、なんとなく気付かれている様だが・・・

「ええ、問題ないでしょう。それよりも早く王の所に行かないと・・・手遅れになっては困ります。」

「もう何度も見てるから分かってるけど・・・あんたの使ってるのってよね?それこそギルムガン王国まで一瞬で行けるんじゃないの?」

「そんなに都合の良い物でもないんですよ。他の魔法以上に魔力を消費しますし、それなりのだってあります。」

「ふーん・・・まあいいわ。確かにあんたの言う通り今は・・・国王の病気が最優先だしね。」

 以前から気になっていたが、どうもアローナの言動からは国王に対するが見て取れる、少し気にはなるが・・・

「それではローランドさん、ライモンドさん達のを頼みます。グラブフットさんは、領都に駐屯している兵士達をまとめて、これ以上現地人との軋轢あつれきを生じさせない様にお願いします。」

 二人に声を掛けながら、転移の準備の為アローナの右肩に後ろから手を置く。

「承知したよ。ライモンド達もが実現するなら、特に異存はなかろう。勿論わしらもな!」

「こっちもまかせろ。アローナはおらんが領都の占拠部隊の指揮官は話がわかるやつだ。幸いグラム神聖国から派遣されていた極少数の兵士以外とは殆ど交戦していない筈だし、なんとかなるだろうよ。」

「宜しくお願いします。では・・・」

{ミネルヴァ、とりあえずギルムガンの王都近郊で、目立たない所まで行こうと思うんだが・・・ミネルヴァの能力とマップがあれば道に迷う事はないだろうけど、魔力エネルギー粒子は大丈夫か?}

{昨晩より全開で集積しておりますので問題ありません。むしろ昨晩より限界容量が大幅に増加していると思われます。}

 なにか不穏当なセリフが聞こえた気がしたが・・・いや後にしよう。

「では皆さん、すぐ戻りますので後は頼みます。“連続転移魔法オートアクティブ”」

ーーーーーーーーーーー

 ギルムガン王国の王都ソルディーユは、湖を囲む様に形成された都市だった。沿岸部を大規模な町が囲み、更に外沿部を城壁が取り囲んでいる。湖には様々な船が行き交い、湖のほぼ中央にある巨大な浮島には、更に美しい街並みと王城が鎮座していた。

「初めて見ましたが美しい都ですね。」

「・・・外面だけはね・・・」

 涙目のアローナが答える。アローナ程の武人でもオートアクティブの “連続内蔵浮遊” は堪える様だ。いやシドニーニエは“マーライオン”と化していた事を考えればまだか・・・

「大丈夫ですか?」

「あー・・・大丈夫よ。確かにもあるみたいね・・・」

 猛烈な嘔吐感それなりの制約の事ではないのだが・・・

「さて・・・アローナさんはともかく・・・当然、僕は簡単には謁見えっけん出来ませんよね? 」

「そりゃそうよ。あんたには私達の派閥にいる侍医に地母神の涙ガイアラドライトを分けて貰おうと思ってたんだけど・・・」

「残念ながら、あなた方の想像していた地母神の涙ガイアラドライトなるもの鉱石は・・・存在しませんでした。ただしものアプリケーションが僕の中には宿っています。必然・・・貸し借りのきく様な物ではありませんが・・・」

「・・・それじゃあ、陛下の病気は治せないって事? あんた騙した・・・って事はないよね。あんたにはそんな事する無いでしょうし・・・」

「ええ、回復系統の魔法は幾つか使えますから、僕自身が診察させて頂くつもりです。」

「いい加減疲れたわ。あんた本当にナニモンなのよ・・・? まあいいわ。なんとか謁見出来る方法を考えれば・・・」

 アローナは更に頭を抱えてブツブツ言ってるが・・・今回はそんな悠長に構えるつもりはない。

「そんなに悩んで頂く必要はありませよ。無礼は承知ですが・・・陛下には“城の方々かたがたには無断で”ご足労頂きますので・・・」

 アローナさん・・・そんな表情をしたら美人が台無しだと思いますよ。

「あんた・・・正気? 一国の王を誘拐するつ・・・」

「当然、本気ですが・・・人聞きの悪い事を言わないで頂きたいですね。陛下には少しして頂くだけですよ。」

「いや、私は尋ねたんだけど・・・グラブフットが“悪い顔してる”って言ってた意味が分かったよ。あんた確かに

「失敬な・・・あなた方とは“ほんの少し”メンタリティが異なるだけですよ。」

ーーーーーーーーーーーー

 結果から言うと・・・ギルムガン王国、当代国王セルディック・ド・ギルムガン四世はあっさりと僕のテンプオーダーエンター3の客人となった。城は・・・今頃混乱の坩堝だろう。
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