トランスファー “空間とか異次元とかってそんなに簡単なんですか?”

ajakaty

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仕事の準備を怠らないのは・・・大人として当然ですよね? 82

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      第一章  七八話

{ミネルヴァ! マーキングと平行して竜翼魔鶏コカトリスのデータをくれ}

 エルグラン山脈の方向にした敵の群れは、今この瞬間にも雲霞の如く押し寄せてきている。しかし猶予がなくとも敵の事を知らずに戦うなど自殺行為だ。

了解!オーバー! 表示します!}

 ミネルヴァの返答と共にモノクルにコカトリスの特徴がAR表示拡張現実表示される。

 〈竜翼魔鶏コカトリス....概ね体長4M程、基本的に雄鶏に竜の翼と蛇の尻尾を備える魔獣。口からは非常に毒性の高いブレスを吐く。体組織そのものに毒性を保持しているだけでなく、毒袋を保持している為、死体を放置するだけでも周囲が魔力的に汚染されてしまう....〉

 .....“マズい事は重なる”とはよく言ったもんだ.....タダでさえの事態には弱いと言うのに....これではグラムの連中に用意していた魔法は使えない!

{ミネルヴァ! 奴等をとばす強制転移にはどれくらい魔力量エネルギー粒子量が必要だ?}

{現状では....主殿の総量をもってしても足りません!!} 

{....解った。仕方ない、奴等のマーキングが済み次第テンプオーダーを応用して個体別に結界を構築する! それとエルグラン山脈に残してきた魔法陣サブルーチンを再起動してを探してくれ! 

了解!オーバー!

 そこまで指示を出した時、迎撃に飛び出していた紫炎有翼竜ゲヘナサラマンダー竜翼魔鶏コカトリスの群れと接敵し始めた。

〈ヴィルヘルムさん! 敵は強力な毒を保持しています! 肉弾戦は避けてフレアブレス紫炎の吐息で壁を作って牽制してください!〉

〈承知! だがそうは

 ヴィルヘルムが答えるとサラマンダー達はコカトリスの群れの前で展開し反包囲陣形を整える。対するコカトリスの群れは近寄ってきたサラマンダーに多少の警戒を見せているようだが....数が違い過ぎる。

 今のところ散発的に毒のブレスを吐く個体はいるが、全体的な作戦行動をしている訳ではなさそうだ。個体数で8倍近い差がある以上包囲など圧力だけで十分突破されてしまうだろう....
 
 そうこうするうちに、サラマンダー達がその顎から紫色に輝く炎を一斉に放ち始めた。コカトリス達も外延部の個体が濃緑の霧を思わせるブレスを吐く! 二種類のブレスが交錯して名状し難い毒煙が立ち上っては新たなブレスでかき混ぜられていく....

 そのうちサラマンダー達に異変が起こりはじめた。毒煙を吸い込んだ個体が一頭、また一頭と戦線から脱落し始める。コカトリスも紫炎に包まれて燃え尽きていく個体はあるが絶対数が違い過ぎる....

{主殿、敵個体別照準マルチマーキング完了です!}

{分かった! エルグラン山脈火口の探査状況は?}

{ギドルガモンの巣で発見しました! 

 よし! あとは....

〈シドーニエさん! アローナさん! 

〈何だ?〉

〈何でしょう?〉

〈今からコカトリスをするためにドローンオウルミニミネルヴァと共にある所に飛んで頂きたいのです。詳細は.....〉

ーーーーーーーーーーーー

{ねえ、又ちゃん....

....}

{オッケー。。でも絶対見失っちゃダメだからね}

{全く....使相棒だね}

{....頼んだわよ。それと合図したら光学迷彩と圧縮動作記録Εドキュメントイプシロンを解凍して....}

{....ふう、止めても無駄だよね。了解だよ}

 又三郎の溜め息を横目で見ながら少し微笑んでしまう。そのまま向き直って、

「クレオールさん!」

「?!なんだね?」

「少し耳をかして!」

「?!」

 いぶかしみながらクレオールがしゃがみこむ。

「あのね....」

ーーーーーーーーーー
 
 シドーニエとアローナに必要な事を説明する。

〈〈分か(ったわ!)りました!〉〉

〈頼みます! 二人に危険を押し付けて申し訳ありませんが....アルバ地方が汚染されてしまうのを止めるにはしかありません!〉

〈任せなさい! この子の事はあたしが守るから心配無用よ!〉

〈宜しくお願いします....それと、〉

〈何?〉

〈アローナさん自身も気をつけて下さい〉

〈.....!? バカ! あたしは大丈夫に決まってるでしょう!! 〉

〈あなたの強さは知っていますよ。それでもです。では“エクスチェンジ!”〉

ーーーーーーーーーーーーー

 スキルを行使すると同時にアローナとシドーニエは巨大な“金属の柱”がめり込んだエルグラン山脈の火口に転移する。
 
 火口の中は日中でもなお薄暗いが、どうにか視界は確保出来そうだ。

「.....あったわ! 

 アローナが指差した先には、先日グラブフットが操作してギドルガモンの封印を解いた“封印管理立体魔法陣コンソール”が鎮座していた。そして....その周りにはおびただしい数の多様な魔物がいる!

 そう、そもそもが“三首の神獣ギドルガモン”の復活地点リスポーンポイントに選ばれる程の土地だ。大物ギドルガモンがいなくなれば魔物で溢れるのが当然だ。だが....

「ふん! その位の数で私を止められるとでも?」

 転移したと同時に両肩の剣を抜き放っていたアローナが一直線にコンソールへの道を切り開いていく。

 コンソールに近づいてシドーニエが即座にコンソール上の手形に自らの手を置く。と、同時にシドーニエの操作手順マニュアルが浮かんだ。

「なる程、!」

 シドーニエが魔力を込めてコンソールを操作すると.....視線の先にあった金属の柱が 同時に火口の地面や壁がその色合いをエメラルドグリーンに変え、

〈コーサカ様! 
 
〈分かりました! 1分だけ持ちこたえて下さい!〉

ーーーーーーーーーーー

 エルグラン山脈で封印空間が開いたまさにその時....かろうじて持ちこたえていたゲヘナサラマンダー達の包囲線が突破される。このままだと二分もしない内にグランヴィアの上空に到達する。

 そうなれば最早全てを置いて逃げ出す以外に命を永らえる術はなくなり、グランヴィアは高濃度の魔力毒に汚染され、二度と人の住める土地ではなくなるだろう。

 ミネルヴァ!!!」

了解!オーバー! 個体別結界マルチバリア構築座標指定!ビルドコンプリート!魔力構造式プログラム展開オープン! 指定元素ポイントエレメント変換コンバージョン完了!クローズ!仮設巨大空間プロビジョナルルーム設営!ビルド! 複合転移システム魔法準備完了!オールグリーン!

「....どこの誰かは知りませんが

 そう呟くと同時にミネルヴァの構築した球形の結界が全てのコカトリスを包み込んでいく....

 即座にコカトリス達はブレスを吐く! じわじわと結界の色が変色し始め、破られるのも時間の問題かと思われたが....

 最初の結界を破られる前に、かろうじて全てのコカトリスを結界に捉える事に成功する!

「もう少し多ければ危ない所でしたが....アルバの皆さんの!   “断熱元素変換冷却!エクサフリズガン!” 」
 
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