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仕事の準備を怠らないのは・・・大人として当然ですよね? 84
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第一章 八十話
「弱りましたね....」
思わずこぼれ落ちた独白は、周りには聞こえなかったようだが....科学知識を周りの人間に教えてしまうのは【神様】との約束を破ってしまう事になりかねない.....それに....
「あなたは....僕がそんな事を“すんなり教える”などと考えているのですか?」
「あらそうかしら? なんのメリットもないのに周りの国を助けるようなお人好しなら答えそうだと思ったのだけど?」
「.....あなたは2つ勘違いをされていますね....」
「あら? 何をかしら?」
「僕にとってこの地を助ける事には大事な意味があります。僕がお人好しだと思われるのはそちらの勝手ですが....一方的な期待に応える義務はありません」
「とてもそうは思えない行動ですけど....で、もう一つは?」
「....僕があなたの真意に気付かないとでも? そろそろ時間稼ぎは結構でしょう? 他の超越者級の皆さんがそこに居ない事には気づいています。カズミさんを追ったのでしょう?」
「!?...」
今度こそ本当に驚いた様だ。その証拠に咄嗟に言葉が出てこない。
「時間稼ぎは見破られているかも知れないと思っていましたが.....先日のガスパールの時もそうだった様ですし....あなたには隠蔽や幻惑系統の魔法が通じないのね?」
「御想像にお任せしますよ....それに....」
「?」
「アルバの守り手は、僕だけではありません。あなた方とは別の....例え無数の竜翼魔鶏を使役する程の存在が居たとしても....むざむざとやられる様な者は居ませんよ....」
ーーーーーーーーーーー
奏多とミネルヴァが竜翼魔鶏の大群に対処して居た時、グランヴィアの中心にある“大聖堂”では.....
「なる程の....ここに来るまでは信じられんかったが.....確かにこの結界には空間位相技術が使われておる.....」
だれも居ない大聖堂の正面エントランスで、大きめの外套に仮面を付けた人物が閉ざされた大聖堂の扉に触れながら独白していた。
「奴らが高次元に去ってから後、この世界には“時空間制御能力”が発現した者は居なかった筈.....いったい誰が?....」
大聖堂に展開している任意空間構築に余程驚いたのか....間合いに侵入されるまで、外套の人物は自らの後ろに近づいた人影に気付く事が出来なかった....
「いくら索敵魔法に反応がないからって油断しすぎじゃないですか? 師」
「ふんっ、間合いに入った程度で一人前のつもりか? サルダン?」
仮面の人物に近づいていたのは“クレオール家”の魔法使いの一人である筈のサルダンだった....
「で? 何用だ? 貴様の任務は“グラム”内への潜入の筈....まさかコカトリスが怖かった訳でもあるまい?」
「いえね....グローブリーズに居られるあの方からお達しがありまして....いや私は師に意見するのは恐れ多いんですが....もしマスターがやりすぎる様なら止めろと....」
「ふん! 嘘をつけ! 大方“多重存在確認”でお伺いを立てたのだろう? 全く....お主に話すんじゃぁなかったわ!」
一つ毒づいた“外套の人物”は....扉から手を離して突然現れたサルダンに向き直る。
「それで? 止めると言ったか?」
そう言い放ったと同時に、外套の人物の周囲に静かな魔力が湧き上がる.....それを見たサルダンは....
「まさか? 俺に止められる師ですか? 俺は一応釘を差しに来ただけですよ。 なんせ師が本気で暴れたらアルバは無人の荒野になっちまいます。 それはまずい事くらいは分かってるでしょう?」
そう軽口を叩くサルダンを見たまま....師と呼ばれた人物の周囲には更に魔力が集束していく....
「サルダンよ....お主のグラムへの潜入は今日でお終いだな.....」
そう言い放つと同時に直径20cm程の青く燃焼する球体が現れ....サルダンの背後の空間に向かって飛ぶ!
何も無い筈の空間に向かって飛ぶ青炎の塊は、何も無い筈の空間ではじけてその青い炎を周囲に撒き散らした。
「ちっ! やっぱり気付いてやがったか....」
炎のはじけた空間に俄かに人影が浮かび上がり.....
「あちゃー.....グラブフットさん。付いて来ちまったんですかい?」
そこには杖を降り降ろした体制のままサルダンを睨むグラブフットの姿があった。
「....ここの守りは俺達が請け負ったんでな....無視する訳にもいくまい? それより....どういうこった? お前は間違いなくガキの頃からグラムで育った人間の筈だぞ?」
「あー....まったく....師のせいっすよ....“六翼の神鳥”の眷族なんか召喚するから....事態がややこしい事に....」
「えーと....ちょっといいかな?」
その声は、緊迫感の漂う事情などどこ吹く風という雰囲気で3人の耳朶を打った....
「その声は.....そうか....グラブフットの旦那にもバレてたんだ....あんたにも気付かれて当然か....」
サルダンがため息をつく....それを見た師と呼ばれた人物が、少し驚いた様に問いただす....
「何故ここにいる? あの紫炎有翼竜を召喚した小僧でも、数が違い過ぎて対処は難しい筈だ....貴様がここにいるならばとっくにアルバの空は奴らで埋め尽くされて居なければおかしい!!」
「おかしいって言われても....ねぇ。そんなに買い被られても、あたし自身はただの喧嘩の仲裁役でしかないと思ってるんだけど.....」
エントランスの柱の一つから現れたのは....傍らに黒猫を伴った久坂一生だった.....
「弱りましたね....」
思わずこぼれ落ちた独白は、周りには聞こえなかったようだが....科学知識を周りの人間に教えてしまうのは【神様】との約束を破ってしまう事になりかねない.....それに....
「あなたは....僕がそんな事を“すんなり教える”などと考えているのですか?」
「あらそうかしら? なんのメリットもないのに周りの国を助けるようなお人好しなら答えそうだと思ったのだけど?」
「.....あなたは2つ勘違いをされていますね....」
「あら? 何をかしら?」
「僕にとってこの地を助ける事には大事な意味があります。僕がお人好しだと思われるのはそちらの勝手ですが....一方的な期待に応える義務はありません」
「とてもそうは思えない行動ですけど....で、もう一つは?」
「....僕があなたの真意に気付かないとでも? そろそろ時間稼ぎは結構でしょう? 他の超越者級の皆さんがそこに居ない事には気づいています。カズミさんを追ったのでしょう?」
「!?...」
今度こそ本当に驚いた様だ。その証拠に咄嗟に言葉が出てこない。
「時間稼ぎは見破られているかも知れないと思っていましたが.....先日のガスパールの時もそうだった様ですし....あなたには隠蔽や幻惑系統の魔法が通じないのね?」
「御想像にお任せしますよ....それに....」
「?」
「アルバの守り手は、僕だけではありません。あなた方とは別の....例え無数の竜翼魔鶏を使役する程の存在が居たとしても....むざむざとやられる様な者は居ませんよ....」
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奏多とミネルヴァが竜翼魔鶏の大群に対処して居た時、グランヴィアの中心にある“大聖堂”では.....
「なる程の....ここに来るまでは信じられんかったが.....確かにこの結界には空間位相技術が使われておる.....」
だれも居ない大聖堂の正面エントランスで、大きめの外套に仮面を付けた人物が閉ざされた大聖堂の扉に触れながら独白していた。
「奴らが高次元に去ってから後、この世界には“時空間制御能力”が発現した者は居なかった筈.....いったい誰が?....」
大聖堂に展開している任意空間構築に余程驚いたのか....間合いに侵入されるまで、外套の人物は自らの後ろに近づいた人影に気付く事が出来なかった....
「いくら索敵魔法に反応がないからって油断しすぎじゃないですか? 師」
「ふんっ、間合いに入った程度で一人前のつもりか? サルダン?」
仮面の人物に近づいていたのは“クレオール家”の魔法使いの一人である筈のサルダンだった....
「で? 何用だ? 貴様の任務は“グラム”内への潜入の筈....まさかコカトリスが怖かった訳でもあるまい?」
「いえね....グローブリーズに居られるあの方からお達しがありまして....いや私は師に意見するのは恐れ多いんですが....もしマスターがやりすぎる様なら止めろと....」
「ふん! 嘘をつけ! 大方“多重存在確認”でお伺いを立てたのだろう? 全く....お主に話すんじゃぁなかったわ!」
一つ毒づいた“外套の人物”は....扉から手を離して突然現れたサルダンに向き直る。
「それで? 止めると言ったか?」
そう言い放ったと同時に、外套の人物の周囲に静かな魔力が湧き上がる.....それを見たサルダンは....
「まさか? 俺に止められる師ですか? 俺は一応釘を差しに来ただけですよ。 なんせ師が本気で暴れたらアルバは無人の荒野になっちまいます。 それはまずい事くらいは分かってるでしょう?」
そう軽口を叩くサルダンを見たまま....師と呼ばれた人物の周囲には更に魔力が集束していく....
「サルダンよ....お主のグラムへの潜入は今日でお終いだな.....」
そう言い放つと同時に直径20cm程の青く燃焼する球体が現れ....サルダンの背後の空間に向かって飛ぶ!
何も無い筈の空間に向かって飛ぶ青炎の塊は、何も無い筈の空間ではじけてその青い炎を周囲に撒き散らした。
「ちっ! やっぱり気付いてやがったか....」
炎のはじけた空間に俄かに人影が浮かび上がり.....
「あちゃー.....グラブフットさん。付いて来ちまったんですかい?」
そこには杖を降り降ろした体制のままサルダンを睨むグラブフットの姿があった。
「....ここの守りは俺達が請け負ったんでな....無視する訳にもいくまい? それより....どういうこった? お前は間違いなくガキの頃からグラムで育った人間の筈だぞ?」
「あー....まったく....師のせいっすよ....“六翼の神鳥”の眷族なんか召喚するから....事態がややこしい事に....」
「えーと....ちょっといいかな?」
その声は、緊迫感の漂う事情などどこ吹く風という雰囲気で3人の耳朶を打った....
「その声は.....そうか....グラブフットの旦那にもバレてたんだ....あんたにも気付かれて当然か....」
サルダンがため息をつく....それを見た師と呼ばれた人物が、少し驚いた様に問いただす....
「何故ここにいる? あの紫炎有翼竜を召喚した小僧でも、数が違い過ぎて対処は難しい筈だ....貴様がここにいるならばとっくにアルバの空は奴らで埋め尽くされて居なければおかしい!!」
「おかしいって言われても....ねぇ。そんなに買い被られても、あたし自身はただの喧嘩の仲裁役でしかないと思ってるんだけど.....」
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