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仕事の準備を怠らないのは・・・大人として当然ですよね? 88
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第一章 八四話
強烈な殺気に冷や汗が背中を滑り落ちた.....だが、
「....こっちもよ、お前が二人だけじゃねえかもしれねぇ事位解ってんだよ! “崩星破裂”」
ガスパールが瞬時に魔法を発動する。詠唱と同時に直径約1cm程のもやの塊が無数に浮かび上がり瞬時に声の方向に向かって放出する!....が、
「私もあなたに知られている事くらいは承知していますよ?」
声の方向は間違い無いのにそちらには誰もいない。もう一度グラブフットの重力魔法に捕らわれた二人に視線を戻すと....そこには捕らわれていた筈の二人の姿は既に無く、魔法陣の側に年嵩のサルダンのみが佇んでいた。
「ちっ! 厄介な! てめぇどうやって抜け出しやがった?」
「それを私が話すと....いえ、いいでしょう。簡単な事です。単に重力魔法で捕らわれた私達が存在する確率を下げて同時に別の自分の存在する確率を上げただけです」
「...........訳のわからん事を!!」
「せっかくお答えしたというのに.....」
サルダンが溜め息をつく.....
「まぁいいでしょう....“時間稼ぎ”も充分でしょうし私はお暇します。ガスパール君とは名残惜しいですがわたしの役目はそろそろ終わりですし、別の仕事もありますのでね」
「てめぇ....この期に及んでまだ逃げられるつもりか? どんな理屈かは知らねえがてめぇは、今し方自分の固有魔法を使ってグラブフットさんの重力魔法から逃れた訳だろ? なんでその時さっさと逃げなかった?」
サルダンの眉がほんの少しだけ動く....
「どういう意味です?」
「ふん! 理屈はわかんねぇがてめぇの能力はそんなに万能って訳じゃねえんだろ? 自分を“複数存在させる”なんつぅ理不尽な能力だ....相応のリスクと制約があって当然だよな? 例えば連続使用や数を増やすのに反比例して距離や個体の能力に制限がかかる....とかな! でなきゃさっきお前が二人になった時にもっと大人数になってりゃ話は済んだ筈だろ?」
サルダンの周囲には、先程ガスパールが放った靄が大きく弧を描いて周りこみ、静かに舞い降りて来ていた。
「大体よ、魔力っつうもんで魔法を行使してる以上制約があって当然だろ? それこそてめぇの力で万の軍勢を生み出せるなら、こんなまどろっこしい事してる筈がねぇ!」
「.....なかなか鋭いじゃないですか? 少しあなたの事を見くびっていたかもしれませんね」
「お褒め頂きありがとよ! 今度こそ動くんじゃねえぜ! おれの魔法の反応速度は知ってんだろ? てめぇが新たにもう一人の自分を出しても瞬間的に俺を殺せなきゃ確実にてめぇらを巻き込んでやるくれぇはできんだぜ?」
そう言い放ったガスパールの周囲にもいつの間にかサルダンの周囲に漂っている靄と同じ物が多数浮遊している。
「自爆も覚悟の上....ですか?」
「おおよ! てめぇらがどんな奴等かってのは師匠からある程度は聞いてるからな? グラブフットさんも向こうで足留め食ってるみてぇだし、それしか方法がねぇなら俺に躊躇する理由はねぇぜ?」
そう言ったガスパールの視線には確かにある種の覚悟が滲んでいる。
「ふう....仕方ないですね。本当はこういう使い方はしたくはないんですが.....」
「てめぇ、だから動くなって.....」
サルダンは小さく呟くと同時に真っ直ぐガスパールの方向に走り出した! 当然靄にぶつかったサルダンは小規模な爆発に連鎖的に包まれる!
「なんてこった!」
ガスパールもサルダンの行動が予想外過ぎてあっけに取られている。
即座に“軽度の風魔法”を発動させて爆発の粉塵を吹き飛ばすと....そこにはサルダンどころかその衣服の欠片さえ見当たらない.....
「逃げられたみたいね....」
ガスパールの後ろにはどうやったのかは分からないが障壁で隔離してた筈のカズミが近づいてきていた。
「姐さん....」
「ちょっと! その“姐さん”っての止めてよ! 大体あなたの方が年上でしょ?」
「いやそりゃあ....いえスンマセン。見ての通り逃げられちまいました....」
「まぁ仕方ないんじゃない.....それにまだ向こうは、終わってないみたいだし、ヴィクトールさんを手伝わないと....グラブフットさん? だっけ....あの人と二人でも手こずってるみたいだから急ぎましょう」
見れば、仮面の人物とヴィクトール師・グラブフットの3人は大聖堂の前のから少し離れた街道の広場付近まで移動しつつ牽制しあっている。
「ええ、急ぎましょう!」
そう言って駆け出すガスパールの少し後ろから追いかける。
〔ねぇ、又ちゃん? 彼、来てるんじゃない?〕
〔今のところ.....俺にも感知出来ないけど、おそらくは....いや、確実にどこかから見ていると思う〕
〔じゃあ聖堂の方は問題無いよね?〕
〔まあ、俺達の本当の目的からは少し逸脱してるけど....今のところ彼のしている事を積極的に邪魔する理由はないんじゃない?〕
〔オッケー! さっきの仮面の怪しい奴を先に片付けましょう!〕
〔了解!〕
ーーーーーーーーーーー
聖堂の影から二組の戦闘をそっと見守っていた奏多は......
{ミネルヴァ? あの仮面の人物とサルダンって男.....何者だと思う?}
{彼等の会話からの推測ですが.....おそらく、太古に【神様】となった方達と袂を分かった人類の関係者かと.....}
{だよな....あの会話の内容からは相当【神様】達に敵意がありそうだけど....}
{そうですね....それにランスロットと呼ばれる人物がグランヴィアに来たのは、ギルムガンでの主殿の行動を聞いての事と推測されますが、何故主殿を探していたのかも、カズミ殿を目の敵にする理由もまだ判然としません}
{.....まったく。どうしてこう矢継ぎ早にトラブルが起こるかね.....}
{申し訳ありませんが、私には判断出来かねる事案で.....主殿! 信じられませんが、何者かが大聖堂に張った結界に侵入しました!}
強烈な殺気に冷や汗が背中を滑り落ちた.....だが、
「....こっちもよ、お前が二人だけじゃねえかもしれねぇ事位解ってんだよ! “崩星破裂”」
ガスパールが瞬時に魔法を発動する。詠唱と同時に直径約1cm程のもやの塊が無数に浮かび上がり瞬時に声の方向に向かって放出する!....が、
「私もあなたに知られている事くらいは承知していますよ?」
声の方向は間違い無いのにそちらには誰もいない。もう一度グラブフットの重力魔法に捕らわれた二人に視線を戻すと....そこには捕らわれていた筈の二人の姿は既に無く、魔法陣の側に年嵩のサルダンのみが佇んでいた。
「ちっ! 厄介な! てめぇどうやって抜け出しやがった?」
「それを私が話すと....いえ、いいでしょう。簡単な事です。単に重力魔法で捕らわれた私達が存在する確率を下げて同時に別の自分の存在する確率を上げただけです」
「...........訳のわからん事を!!」
「せっかくお答えしたというのに.....」
サルダンが溜め息をつく.....
「まぁいいでしょう....“時間稼ぎ”も充分でしょうし私はお暇します。ガスパール君とは名残惜しいですがわたしの役目はそろそろ終わりですし、別の仕事もありますのでね」
「てめぇ....この期に及んでまだ逃げられるつもりか? どんな理屈かは知らねえがてめぇは、今し方自分の固有魔法を使ってグラブフットさんの重力魔法から逃れた訳だろ? なんでその時さっさと逃げなかった?」
サルダンの眉がほんの少しだけ動く....
「どういう意味です?」
「ふん! 理屈はわかんねぇがてめぇの能力はそんなに万能って訳じゃねえんだろ? 自分を“複数存在させる”なんつぅ理不尽な能力だ....相応のリスクと制約があって当然だよな? 例えば連続使用や数を増やすのに反比例して距離や個体の能力に制限がかかる....とかな! でなきゃさっきお前が二人になった時にもっと大人数になってりゃ話は済んだ筈だろ?」
サルダンの周囲には、先程ガスパールが放った靄が大きく弧を描いて周りこみ、静かに舞い降りて来ていた。
「大体よ、魔力っつうもんで魔法を行使してる以上制約があって当然だろ? それこそてめぇの力で万の軍勢を生み出せるなら、こんなまどろっこしい事してる筈がねぇ!」
「.....なかなか鋭いじゃないですか? 少しあなたの事を見くびっていたかもしれませんね」
「お褒め頂きありがとよ! 今度こそ動くんじゃねえぜ! おれの魔法の反応速度は知ってんだろ? てめぇが新たにもう一人の自分を出しても瞬間的に俺を殺せなきゃ確実にてめぇらを巻き込んでやるくれぇはできんだぜ?」
そう言い放ったガスパールの周囲にもいつの間にかサルダンの周囲に漂っている靄と同じ物が多数浮遊している。
「自爆も覚悟の上....ですか?」
「おおよ! てめぇらがどんな奴等かってのは師匠からある程度は聞いてるからな? グラブフットさんも向こうで足留め食ってるみてぇだし、それしか方法がねぇなら俺に躊躇する理由はねぇぜ?」
そう言ったガスパールの視線には確かにある種の覚悟が滲んでいる。
「ふう....仕方ないですね。本当はこういう使い方はしたくはないんですが.....」
「てめぇ、だから動くなって.....」
サルダンは小さく呟くと同時に真っ直ぐガスパールの方向に走り出した! 当然靄にぶつかったサルダンは小規模な爆発に連鎖的に包まれる!
「なんてこった!」
ガスパールもサルダンの行動が予想外過ぎてあっけに取られている。
即座に“軽度の風魔法”を発動させて爆発の粉塵を吹き飛ばすと....そこにはサルダンどころかその衣服の欠片さえ見当たらない.....
「逃げられたみたいね....」
ガスパールの後ろにはどうやったのかは分からないが障壁で隔離してた筈のカズミが近づいてきていた。
「姐さん....」
「ちょっと! その“姐さん”っての止めてよ! 大体あなたの方が年上でしょ?」
「いやそりゃあ....いえスンマセン。見ての通り逃げられちまいました....」
「まぁ仕方ないんじゃない.....それにまだ向こうは、終わってないみたいだし、ヴィクトールさんを手伝わないと....グラブフットさん? だっけ....あの人と二人でも手こずってるみたいだから急ぎましょう」
見れば、仮面の人物とヴィクトール師・グラブフットの3人は大聖堂の前のから少し離れた街道の広場付近まで移動しつつ牽制しあっている。
「ええ、急ぎましょう!」
そう言って駆け出すガスパールの少し後ろから追いかける。
〔ねぇ、又ちゃん? 彼、来てるんじゃない?〕
〔今のところ.....俺にも感知出来ないけど、おそらくは....いや、確実にどこかから見ていると思う〕
〔じゃあ聖堂の方は問題無いよね?〕
〔まあ、俺達の本当の目的からは少し逸脱してるけど....今のところ彼のしている事を積極的に邪魔する理由はないんじゃない?〕
〔オッケー! さっきの仮面の怪しい奴を先に片付けましょう!〕
〔了解!〕
ーーーーーーーーーーー
聖堂の影から二組の戦闘をそっと見守っていた奏多は......
{ミネルヴァ? あの仮面の人物とサルダンって男.....何者だと思う?}
{彼等の会話からの推測ですが.....おそらく、太古に【神様】となった方達と袂を分かった人類の関係者かと.....}
{だよな....あの会話の内容からは相当【神様】達に敵意がありそうだけど....}
{そうですね....それにランスロットと呼ばれる人物がグランヴィアに来たのは、ギルムガンでの主殿の行動を聞いての事と推測されますが、何故主殿を探していたのかも、カズミ殿を目の敵にする理由もまだ判然としません}
{.....まったく。どうしてこう矢継ぎ早にトラブルが起こるかね.....}
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