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仕事の準備を怠らないのは・・・大人として当然ですよね? 90
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第一章 八六話
領都グランヴィアの中心に位置する大聖堂の内と外で.....それぞれの立場の人間がそれぞれの責任....または希望....または欲望を成そうと必死に足掻いていた正にその時....其処より遥か東方、約1000kmの地点で始まったそれは....殆どの人間にとっては....まるで気付かない程度のほんの些細な異変だった.....
グランヴィアより東へ1000km....ライリング王国の東端に位置する南北25kmに渡って存在する大地峡....終焉の大亀裂を密かに監視しているのは、ライリング王国とは同盟関係にあるグラム神聖国12枢機卿家が一つ、クレメンテス家の若き当主である。
その当主であるランバルト・ド・クレメンテスがかすかに感じたそれを....ランバルト自身も最初は“いつもの魔力の揺らぎ”だと思っていた。
だが、そのきっかり90秒後、2度目の揺らぎを感じた時、ランバルトは即座に部下たちに指示を飛ばした。
「本国に緊急通達!! 終焉の大亀裂にて魔力振を感知!! 六翼の神鳥の封印に異変の可能性あり! これより防衛監視体制第二段階に移行する!」
ランバルト麾下の神聖騎士団に俄かに緊張が走る。魔力の溜まりやすい終焉の大亀裂において今回程度の魔力の揺らぎはそう珍しいものでもない....普段ならこの程度の異変で防衛監視体制第二段階など有り得ない筈だ.....
「閣下? 私などには普段の“魔力の揺らぎ”との違いが分からないのですが.....本当に発令して宜しいのでしょうか?」
ランバルトは、見た目は30歳に届くか届かないかの中肉中背の優男だ。貫禄という点では、50がらみの副官の方が上官と言われても、疑う人間は少ないだろう。だが、その少し垂れ気味の眦に籠もった色は真剣その物で....
「貴官の言わんとする事は理解出来る....だが....私の瞳にはおそらく貴官とは別の物が映っている。説明しても良いのだが今は時間が惜しい....急げ!」
「....畏まりました!!」
そう短く応えて、副官は矢継ぎ早に指示を出し始める。その姿を見ながら....
「確か....今は“神獣”がらみの案件はクレオール卿のアルバ奪還のみの筈だが.....一体なにが起きているのだ?」
そう呟くランバルトの瞳には、“普通の人間には見えない魔力の流れ”がくっきりと映っていた。
それは....地峡の遥か遠方から、次第に“大きな渦を巻いて”地峡の最深部に向かって行く....そう、まるで地峡に巨大な穴が開き、そこに引きずり込まれていくかの様に魔力が流れ込んでいく様だった。
ーーーーーーーーーー
「無駄じゃ! ギドルガモン程の吸収スピードは再現できんかったが、その結界は強制的に魔力を吸収して結界の強化と維持に変換させておる。貴様がどれほどの魔力量を誇っていようとも魔法を構築したはしから魔力を奪われて結界に吸収されるだけじゃい!」
淡く輝く結界に仮面の人物を捉える事に成功したヴィクトール師はその場にがっくりと膝を付き荒い息を整えるのに苦労していた。対象的にランスロットはその身体からゆっくりと魔力を吸い取られながらも見た目には問題なくその場に立っている。
「貴様がどれほどの魔力量を誇ろうともその結界から逃れる術はない! 外部からの魔力集積を遮断され、体内の保有魔力を全て結界に吸収し終わって魔力枯渇に陥ったなら....その瞬間とどめを刺してやるわい!」
そう言い放ったヴィクトール師を支える形で肩を貸して立ち上がらせたグラブフットは、結界内の仮面の人物を改めて観察している。そしておもむろに、ヴィクトール師に向かって、
「ヴィクトール師よ、分からない事だらけだが一つだけ教えてくれ....俺の親父をやったのは....ヤツなのか?」
一瞬の沈黙....そして、
「今もって、その確たる証拠が在るわけではないが....」
「....分かった...十分だ。ヤツがもう少し弱ってから、俺からも聞かせて貰おう.....」
「.....なる程.....」
その時.....それまで沈黙を守っていたランスロットがふいに訝しい言葉をこぼした。
「ヴィクトールよ、確かにこの結界はワシへの魔力供給を隔絶し、吸収した魔力を結界を通して変換、放出しておるようだの....」
「その解析力は流石だが....それが分かる以上この結界から自力で抜け出す術がない事位は分かるだろう?」
「ククククッ なる程の確かにお主の言う通り自力で抜け出すには、さぞ骨の折れる事だろう。じゃがな....こと儂の場合だけはそうはならんのじゃよ....」
そう言って.....ランスロットはゆっくりと仮面を外した。その下から現れたのは.....なんと形容したら良いのだろう、喋り方や声音からは想像する事が困難な程美しいエルフだった。
「ほう、貴様の面相など今更見た所でさほどの感慨もないが....そうかエルフだったか....確かにこれほどの長寿を誇る以上、そういう種でなければおかしいわな.....」
「儂がエルフであるかどうかなど今は問題ではないわ....一つ戯れに聞こうか? お主も言っていた通り、儂の保有する魔力や、魔力の集積スピードは確かに貴様らとは比べ物にならん。しかし、おかしいとは思わんか? 貴様とて分家とはいえ12枢機卿家の中でも屈指の武闘派を標榜するクレオール家の人間、普通に考えればそれ程の素質を約束された人間が、凄まじい修練を経てなお、届かないとはどういうことか?」
「....何が言いたい?」
「なに、儂とて元は只の人間じゃったからの、お主が訳も分からず死んで行くのは忍びないと思っただけじゃわい、まぁ、簡単に言うと儂の強さはな呪いなんじゃよ.....六翼の神鳥のな!」
「.....ちょっと聞き捨てならないわね....そこの所をもう少し詳しく教えて貰える?」
領都グランヴィアの中心に位置する大聖堂の内と外で.....それぞれの立場の人間がそれぞれの責任....または希望....または欲望を成そうと必死に足掻いていた正にその時....其処より遥か東方、約1000kmの地点で始まったそれは....殆どの人間にとっては....まるで気付かない程度のほんの些細な異変だった.....
グランヴィアより東へ1000km....ライリング王国の東端に位置する南北25kmに渡って存在する大地峡....終焉の大亀裂を密かに監視しているのは、ライリング王国とは同盟関係にあるグラム神聖国12枢機卿家が一つ、クレメンテス家の若き当主である。
その当主であるランバルト・ド・クレメンテスがかすかに感じたそれを....ランバルト自身も最初は“いつもの魔力の揺らぎ”だと思っていた。
だが、そのきっかり90秒後、2度目の揺らぎを感じた時、ランバルトは即座に部下たちに指示を飛ばした。
「本国に緊急通達!! 終焉の大亀裂にて魔力振を感知!! 六翼の神鳥の封印に異変の可能性あり! これより防衛監視体制第二段階に移行する!」
ランバルト麾下の神聖騎士団に俄かに緊張が走る。魔力の溜まりやすい終焉の大亀裂において今回程度の魔力の揺らぎはそう珍しいものでもない....普段ならこの程度の異変で防衛監視体制第二段階など有り得ない筈だ.....
「閣下? 私などには普段の“魔力の揺らぎ”との違いが分からないのですが.....本当に発令して宜しいのでしょうか?」
ランバルトは、見た目は30歳に届くか届かないかの中肉中背の優男だ。貫禄という点では、50がらみの副官の方が上官と言われても、疑う人間は少ないだろう。だが、その少し垂れ気味の眦に籠もった色は真剣その物で....
「貴官の言わんとする事は理解出来る....だが....私の瞳にはおそらく貴官とは別の物が映っている。説明しても良いのだが今は時間が惜しい....急げ!」
「....畏まりました!!」
そう短く応えて、副官は矢継ぎ早に指示を出し始める。その姿を見ながら....
「確か....今は“神獣”がらみの案件はクレオール卿のアルバ奪還のみの筈だが.....一体なにが起きているのだ?」
そう呟くランバルトの瞳には、“普通の人間には見えない魔力の流れ”がくっきりと映っていた。
それは....地峡の遥か遠方から、次第に“大きな渦を巻いて”地峡の最深部に向かって行く....そう、まるで地峡に巨大な穴が開き、そこに引きずり込まれていくかの様に魔力が流れ込んでいく様だった。
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「無駄じゃ! ギドルガモン程の吸収スピードは再現できんかったが、その結界は強制的に魔力を吸収して結界の強化と維持に変換させておる。貴様がどれほどの魔力量を誇っていようとも魔法を構築したはしから魔力を奪われて結界に吸収されるだけじゃい!」
淡く輝く結界に仮面の人物を捉える事に成功したヴィクトール師はその場にがっくりと膝を付き荒い息を整えるのに苦労していた。対象的にランスロットはその身体からゆっくりと魔力を吸い取られながらも見た目には問題なくその場に立っている。
「貴様がどれほどの魔力量を誇ろうともその結界から逃れる術はない! 外部からの魔力集積を遮断され、体内の保有魔力を全て結界に吸収し終わって魔力枯渇に陥ったなら....その瞬間とどめを刺してやるわい!」
そう言い放ったヴィクトール師を支える形で肩を貸して立ち上がらせたグラブフットは、結界内の仮面の人物を改めて観察している。そしておもむろに、ヴィクトール師に向かって、
「ヴィクトール師よ、分からない事だらけだが一つだけ教えてくれ....俺の親父をやったのは....ヤツなのか?」
一瞬の沈黙....そして、
「今もって、その確たる証拠が在るわけではないが....」
「....分かった...十分だ。ヤツがもう少し弱ってから、俺からも聞かせて貰おう.....」
「.....なる程.....」
その時.....それまで沈黙を守っていたランスロットがふいに訝しい言葉をこぼした。
「ヴィクトールよ、確かにこの結界はワシへの魔力供給を隔絶し、吸収した魔力を結界を通して変換、放出しておるようだの....」
「その解析力は流石だが....それが分かる以上この結界から自力で抜け出す術がない事位は分かるだろう?」
「ククククッ なる程の確かにお主の言う通り自力で抜け出すには、さぞ骨の折れる事だろう。じゃがな....こと儂の場合だけはそうはならんのじゃよ....」
そう言って.....ランスロットはゆっくりと仮面を外した。その下から現れたのは.....なんと形容したら良いのだろう、喋り方や声音からは想像する事が困難な程美しいエルフだった。
「ほう、貴様の面相など今更見た所でさほどの感慨もないが....そうかエルフだったか....確かにこれほどの長寿を誇る以上、そういう種でなければおかしいわな.....」
「儂がエルフであるかどうかなど今は問題ではないわ....一つ戯れに聞こうか? お主も言っていた通り、儂の保有する魔力や、魔力の集積スピードは確かに貴様らとは比べ物にならん。しかし、おかしいとは思わんか? 貴様とて分家とはいえ12枢機卿家の中でも屈指の武闘派を標榜するクレオール家の人間、普通に考えればそれ程の素質を約束された人間が、凄まじい修練を経てなお、届かないとはどういうことか?」
「....何が言いたい?」
「なに、儂とて元は只の人間じゃったからの、お主が訳も分からず死んで行くのは忍びないと思っただけじゃわい、まぁ、簡単に言うと儂の強さはな呪いなんじゃよ.....六翼の神鳥のな!」
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