トランスファー “空間とか異次元とかってそんなに簡単なんですか?”

ajakaty

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不測の事態への対処で仕事の出来は変わるってもんですよね? 93

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      第一章  八九話

「ええ、ほんの7000M

 男の問い掛けに答え、改めて青い顔色をした男と対峙する。

 僕とミネルヴァが侵入者転移した先は、グランヴィアの上空7000メートル。地面代わりに簡易結界テンプオーダーを張り巡らせ、落下を防ぎつつ男から5m程の距離を取った後....

「ぐっ.....」

 地上から強制的に同行させた男が、うめき声を上げて膝をつく。流石にこの環境に即座に適応するのは難しいようだ。簡易結界テンプオーダーを応用して“周辺環境を調節”している僕達と違って、“突然”この環境下に放り込まれた男が“意識を保っている”だけでも驚きに値する。

 足下に広がる雲と、切れ間から広がる大地、更に遠くを見渡せば....この世界も事が見て取れる地平線と水平線....極端に薄い大気と氷点下を楽に下回る気温....地図上ではでありながら、人間にとっては生命活動に著しい負荷を与える高度....それが標高7000mの世界だ。

「くくく、偉そうな事を言っている場合ではないな....“状態回復リカバリー”」

 詠唱した瞬間、男の足元に魔法陣が浮かび上がり、魔力エネルギー粒子が、男の体を淡く光る円柱状に包み込む....光が消えるとそこには完全に回復した男の姿があった。

「ふう、無茶をする男だな。もし私が君と同じスキルを持っていても、とてもこんな使い方はせんが....まぁ、それよりも、 まさか周りが静かになったくらいで

「まさか....そんなに物分かりの良い人物には見えませんね。ただ...これは聞いておきましょうか....あなた方は何者で、“神獣核コア”をどうするつもりなんです?」

 ダメもとで一応探りを入れる。当然、答えなど返っては来ないと思っていたが....

「....我らの目的はただ一つだ。

 どうにも要領を得ない答えだ。が、それでもとても聞き流していいとは思えないセリフが耳朶を打つ....

「....僕は元々この世界のに興味などありませんが....本気ですか?」

「それを君にいてどうなるというのだ? 大人しくコアを渡すか?」

 男は少し不機嫌そうに言い放ち、男の周囲に魔力エネルギー粒子が収束し始める....それと同時に、大きく間合いを取った男は、両手を胸の前にかざし、更に魔力エネルギー粒子を収束していく。

「あなた方の事情は知りませんが....それこそグランヴィアの民や、僕達には関係ない事の筈です。それでも....自分達の都合で、無理やり奪おうというのですか?」

「なんとでも言うがいい。!」

「!?!......どういう意味です?」

「ふん! と言った筈だ、君にはコアと共に我らのなってもらおう。なに、そう悲観することもないさ、働きに応じてそれなりの見返りも用意するからな! “空間雷纏束オールスタン”」

 男の詠唱と同時に、僕とミネルヴァの周囲を半球型に“電撃”が疾る!! ヤバい!...と思ったが次の瞬間には男の背後の方向約30mに転移していた。

緊急回避ムーヴを行いました。敵の攻撃は“範囲内の空間に電撃を満たす”魔法です! 認識下での回避はほぼ不可能の為、魔力エネルギー粒子の収束予兆に合わせて回避するしかありません!!}

{外では風魔法を主体に戦っていた筈なのに....面倒なやつだな! ミネルヴァ、合図したらヤツの....}

 危うく黒こげ....いや捕らえると言っていたから、とりあえず死ぬ程の出力では無いのだろうが....ミネルヴァが居なければ、確実に意識はだろう。男は電撃の跡に僕がいないのを見て、すぐこちらに気づいたようだ。

「どうした? さっきの手際はまぐれか?」

「そうですね....詳しい話は“後で”伺う事にしましょうか....」

{ミネルヴァ!}

了解!ラジャー! 結界解除!オーダーキャンセル!

「!!」

 ミネルヴァにヤツ周辺の“足場の結界解除”を実行させる! と考えて準備をしていたのだが....男は

{ミネルヴァ! 大規模索敵魔法ピンガーでヤツを捉えて再度結界で拘束しろ!}

{!!“大規模索敵魔法ピンガー”}

 まさか“超越者級オーバーローグ”とまで言われる魔法使いが....そのまま落下するとは思わないが....突然の事態に一瞬“思考の到達速度”が遅れる....つまり....

「....どうにも君は“柔軟性”に欠けるな? 私がいつまでも“敵”の作った足場を使っているとでも?」

【ズガン!!】

「なっ!」

 突然の“金属音”と全身に走る衝撃! 状況が把握出来ないがどうやら攻撃をくらってしまった!

「ガハッ!!」

{主殿!! すぐに“修復魔法リペア”を}

 ミネルヴァが慌てて魔法を発動しようとするのを、辛うじて身振りで抑え、“あちらこちら”から煙を上げる体をサルダンに向けて警戒する!

{ミネルヴァ! 恐らくヤツは“物理的幻覚”を見せる魔法と“空中機動”の魔法を両方同時に使ってる筈だ! 今は僕の回復より〔索敵魔法ピンガー〕を常時展開してヤツを補足し続けろ!}

ラ...了解!ラ...ラジャー! 超音波探索エコーロケーション視界プレビューを発動します!}

 その瞬間、“ブン”という作動音と共に、左目に掛けたモノクルに“輪郭だけのサルダン”が映し出される。更に映し出された輪郭は細かくブレながら次々とサルダンの動きを“予測変換表示”していく。

「....どうだね? 随分と仕上がったようだが....私と一緒に来る気になったかね?」

 男は足元の空間に“電気のスパーク”を走らせて、浮遊しながらこちらの様子を眺めている。その表情ときたら....どうにもこうにも不愉快な男だ。

「....どうにも就労環境に不安を覚えますね....とんだ“ブラック企業”に勧誘されてしまったと後悔しているところですよ!」

「ククククッ! なる程! 言い得て妙だな! 確かに否定は出来んが....我等が誘いを断るなら、この場で君は“永遠の休業”になるだけだよ」

 どうにも勝ち誇っている顔が鼻につく....普段の流儀じゃないが一発殴ってやらないと気が済まない!

{ミネルヴァ! ヤツが足場を確保してる魔法がどういう物か分かるか? さっきのヤツの動きを考えたらどうも単発の大砲は当たってくれそうにない。動きを止めるにはどうしたらいいと思う?}

{....魔法構文プログラムの解析を完了! ヤツは発電した電気を、“超高電圧に昇圧”して足元の空気に流しています! その結果発生するローレンツ力を利用して“超電導推進”を行っているようです!}

{....非常識な奴だな! だがそれなら.....}

 ダメージが深いをしながら時間を稼いで、ミネルヴァと反撃の準備を念話で打ち合わせる。

「.....仕方ありませんね....“パワハラ上司”は気に入りませんが、現状を無視する訳にもいかないようですね....」

 さあココが正念場だな.....
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