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__エマというひと。
しおりを挟むエマがまるで人魚のように波に髪を靡かせ泡と戯れている一方その頃、ビーチでは──。
「お前達! どうして此処に! というかどうやって此処に!?」
「だっ、だだだ旦那様……!?」
「と、クリスティーヌさま……ッ」
エマお付きのメイド二人の前に現れたのは、自身の旦那様と、それに真っ白な日傘をさして誰かさんとは正反対のひらひらなドレスを纏う女性。金の艷やかなウェーブの髪に色白で桃色の唇。旦那様の一年前からの恋人、クリスティーヌだった。
「誰が此処まで船を運転してきたんだ! しかも一番高い船で! シルバーが連れてきたのか?」
「え、や、それはその、あのっ」
「それがそのなんと言うかその」
「いやだわ。そんなに焦ってどうしたというのかしらね? お陰で古い船に乗ってきてあげたのだから隠さずに教えてほしいわ」
「クリスティーヌの言う通りだぞ! 正直に申してみよ!」
一年前からの恋人という名の『不倫相手』を前にしてメイド達は、今しがた海に潜っている奥様の事を正直に申し上げて良いものか迷っていた。
しかし人間そんなに息は長く続かず。どう誤魔化そうかと考えている間にザバーン、と海の底から現れた美しき我らが人魚。
「ぷはっ──! ねぇ見て! とっても素敵なものを……見つけた……って、旦那様!?」
「ッ! エマ!?」
「……エマ? あら。まさかこの方が奥様?」
「おおおおおオクサマこれはそのあの」
「こここここコチラはそのあのえっと」
驚く夫婦と余裕な笑みを浮かべる不倫相手。それから焦るメイド。
エマはメイド二人の反応と旦那様の顔色で、見ず知らずの女がきっと旦那様の恋人であると察した。
「ああ、もしかして貴女がクリスティーヌ様ですか」
「あらわたくしのことご存知なの? ふっ、それにしてもその格好……」
「どどどうしてエマが!? それに、その! 君はッ! 肌が……ッ!!」
恋人同士がまじまじと眺める視線の先は、ほんのり焼けた肌を飾るブルーグリーンの水着だった。たった下着ほどの布面積。
あらイケナイ、とエマはブラウスを一枚羽織ると、お邪魔よねと一言。
「大漁だし面白いものも見つけたから私達は帰るから安心して! 二人とも行くわよ!」
「「はい畏まりました!」」
「ちょ、誰が君を此処まで……! まさか男が……ッ! エマっ、エマ!?」
隣に女を連れている夫にそんなこと言われたくないが、流石に場の空気が悪くなるのでエマは無視して船へ向かう。乗ってきた船の隣には、クリスティーヌの言った通り少し古い船が停まっていた。明らかに手入れのなされていない古い船。構わずピカピカの方へと乗り込んだ。
メイド二人が席についたのを確認し、エンジンを始動。そしてスピードが乗ってくると、ビーチで寛ぐ旦那様に指二本で挨拶を飛ばすのだった。自分が操縦してきましたよとアピールも込めて。
「あーっ! 奥様っ、服をお召になって下さいーーっ!」
「せめて港に着くまで……! 港に着くまでにはーーっ!」
そして怒られたのだった。
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