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血を継ぐ者
しおりを挟むはた──、と目を覚ましたら既に日が昇っていた。カーテンの隙間から漏れる柔らかな光。でもまだまだ眠いから二度寝しようと思って寝返りを打てば、旦那様と目が合った。
(んん? 旦那様と目が合った???)
「………………うわ!! 何でまだ居るんですか!!」
「起きて第一声がそれか?」
「そりゃあそうでしょう! 早く帰って下さいよ……!」
「かっ、帰って下さいとはなんだ……! ここは私の屋敷だぞ!」
「旦那様は恋人と暮らすって言ってました! 此処は私が自由に過ごして良い場所です! そう旦那様が仰いました! 私なにか間違ったことを!?」
「ぐッ……い、いやっ……」
申したことには申したが此処が私の屋敷であることは間違いないから煩い黙れと言われた。理不尽。
何だかこんなクソボケにいちいち言い返すのも馬鹿らしくなって、言われた通りに黙って二度寝してやった。
次に起きたときには姿が見えなかったので一安心。クリスティーヌとかいう女の元へ帰ったか。
暫く帰ってこないでほしい。というか旦那様って私とヤッたあと帰ってまた恋人とヤるのかしら。それは元気ですこと。
そもそも恋人との間にもし子供が出来たら一体どうするのかしらね。気を付けていたって授かりものだし。絶対出来ない、なんて保証もないし。
私は別に引き取って育てても良いのだけど……お相手の方が納得しなそうだわ。まさか母体の意志は無視して堕ろされたりなんてこと……。
(都会の貴族ならそれぐらいのことはやってそう……)
私はブルリと背中を震わせ、それから少し遅めの朝飯を戴いた。
そうだ。今日こそはプライベートアイランドに上陸してやるんだ。昨晩、夫の責務がどうたらとか言って突然訪れてきて腹が立つから、海の中へ飛び込んで一刻も早く忘れてやるんだ。ウニでも穫れれば新米料理人のネイサンも喜ぶかしら。
(そういえば明日から料理長が復活するのよね! どんな料理が出てくるのか楽しみだわ!)
もう既に旦那様のことなんか忘れて、執事のシルバーに使用の許可を取っていた船へ乗り込んだ。お付きのメイドにはこれまた驚かれたけど、もちろん船の操縦なんてお手の物だ。
あっという間に島へ辿り着き、上陸。白い砂浜は足の指をさらさら通り抜けて心地良い。
臨む景色は大海原ではないけれど、連なる島々も素敵だ。
「さあ採るわよ!! 待ってなさい!!」
「きゃあ奥さま素敵ですわー!」
「奥様カッコイイー!!」
婿入りしてもらうはずが嫁入りしてどうなることかと思ったけど、黄色い声援を背負うほどメイドとも仲良くなれたわ。私の人生もなかなか捨てたもんじゃないわね。
そうよ、此処はプライベートアイランド。ドレスなんか脱ぎ捨てて水着になってあたたかな水に包まれるの。嗚呼、なんて素敵なのかしら!
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