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「硝子細工」
しおりを挟む「ヤダ! 外してよ……!」
「叫んだところでどうせ誰も来やしない」
見下ろす瞳が憂いに満ちている。
抵抗しようも腕の内側をぴたりと合わせた縛られ方では、振り下ろしたところで然程衝撃を与えられない。
そもそも名のある名門貴族の長男として生まれ、己の身を護るために鍛えた相手だ。私の方が先に体力を消耗してしまう。
「はあっ……はっ……本気なの……!?」
「煩い、黙れ」
「そんな、っ、あッ、どこ触ってんのよ……!」
この屋敷に来なければ袖を通すこともなかったであろうシルクの寝衣。貴族らしいなめらかな指先が身体を滑り、兄の手より少しだけ溢れる乳房を優しく包み込んだ。
やわやわと脂肪の揺れを愉しむと、その先端を人差し指がそっと触れる。
「あんっ」
反射的に声が出て、私の反応を確かめると、こりこりと弄びだす。
漏れ出そうな声を唇を噛んで必死に押し殺し、見下す緑眼を睨んだ。つい先程まで私が恥辱を与えていたのに。今度は己が恥辱に耐えるとは。
「ふっ……んっ、く……!」
瞳の奥に焼き付けるかの如く見つめていた兄は、縛られた両手を私の頭上に押し退けるとやけに整った顔が乳房へと近付く。
焦らしているのか躊躇っているのか、寝衣の上から舌先が乳首をつついた。小鳥よりも優しく。
びくん、と肩をすくめると、柔らかな唇が乳首を挟む。
あんなに酷い言葉を浴びせてこんな無理矢理な方法を取るのに、どうして硝子細工よりも繊細に扱うのか。
頭も心も混乱する。
ちゅぱちゅぱと胸を吸うたびに兄の腰は僅かに揺れ動いて、ショーツの上から押し当てられた男性器も脈打っているのが分かる。
「ふぁ、んっ……ん!」
執拗に愛撫され声も我慢できなくなって、シルクの寝衣もツンと立った其処だけ厭らしく濡れてピタリと張り付いている。
頭では何も考えられなくなって、唇の間からは熱い蒸気が漏れる。頬も紅く染まっているのだろう。
此処までしてやっと腰で結んでいた寝衣の紐を解き始める兄。まるでプレゼントでも開けるみたいに。ゆっくりゆっくり解いていく。
そして曝け出された乳房を暫く眺めて、また同じ事をはじめから繰り返した。
たいした代物でもないのに。もっと明ら様に誘っている女がこの前のパーティーにだって来ていたじゃないか。何故、何故私なんだ。放っておいてくれれば良いのに。
「もう……もうやめて……もうやだ……挿れるならはやく挿れて……終わらせてよ……っ」
何方の液なのか分からない程にぐしょぐしょに濡れてしまった場所は、心とは裏腹に早く欲しいと嘆いている。いっそのこと一思いに貫いてはくれないか。
私の言葉を聞き、ゴクリと喉を鳴らした兄はさきほど同様、包装紙でも開けるかの如くショーツを脱がしていった。
既にはち切れそうな兄は、生々しく音を立て擦りあげ、入り口にあてがうとツプリと先端が入る。はあはあと肩で息をして、これまたゆっくりと侵入してくる。焦らしてないで早く終わらせてほしいのに。
「ん、ふぅ……ああっ! んあ……!」
気持ちいい、なんて言葉、絶対に言いたくない。
けれど執拗に愛撫されたから、挿れられた瞬間、身体に電気が走った。
奥までコツンと当たると、兄は顔をしかめる。
「お前……、初めてじゃないのか……」
「そんなのっ、アンタの妹とは違うのよっ……恋人のひとりやふたり……!」
「ッ、クソっ、クソっ! ああそうか。なら優しくする必要もないよな……!」
「は? ッあ! や! ちょっと……!」
今までのが嘘のように激しく腰を揺らし私を突いて、快感を貪る。
私が“初めて”だと思ってあんなに、硝子細工のように扱ったのか?
(そんなの、そんなのまるで……)
「ひあ! やだ! いっちゃう! だめっ! んあ、あああっ……!」
「クッ……! う、あ……!」
散々愛撫されて激しく突かれるものだから呆気なく達してしまった。
きゅうきゅうと絞られ我慢できなかったのか、一番奥に熱い液が注がれる。
「!? いま、ナカに、出して……!」
「はっ、はっ……あ、ぅ、う!」
「ッえ!? あっ、何で!」
全て出し終わったのに、どうしてかムクムクと膨れ上がる男性器。
勢いは衰えず突かれてその度に果てて、それが何度繰り返されただろう。
泡立った液がお尻まで流れて、もう限界だった。
「もっ……やだっ、ほんとにだめっ……むりッ……!」
「ああっ、ミア! ミアっ……!」
二度目からは私の名前しか呼ばなくなり、そしてまた果てた。
奥で兄を受け止めると、ふ──、と意識を失ってしまったのだ。
──次に目覚めたときはベッドの上だった。
(あ……れ……? 夢……)
そう思いたかったが腰に響く痛みでやはり現実だったかと思い知らされる。
汚れていた寝衣も着替えさせられている。
此処まで運んでそれでわざわざ着替えさせたというのか。あの兄が?
意味が分からない。本当に意味が分からない。
「なんなのよ……もう……」
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