西館の図書室で

ぱっつんぱつお

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『愛人の娘』

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 止められなかった。
 そもそもミアが悪いんだ。あいつが、爪先で俺を弄ぶから。ただでさえ触れぬよう気を付けていたのに。あいつから誘ってきたんだ。
 いけない事だとは分かってる。俺達は血こそ繋がってはいないが兄妹なんだ。

 あと、もう一ヶ月で此処を出ていくという。
 本当に出ていく気なのか?
 確か二ヶ月前のあの日に言っていたな。貴族なんて死んでも御免、と。
 お前の幸せは此処ではないんだな。出たいと願うミアを引き止める権利は俺にはない。俺が何を願おうが、縛り付ける権利など無いんだ。
 だから今だけ。今だけは、俺のものでいて。

 潤んだ瞳で早く挿れてと言われたときはそれこそ気を失いそうだった。
 想像した何千倍も心地が良い。
 触れば宙を舞うようで、口に含めば甘いし、そのナカは脳も腰も心までも蕩けそうだった。
 いい加減決めなければいけない婚約者のことも、仕事の問題も全てがどうでも良くなった。ずっとこのままでいい。ずっとこのままひとつでいたい。お前の喘ぐ声は俺だけに聞かせてほしい。

 そうやって何度も何度も犯しているうちに、ミアの方が気を失ってしまった。
 少しやりすぎたかもしれない。けど、『初めて』じゃないと知ったら抑えきれなかったんだ。
 恋人のひとりやふたり。ミアの身体も心までも独り占めしておいて手放すのか。

「贅沢な男だ……」


 俺はミアを抱え部屋まで運んだ。着替えさせ、汚れたところも拭いた。
 きっと昼過ぎまで起きないだろう。ゆっくり寝れるようメイドには体調が悪いと伝えて食事だけ持ってこさせるか。

 ベッドに寝かせ、隣りに座った俺は意味もなく寝顔を眺める。
 金と顔さえあれば大抵のものは手に入れられると友人でもある殿下は仰っていたっけ。
 俺の妹だからとリリアナとの婚約を受け入れてくれたが、殿下ならミアも手に入れられたのか?
 本当に金があれば手に入れられるのか?
 いいやそんなのは嘘だ。
 どれだけ整った容姿を持とうが、どれだけ金を持とうが、手に入れられない。
 お前は父の遺した金を持ってこれから自由に暮らすのだろう。なら俺も連れて行ってはくれないか。お前が居ないのなら此の世の全てに意味がない。
 いっそのこと、このまま起きなければいいのに。
 そうすれば、…………そうすれば?
 俺は、ミアをどうしたいんだ。

 すやすやと寝息を立てる桃色の唇。
 たいした手入れもされていないのに、何故こうもそそるのか。
 吸い寄せられるように、ちゅ、と唇を重ねた。
 寝ている隙に奪うなんて酷い男だと思うか?
 そうでもしなければ奪えない。

「ああ、ナカにいっぱい出したな。孕んでくれれば……」

 妹だろうがなんだろうが俺の子だ。
 侯爵家の後継ぎだ。

 ……いや。
 兄妹か。父が養子としてミアを招いたのならばその時点で貴族の一員のはずだ。なのに何故ミアは「結婚出来る歳だから」と20歳で出ていこうとするのだ?
 養子だとしても貴族であるから結婚は16歳。ミアがそれを知らない訳無いだろうに。
 まさか、そんな筈は。
 そうだ確かに父は養子縁組の届けにサインをしていた。それで直ぐにミアが来たんだ。新しい家族だと紹介されて。
 社交界に出すのは可哀相だからと言って父はミアを誰にも紹介しなかった。俺達だって存在を知られたくなかったから、だから……、

「…………きちんと書類を確認してみよう……」

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