【本編完結】愛だの恋だの面倒だって言ってたじゃないですか! あ、私もか。

ぱっつんぱつお

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またすこし、距離が縮まりました

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 神官達が働く神殿研究所までの道中──。
 メグの様子が気になり、元気にしているのかハント公爵に聞いている際、ふと、思い出したことがある。“攻略対象”なるものは居るのだろうか、という事に。
(因みに最近のメグちゃんは王妃教育とやらが嫌で城の中を逃げ回っているらしい)

 仮に、今のこの世界が何処かのよくある異世界転移乙女ゲーム風物語だったとして、ヒロインは〈メグ〉で間違いないだろう。天真爛漫で素直な性格は正にヒロインに相応しい。少し我儘な気もするが、ヒロイン気質といえばそうだと思う。
 で、通常テンプレなら二人目の〈わたし〉はテキトーに対応されたりないがしろにされそうなのだが、何だかんだとメグより早く攻略対象者っぽい人と婚約してしまった。

 悪役令嬢っぽい王子の婚約者〈カレン〉も居るが、そもそも私もメグも、そしてカレンも王子も18歳を越えていて、いわゆる〈学園〉に通っているわけではない。ありきたりな断罪イベントと呼ばれる婚約破棄はありそうだが、学園イジメも出来ない、卒業パーティーなんかも無い状況じゃあそれがいつになるのか分からない。
(つか普通に別れる前の揉めてるカップルなんですけど……)

 いくら漫画喫茶でバイトしていて、いくらコーナー組が出来るぐらい異世界モノが流行りだったからって、私自身休憩時間に読むぐらいだった。
 それでも何となく“乙女ゲーム”だの“聖女”だのなんて、ある程度知識はもっているのだが。
(まぁまさか自分がこんなとこに来るとは思わないでしょ)

 異世界好きの疲れた先輩にでも今後の展開を聞けたなら良いけど、そんなわけにもいかず。自分で探るしかない。
 イケメン改め“攻略対象者”からなるべく距離を置いたほうが面倒事に関わらずに済むだろう。私はもふもふと平和に暮らしたいだけなのだから。
(と言いつつハント公爵様の婚約者なんですけど?)

「公爵様に聞きたいことがあるんですけど、」
「なんだ」
「陛下も仰ってましたけど公爵様って女性からモテますよね。女性から黄色い声が上がる“イケメン”って他にもいらっしゃるんですか? ま、顔だけ言えばアーサー殿下もモテるんでしょうけど」
「………………お前、別に誰と付き合ったって構わないが婚約しているのを忘れるなよ」

 じろりと横目で睨むハント公爵。
(は? どういう意味ですか??)と3秒見つめ合った。

「ちょっと待って違うんですけど逆なんですけど!」

 ハント公爵の言っている意味を理解し、めちゃくちゃに否定した。どういう意味だと今度は公爵が思っているに違いない。
 確かに捉え方によっては男漁りしたいですと言っているようなもんだ。
(違うし! 全然違うし!)

「面倒事から避けたいんです! 前もって知っていれば余計なイザコザに首を突っ込まず済むでしょう? だからですっ!」

 あぁそういう事か、と彼。危うくビッチ認定されるところだったと冷や汗ものだ。

「……そうだな、私の知る限りでなら何人かは居るな」
「何人も居るんですか……」

(まじかよ~)と、もしかしたら顔に出たかもしれないが、今はふたりきりだし他のご令嬢が見ているわけでも無し、別に良いだろう。

 丁寧に刈られた芝と、足首程度の白い花々。その白い花を夜には美しく輝かすであろうフットライト。四人ほどが並んで歩ける白いレンガ道は、神殿へ続く道に相応しい。
 広く開かれたこの場に居るのはハント公爵と私だけだ。
 とても素敵なデートスポットなのだが、残念ながらお互いそんな感情は持ち合わせていない。それが互いに分かっているから楽だと感じる。余計な気を遣わなくて良いのだから。

「王族専用の教師の男、それからカレン嬢の弟であるハーディー家の長男、最近だと平民から王族付きのシェフになった男も人気だな」
「へぇ、平民から……たたき上げですか、すごいですね」
「実力をお認めになる陛下は寛大だ。そういう所は尊敬できる」
「ひとこと余計じゃないですか?」
「嘘は言っていない」
「ふふっ。まぁ、確かに」

 そういう所は、なんて皮肉めいているが、甥であるハント公爵だから言えるのだろう。
 信頼しあっている証拠だ。

「あとミハエルもなかなか人気だぞ」
「ああ……何となくそうかなとは思ってましたけど……」
「神官の中にも一人いるな。私が知っているのはそれぐらいだ、皆顔が良いから見ればすぐ分かるだろう」
「逆にまだ居たんですかって感じです……。※ただしイケメンに限る、ってやつですね」

 何だそれはと公爵が問うので簡単に説明すると、「はぁ?」と首を傾げていた。
 なんとなくそれが面白かったので「かわいいは正義ってのもありますよ」と教えてあげると、また「はぁ?」と首を傾げていた。相変わらず顔は恐いが首を傾げるのはズルい。
(※ただしイケメンに限る)

「それで……つかぬことを聞きますが……、そのイケメン達はもうメグちゃんと……」
「仲良くしているな」
「やっぱり……!」

 さすがヒロイン、と感心するのと同時に心配もする。全く会っていないが孤立していないだろうか。前の世界でも常識人とは言い難そうなのに、この世界だと結構ズレているのではないだろうか。

「王妃教育が嫌だと私の執務室にまで逃げ込んでくるから困るんだ」
「すごいですね、さすが。でもそれじゃあ他のご令嬢方の格好の的でしょう。大丈夫ですかね、メグちゃん」
「まぁ、本人が気にしていないからな」
「あはは、メグちゃん気にしなさそうですもんね」

 しかし本人が気にしていなくても周りとの距離が、気付いたときには状態になってしまう。ただでさえメグもアーサー殿下を横からかっさらっていったのだから。
 加えて残りのイケメン共もはべらせてるともなると非常にやばい。このままでは社会的にバッドエンドなのではないか。
(ちゃんと努力を見せれば周りの見る目も変わるんだろうけど……、今の内に何かアドバイス出来ればなぁ~……)
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