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大方集る
しおりを挟むとある秋初め頃の事、
出勤前の休憩室にて。
「あきらさん!」
「おはよー昴くん、どしたー?」
「はよー。」
「あ、三上さんも居た。」
「そりゃ居るし! 同じシフトインで同じ大学からきてんだぞっ!」
「まーまー、私が邪魔で見えなかったんだって~。 ねー?」
「あはは、すみません、」とキラースマイルで三上に謝る昴。
いつもあきらしか見えていない昴だが、このスマイルで大抵三上には許される。
黒髪の石鹸の香り漂うイケメンとは罪なものだ。
「で? どうしたの?」
「あ、あの。 出来ればでいいんですけど、今度の土曜日うちの高校で文化祭あるので、是非、お二人にも来てほしいなって。 勿論、都合が合えばですけど……」
「えー!そうんなんだ! 三上~、もちろん行くっしょ!」
「もち~! バイトも授業もナシ! 折角だから武ちゃんも誘おうよ! 鈴木は~……、あきが誘えば来るかも。 あの男まじあたしの言うこと聞かねーから。」
「それぜったい、三上が鈴木くんの事からかうからでしょ」
「えー、だってアイツ、あきに気があるの認めないんだもん」
盛り上がる二人の会話を聞き、思わず「え、」と固まる昴。
すかさず三上は、「お?? どした昴く~~ん、心配になったか~~??」と、鈴木にするのと同じ様にからかった。
するとなんとまぁ初々しく「い、いや、別に……」と取り繕う昴と、その姿にほんの少し乙女の顔になるあきら。
対象的にニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべる三上だが、何時の間にかこちらを睨んでいたあきらに気付き、すぐ様目を逸らしたのだった。
因みに〈武ちゃん〉と〈鈴木〉とは、このコンビニで一緒に働いている同じ大学の男性だ。
武ちゃんは後輩で〈野球同好会〉というサークルに所属している筋肉ムキムキな男。
同好会というだけあって、今のところ人数は5人。
地元の草野球のチームに入れてもらっているらしい。
そして鈴木とは、顔の作りは悪くないのだが少しばかり陰湿な雰囲気の同級生で、あきと同じ〈星を見る会〉と言うサークルの仲間である。
大学生らしく、車持ちの部員と長期の休みは色々なところへ星を見に行っている。
このサークルは全部員35人と多い方なのだが、長期の休みとなると実家に帰る部員も多数いるので、全員が集まることはほぼ無いに等しい。
テニスサークルのように男女の交友関係が派手だというイメージで入部して、皆で集まり、ただ騒ぎたいだけのサークルとは人種が違うので、たとえ全員が集まらなくとも気にすることは無い。
これだけ言っといてなんだが、三上はテニスサークルである。
(ヤリ目的、だなんてそんな筈はない……)
「はいはい、てか鈴木が好きなの私じゃなくて、たぶん三上だから。」
「あ、そうなんですか?」
「はぁ~~?? あり得ないんですけど~。なんであたしなワケ!?絶対あきだし!!」
「もー、ほんっと鈍感! まーいいや、三上の事は置いといて、昴くん!」
「は、はい!」
「誘えるだけ誘ってみるから!!」
「置いとくなし!構えし!」
「はい、お願いします! うちの高校の文化祭、調理コース出来てからすごく活気が出てるんで、あきらさん達にもきっと楽しんでもらえると思います! あ、因みに試食させてもらったんですけど、料理は普通に美味しかったですよ。」
「へぇ? 進学校なのに調理コースあるとか、不思議だね」
そう。
元々隣りにあった別の高校が大人の事情で合併する事となり、5年前から昴の通う高校は調理コースが出来たのだ。
難関だった高校は門徒を広げる形となり全体の偏差値は低くなってしまったが、相変わらず進学校であることには変りない。
クラス再編や教室、元々別だった高校の境も工事が無事に終わり、慌ただしかった先生達も今は落ち着きを取り戻し、何とか上手くやっていけてるようだ。
文化祭も、折角高校が合併したのでもっと大規模なものにしようと、企画に準備や接客、売上管理など将来の勉強も含め進学コースの子たちが取り組み、調理コースの子たちが日頃の成果を発揮し料理を提供するものとなったのだ。
近所では結構人気の行事らしい。
(実際のところ、これまた大人の事情で資金集めが必要なだけなのだが……)
「────と、
言うことでやって参りました~~、城万高校~~!! いやー、JKはイイねぇ~」
「武ちゃんうるさーい、恥ずかしいんですけど。 キモいし。」
「昴くん何処だろーねー」
「校庭の右側って言ってたからこっちだと思う。」
「あ、そう言えば鈴木ってこの高校出身だっけ、頭良いのに何でうちの大学に入ったの?」
「んーー……、遠いと面倒だから。」
「あはは、さすが鈴木……。能ミソの無駄遣い。」
「めっちゃ良い匂いする~~、先輩達早く行きましょーよ~、俺腹減りました!」
武ちゃんの言葉に「はいはい」と呆れながら、賑わいのある校庭へと足を踏み入れる、同じバイトに同じ大学の4人。
そして待ち合わせの時間より先に着いていた、もう二人、
「おう、遅かったな。 先食ってるぞ。」
「わ~! 鈴木先輩ったら変わらず暗ぁ~い!」
あきらの中学からの同級生〈拓馬〉と、大学一年の〈由莉〉
この二人はあきらや鈴木と同じ、星を見る会のサークルメンバーである。
これで大方物語の役者が揃ったわけだが、皆が昴の所に辿り着くまで我慢出来ず食べ歩いている間に、ヒロインである〈あきら〉について少し説明をしよう。
わりと美人な方に分類される顔の作り、髪型は思い切りの良いショートカット。
高校まで長くてサラサラだった髪を、上京してからすぐにバッサリと切った。
これは一人暮らしをし始め、シャンプー・トリートメント代の節約や、髪を乾かすのも面倒になったからだ。
服装の好みは、ジーンズにスウェット、Tシャツ、そしてスニーカー、比較的ラフなスタイルが好みであった。
しかしだらけずお洒落に見えるのは、ちゃんとしたブランドを選んでいるのと、知り合いの美容師にカットモデルとして髪を切ってもらっているからである。
あきらは他人に興味がない方であった。
『サバサバしている』と言えば聞こえはいいが、『興味が無い』と言ったほうがしっくりくる。
たとえば、『イケメンの彼氏を自慢している』とか、『SNSでさり気なく高級なものを写り込ます』とか、『男性の前ではキャラを作る』とか、そんな女は、女から嫌われる傾向にあるが、あきらは違った。
誰かの『好き』が、自分の『好き』と必ずしも同じではないからだ。
たいして仲良くもない友達が自慢してくる何かが、自分の好みでないと「そうなんだ、良かったね」と笑顔で返せる。
相手の『好き』がそれなんだな、と理解した上で本心からそう言えるのだ。
(勿論、相手の好みが自分と被っていたのなら羨ましいと感じることもある)
なので誰かの悪口を言うことも少ない。
好みがハッキリしているので、流行も然程気にしない。
これは、両親が其々好きなモノを突き通している背中を見て育ったからだと思われる。
一人っ子という環境もそれを助長させたのだろう。
そんな『サバサバした』あきらは、男性からも一定数好まれたが、そんなんだから「気に入らない」と陰口を叩かれることもあった。
しかし世界中の皆が自分の事を好きな筈もないので、「そんな人も居るだろう」ぐらいに感じていた。
流行りのものや、周りからの羨望を望む三上にとって、あきらは新鮮だったのだ。
まるで出会うべくして出会ったかのように、二人はとても気が合った。
出会って1年程だが、二人は親友と呼べる仲になったのだ。
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