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黒口さんは薄口がお好き
019 いつも通りの延長線上
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黒口にとって高校から始まった新たな碓井景虎は解釈違いも甚だしい姿で、ずっと嫌っているものだと思っていた。しかし、それが黒口を変えるきっかけになっているなんて思ってもみなかった。僕自身が変わろうとしたことにあまり意味がなかったと思っていたけど、黒口にとっては思わぬ形で意味あるものになっていたんだ。
「……それから、今日ここで宣言します。私は――」
「黒口さん! その先は……僕から言わせて欲しい」
「えっ……?」
だけど、僕の変化で黒口が大きく変われたのだとしたら、まだ今の僕はそれに追いつけていない。結局、弱気なところを見せてしまったが、僕も変わるために黒口に言うべきことがあるんだ。想定していた状況とは全く違うけど、僕はその場の勢いで喋り始める。
「さっきの繰り返しになるけど、僕は黒口さんが期待してるほどいい人じゃない。黒口さんが電車で絡まれてる時は助けられなかったり、今日だって一瞬黒口さんとの約束を優先させようと思ったりした。僕もなるべく正しいことをしたいけど、黒口さんが見てない部分ではできないこともあるんだ」
「そんな……私の話は私が悪いところもあるのに……」
「ううん。僕がもっと自分に自信があれば……ってこの話はもう終わったことだからいいとして、僕はこれからも黒口さんが思っている碓井景虎と違う碓井景虎になってしまうかもしれない。それでも……黒口さんが過去の失敗も含めて許してくれるなら、僕はこれからも黒口の傍にいたい」
「景虎くん……!」
「でも、ただ傍にいたいだけじゃなくて、その……一番傍にいたいんだ。今日までの僕と黒口さんの距離よりも傍に。一度断った僕が言うのはカッコ悪いけど、伝えるよ」
今度は僕から一歩近づいて、言う。
「僕は黒口さんが好きだ。黒口さんが僕を見ていた時間よりも僕が見ていた時間は少ないけど、好きなってしまったんだ」
それ以上言葉は出てこなかった。事前に考えていた言葉とは全く違うものだけど、今の自分の気持ちを出し切れたと思う。
それに対する黒口の答えは――
「うえーん!」
号泣だった。目の前には僕しかいないけど、大粒の涙を流しながら声を出す姿は傍から見ると泣かせてしまったように見える。
いや、そのパターンは予想してないよ!? ど、どこかまずかったんだ? 前置きが長かった? 一番傍とか言うの気持ち悪かった? 断られる可能性は考えていたけど、泣くほど引かれるとは思ってなかった!
そう思って焦った僕はハンカチを渡しながら言い訳を始める。
「ご、ごめん! その、ここしかタイミングがないと思ってたんだけど、黒口さんがそんなつもりじゃなかったなら……」
「違うんです。ぐすっ……私、今日はもう景虎くんのことは諦めるって言おうって思ってて……」
「ええっ!? そうだったの!?」
おい、数分前の景虎。全然気付いてないじゃないか。滅茶苦茶早とちりして真逆のことを言ってしまったぞ。
「ぼ、僕が言うのも何だけど、どうして……?」
「だって、景虎くんに告白を断られて友達からもダメって言われたのに、私しつこく付きまとって……私の今までの景虎くんと違うイメージがあったら否定して……ずっと自分のことばっかり考えてたから……」
「そ、そんなことないよ。そもそもあれだけ気持ちを込めてくれた告白を断った僕が……」
「ううん。あの時の私、焦って勢いで告白しちゃったから、むしろ断ってくれてホッとしたんです。だからこそ最初から関係を始めようとして……」
「だったら、黒口さんがそう考えてくれて良かったよ。そうじゃなきゃ、僕は黒口さんと関わるのを本当に諦めてた」
僕がそう言うと、涙を拭き終わった黒口と僕の時間は一旦止まる。そして、自分たちの今のやり取りが可笑しくなってお互いに笑ってしまった。
「僕たち、何言ってるんだろう」
「はい……ふふっ。自分でダメだと思ってたことは私や景虎くんにとってはいいことだったんですね」
僕と黒口が高校初日に話した時からそれは始まっていた。お互いを気遣い合っていたことだから悪いことじゃないんだけど、どちらも本当のところを口に出さないから勘違いして一人で考え過ぎてしまったのだろう。
黒口の涙が引っ込むのを見終わると……僕はどうしたものかと考え始める。さっきの笑いで空気はいつも通りに戻ってしまった。告白はできたかどうか曖昧な感じがするけど、今日のところはこのままでも……いや、景虎。それはナシだ。むしろこの状況の方がいいんじゃないか。
「黒口さん、改めてになるけど……僕と付き合ってくれませんか?」
「えっ……えええええっ!?」
「う、うん。驚くのも無理はないと思う。でも、僕が黒口さんを好きなのは本当だから」
「え、えっと……そんなあっさり言われると思ってなくて……」
「カッコつけようとか、いい雰囲気にしようとか考えてたけど、どれも上手くいかなかった。だから、僕が僕のままでいられる、いつも黒口さんと話す僕ならいいかなと思ったんだけど……」
先日はできないと思っていた日常での自然な流れの告白……とは少し違うけど、そこで告白する意味はわかった気がする。飾り気のない普段通りの自分が想いを伝えることがいい関係もあるんだと。
すると、黒口もいつも通りの笑顔に戻って、僕を真っ直ぐ見つめて言う。
「私も……景虎くんが好きです。だから、私で良ければ……ううん、喜んで」
ロマンチックではないかもしれないけど、僕と黒口らしい一つの結末が迎えられた。
「……それから、今日ここで宣言します。私は――」
「黒口さん! その先は……僕から言わせて欲しい」
「えっ……?」
だけど、僕の変化で黒口が大きく変われたのだとしたら、まだ今の僕はそれに追いつけていない。結局、弱気なところを見せてしまったが、僕も変わるために黒口に言うべきことがあるんだ。想定していた状況とは全く違うけど、僕はその場の勢いで喋り始める。
「さっきの繰り返しになるけど、僕は黒口さんが期待してるほどいい人じゃない。黒口さんが電車で絡まれてる時は助けられなかったり、今日だって一瞬黒口さんとの約束を優先させようと思ったりした。僕もなるべく正しいことをしたいけど、黒口さんが見てない部分ではできないこともあるんだ」
「そんな……私の話は私が悪いところもあるのに……」
「ううん。僕がもっと自分に自信があれば……ってこの話はもう終わったことだからいいとして、僕はこれからも黒口さんが思っている碓井景虎と違う碓井景虎になってしまうかもしれない。それでも……黒口さんが過去の失敗も含めて許してくれるなら、僕はこれからも黒口の傍にいたい」
「景虎くん……!」
「でも、ただ傍にいたいだけじゃなくて、その……一番傍にいたいんだ。今日までの僕と黒口さんの距離よりも傍に。一度断った僕が言うのはカッコ悪いけど、伝えるよ」
今度は僕から一歩近づいて、言う。
「僕は黒口さんが好きだ。黒口さんが僕を見ていた時間よりも僕が見ていた時間は少ないけど、好きなってしまったんだ」
それ以上言葉は出てこなかった。事前に考えていた言葉とは全く違うものだけど、今の自分の気持ちを出し切れたと思う。
それに対する黒口の答えは――
「うえーん!」
号泣だった。目の前には僕しかいないけど、大粒の涙を流しながら声を出す姿は傍から見ると泣かせてしまったように見える。
いや、そのパターンは予想してないよ!? ど、どこかまずかったんだ? 前置きが長かった? 一番傍とか言うの気持ち悪かった? 断られる可能性は考えていたけど、泣くほど引かれるとは思ってなかった!
そう思って焦った僕はハンカチを渡しながら言い訳を始める。
「ご、ごめん! その、ここしかタイミングがないと思ってたんだけど、黒口さんがそんなつもりじゃなかったなら……」
「違うんです。ぐすっ……私、今日はもう景虎くんのことは諦めるって言おうって思ってて……」
「ええっ!? そうだったの!?」
おい、数分前の景虎。全然気付いてないじゃないか。滅茶苦茶早とちりして真逆のことを言ってしまったぞ。
「ぼ、僕が言うのも何だけど、どうして……?」
「だって、景虎くんに告白を断られて友達からもダメって言われたのに、私しつこく付きまとって……私の今までの景虎くんと違うイメージがあったら否定して……ずっと自分のことばっかり考えてたから……」
「そ、そんなことないよ。そもそもあれだけ気持ちを込めてくれた告白を断った僕が……」
「ううん。あの時の私、焦って勢いで告白しちゃったから、むしろ断ってくれてホッとしたんです。だからこそ最初から関係を始めようとして……」
「だったら、黒口さんがそう考えてくれて良かったよ。そうじゃなきゃ、僕は黒口さんと関わるのを本当に諦めてた」
僕がそう言うと、涙を拭き終わった黒口と僕の時間は一旦止まる。そして、自分たちの今のやり取りが可笑しくなってお互いに笑ってしまった。
「僕たち、何言ってるんだろう」
「はい……ふふっ。自分でダメだと思ってたことは私や景虎くんにとってはいいことだったんですね」
僕と黒口が高校初日に話した時からそれは始まっていた。お互いを気遣い合っていたことだから悪いことじゃないんだけど、どちらも本当のところを口に出さないから勘違いして一人で考え過ぎてしまったのだろう。
黒口の涙が引っ込むのを見終わると……僕はどうしたものかと考え始める。さっきの笑いで空気はいつも通りに戻ってしまった。告白はできたかどうか曖昧な感じがするけど、今日のところはこのままでも……いや、景虎。それはナシだ。むしろこの状況の方がいいんじゃないか。
「黒口さん、改めてになるけど……僕と付き合ってくれませんか?」
「えっ……えええええっ!?」
「う、うん。驚くのも無理はないと思う。でも、僕が黒口さんを好きなのは本当だから」
「え、えっと……そんなあっさり言われると思ってなくて……」
「カッコつけようとか、いい雰囲気にしようとか考えてたけど、どれも上手くいかなかった。だから、僕が僕のままでいられる、いつも黒口さんと話す僕ならいいかなと思ったんだけど……」
先日はできないと思っていた日常での自然な流れの告白……とは少し違うけど、そこで告白する意味はわかった気がする。飾り気のない普段通りの自分が想いを伝えることがいい関係もあるんだと。
すると、黒口もいつも通りの笑顔に戻って、僕を真っ直ぐ見つめて言う。
「私も……景虎くんが好きです。だから、私で良ければ……ううん、喜んで」
ロマンチックではないかもしれないけど、僕と黒口らしい一つの結末が迎えられた。
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