黒口さんは薄口がお好き

ちゃんきぃ

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黒口さんは薄口がお好き

020 薄口な会話4

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 告白が成功して、晴れて黒口と彼氏彼女の関係になった10分後。僕と黒口はそのままロマンティックな雰囲気に突入することはなく、電車に乗っていた。二人とも根は真面目なので、学校をサボって遊んでしまおうぜ……なんてことにはならずに、2時間目へ間に合うように動き始めたのだ。

 しかし、それはそれとして困った状況だ。僕は告白については色々考えていたし、断られることも覚悟していたけど、成功した後のことは何も調べていなかった。こういう時はどうすればいいんだ? 今後したいことを話す? それとも普通に日常会話?

「か、景虎くん……」
「ど、どうしたの、黒口さん」
「わ、私……遅刻するの初めてなんですけど、この後どうなっちゃうんでしょうか……?」

 黒口は少し肩を落としながらそう言う。いかん。これはカレカノトークしてる場合じゃない。

「そんな大変なことにはならないよ。職員室で担任に話して遅刻理由を書かされるくらいだと思う」
「そ、そうなんですね。景虎くんは……今まで遅刻ってしたことないと思うんですけど……?」
「うん。でも、生徒手帳に書いてあったからそうなるはずだよ」
「なるほど。私、生徒手帳は一回だけ適当に目を通しただけで……」
「いや、それが普通だと思うな。僕は……ほら、髪を染めたりするから校則に引っかかってないかよく見ておきたかったから」

 まさかその知識が活かされる時がこんなに早く来るとは思わなかった。遅刻証明書を書くのだとすれば、電車を使っているから天候とかを理由に遅延した時ならあり得るものだ。それが……告白のやり取りをしていたら遅刻しただんて絶対言えない理由である。

「というか、遅刻理由はどう書けばいいんだ……?」
「景虎くんはお年寄りを道案内してからでいいと思います」
「う、うーん……黒口さんはわかってくれるけど、学校の遅刻理由にはさすがに書けないよ。それより黒口さんの理由を考えないと」
「私は……ぼ、ボーっとしてたら……」
「たぶん、そういう書き方は通らないんじゃないかな。寝坊とかの方が先生たちも納得すると思う」
「そ、そっか。そうですよね!」

 徐々に顔色は戻ってきた気がするけど、黒口はどうも本調子じゃないみたいだ。今までこういう学生的に悪いとされることはしてこなかったからだろう。いや、僕もサボりや遅刻はなかったから同じなんだけど、告白に成功したおかげか、心にはだいぶ余裕があった。

 よし、ここは僕が黒口を元気付けてあげよう。

「黒口さん、大丈夫だよ。職員室へ行く時は僕も一緒に行くし、怒られる時も一緒だ」
「は、はい。心強いです」
「元はと言えば僕が約束通りに行けなかったのが悪いんだから黒口さんはそんなに気にしなくてもいいよ」
「は、はい。ありがとうございます」

 僕はそれらしい言葉をかけていくけど、黒口はふわっとした返事をしてもじもじするばかりだ。それほど思い詰められると、本当に僕が悪いところもあるから申し訳なくなってしまう。

「黒口さん、怒られたりするのが嫌だったら僕が理由を考え――」
「い、いえ! それは別に大丈夫なんですけど……」
「えっ? じゃあ、何が……」
「あ、あの、景虎くん。もう少し……近づいてもいいですか?」
「近づく? 構わないけど……」
「いいんですか!? それじゃあ……」

 その時の僕は黒口と並んで座っていたからこれ以上近づきようがないと思っていた。しかし、黒口は拳一個分あったその間を詰めてきたのだ。僕と黒口の肩はぴったりとくっつき、手を少し動かせばそのまま触れてしまう距離になる。

(そ、そういう意味だったのか……!)

 そして、僕はまた勘違いしていた。遅刻への罪悪感はないことはないんだろうけど、黒口はそれ以上につい先ほど彼氏彼女となった碓井景虎とどう接するべきかと考えいて、それが本調子じゃないように見えたんだ。

「こんなに近くにいられるなんて……夢みたいです」
「う、うん」
「わ、私のドキドキ……伝わっちゃうかもしれません」
「だ、大丈夫……僕もドキドキしてるから」

 僕がそう返して黒口の方を見ると、黒口とばっちり目が合う。その次にはお互いに顔を伏せてしまった。よく考えたら黒口は今日僕から告白されるなんて考えてもなかっただろうから、僕よりも告白した後のことを考えられているはずがなかった。

 その後、僕と黒口は駅に到着するまで何も話さず、お互いの鼓動を感じることになった。これが正解なのかわからないけど、何となく……恋人っぽいことをしたのかもしれない。
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