インフルエンサーを目指す幼馴染が僕の前だけで見せる姿が可愛らしいから語りたい

ちゃんきぃ

文字の大きさ
1 / 9

インクリ科を紹介してみた!

しおりを挟む
 私立観美坂かんびざか高等学校。
 観美坂市内でも有数の進学校であり、体育科があることからスポーツでの実績も多数残している本校は今年で創立55周年を迎える。
 その5年前の50周年。
 観美坂高校に新たな学科が創設された。
 インフルエンサー・クリエイター養成科。
 現在では通称インクリ科と呼ばれるようになったこの学科は、名前の通りネットやSNS等で活動するインフルエンサー及びクリエイターを育成することを目的としている。
 それだけ聞くと、わざわざ50周年記念で新設するような学科なのかと思われるかもしれないし、実際のところ新設前後でそういった人材を育成する必要性について一部の大人から問われ、本当に活躍できるインフルエンサーやクリエイターは誰かに教えられて生まれるものではないと、何人かのネット評論家的な方々から批判されていた。
 しかし、インクリ科は単に名前に入っている人材を育てる学科ではない。ネットで活動する上の情報リテラシーなどを学びつつ、進学校としてのベースを活かした普通科教育を組み込んだ学科だ。それは長年あった体育科も同じで、基本的な普通科の授業の中に体育科のカリキュラムを組み込んでおり、その部分をインクリ科のカリキュラムへ置き換えたのである。
 それによって保身と言えば聞こえは悪いかもしれないが、インクリ科としての人材を育てるだけなく、普通の進学ないし就職にも切り替えられる学校教育を受けさせられるようになっていた。
 しかも、メインとなるインクリ科の知識や技術力はインフルエンサーにならなくても役立つ。昨今は普通の仕事においてもSNSの運営や動画制作もしくは動画配信を事業の一環や宣伝で活用することは珍しくなく、そこに強い人材は重宝されるものだ。現在学科を卒業している第1・2期生の中にも企業に就職してインクリ科でのスキルを存分に活かしている人もいるという。
 もちろん、本来の目標であるインフルエンサーや動画投稿者、それに携わるクリエイターとして活躍している人も多数おり、その両方の実績が相まって創立から5年経過した現在のインクリ科は、市民権を得ると共に市を越えて全国から注目されるようになっている。それと同時に普通科と体育科の入学希望者もこの5年間は微増傾向にあるらしい。
 最初からそれを狙って新設したのかはわからないが、少なくとも今の観美坂高校にとってインクリ科自体が宣伝効果を持つようになっているのだ。

 ただ、インクリ科は決して広き門ではない。各年度で1クラス男女15人計30人(半々なのは平等性を考えた結果らしい)で構成されており、入学試験は自己推薦に限られ、まるでオーディションの如く何回も面接が行われる。
 そのことから、インフルエンサーや動画投稿者になるための想いや動機が生半可なものでは受かることが難しく、入学時点である程度素質や才能を選別されてしまう。
 そして、インクリ科の生徒は入学後も想いの強さや才能を試されることになる。1年生からそれぞれ動画投稿サイトと各種SNSのアカウントを所持し、カリキュラムの一環として動画投稿や配信をしていかなければならない。
 その上1ヶ月に1回その月の登録者数推移などから算定された学年男女別のランキングが発表されるので、彼ら彼女らは否応なしに自分の実力を知らしめられ、他者と比較されてしまうのだ。
 その注目は同じ校内の普通科と体育科でも当然のように集まっており、特に同年に入学した同級生の投稿やランキングは日常的な会話の元になっている。
 自分が人と比べられるのは気が進まないが、他人が競い合う姿は自分の評価に関係ないので気軽に楽しめる。そのような気軽な娯楽が身近にあるのは、この学校以外だとあまりないだろう。
 そんな中、今現在最も注目が集まっているのは、2年前に入学した現高校2年生――卒業後は第4期生と言われるようになる生徒たちだ。

「続いて5月の2年女子ランキングを発表! 第1位は絶対王女・一条いちじょう穂希ほまれ! 淡々としていながらユーモラス溢れる動画投稿と、ファッショナブルかつビューティフルなルックス活かしたSNS投稿は今月も強かったぁ! YouTubeの登録者は12万人を達成! 各種SNSも順調にファンを増やしていき、1年生から累計14ヶ月連続でトップをキープ中だぁ!」

「第2位はなつみかん! 天真爛漫ギャルの進撃は止まらない! 今月投稿の【踊ってみた】パイナップルダンス・ダンスが踊りのガチさと可愛らしさがあると話題になり、YouTubeとTikTokで再生数&フォロワーを多数獲得! もちろん、普段の体を張ったバラエティー企画も好調!」

「そして、第3位はインクリ科の誇る電脳桃色ツインテガール、ショッキング・トロワ! 7月末開催のバーチャルカーニバルの出演予定も発表され、VTuberとして波に乗っているぅ! 今月は長らくかかっていたマイクラの地下神殿の完成動画が最も再生数を稼いでおり、その他にも直近のゲーム生配信で過去最高の同接2,500人を達成!」

 特にこの2年女子ランキングの上位である3人は、再生数やフォロワー数が他の年代のインクリ科と比較しても群を抜いており、現在のインクリ科を象徴する存在になっている。

 ……などと、長々とインクリ科の始まりと現在を語ってきたが、肝心の語り手である僕――阪梨さかなし礼人れいとはこの3人と何ら関わりがない。
 それどころかインクリ科にすら所属していないのだから、校外の人間にこれを自慢げに話してしまうと、虎の威を借る狐になってしまう。
 だったら普通科の分際で何故インクリ科のことを語ったのかというと……確かに上位3人――いや、その3人を含めたインクリ科の29人とは全く話したこともないけれど、たった1人だけ知り合いがいるからだ。
 その人物とは……

「最後は今月の注目株! インクリ科2年女子ランキング4位で徐々に人気を集めている小豆あずとあだぁ! 今月特に注目を集めたのは【ユニクロ】とあ的夏のトレンドお手頃な組み合わせ【グリーン/ビビット】の動画で、紹介したコーデを同年代の女子中高生が真似したことでプチバズり! 各種SNSのフォロワーも増加中だぁ!」

 このように紹介されているが、僕からするとその内容は彼女の半分の要素でしかない。
 なぜなら僕にとっての彼女はインフルエンサー兼動画投稿者の小豆とあではなく、10年来の幼馴染で同い年の東屋あずまや兎亜とあであるからだ。
 だがしかし、そんな幼馴染との関係が現在も良好かつ順調かと言われると……必ずしもそうとは言えない。

「――礼人~! 今日はこのまま直帰? だったら一緒に帰ろ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...