産賀良助の普変なる日常

ちゃんきぃ

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1年生夏休み

8月25日(水)曇り 明莉との夏休みその4 

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 夏休み36日目。この日は久しぶりに明莉の同級生かつ同じバド部の原田さんが我が家にやって来た。

「りょうちゃん兄さん、久しぶりでーす! お邪魔しまーす」

「だから、ちゆりんが何でそう呼ぶの!」

「減るもんじゃないからいいじゃん? ね、りょうちゃん兄さん」

 呼び方としては微妙な気もするけど、僕は適当に相槌をうっておく。相変わらず明莉を上回る元気さだ。

 それから居間に座った明莉と原田さんは学校指定の鞄から教科書やノートを取り出して、机の上に開き始める。

「あれ? 今日は勉強会?」

「違う。ちゆりんの宿題追い込み」

「追い込みって……時期的に本当に追い込みだ」

「もう、りょうちゃんは邪魔だから自分の部屋行ってて」

 どうやら原田さんは夏休み終盤に宿題をするタイプだったようだ。そうなると、明莉の言う通りだから僕は自分の部屋に行こうとする。

「あっ! ちょっと待ってください、りょ……あか兄さん!」

 しかし、原田さんはそんな僕を呼び止めた。

「できればわからないところを教えて欲しいかなーって。それとついでちょっと手伝ってくれちゃっても嬉しいかなーって」

「ちゆりん、それはダメでしょ」

「えー!? あかちは全部自分でやったの!?」

「当たり前でしょ」

 そう言う明莉は夏休み前に手伝ってと言っていた気がするけど、本番を迎えれば自分で順調に負わせていた。なんやかんや言って明莉も早めに終わらせるタイプなのだ。

「じゃあ、やるしかないかぁ……」

「わからないところで教えられそうだったら教えるけど」

「りょうちゃん!?」

「えっ、いいんですか! お願いしまーす!」

 特に遠慮することなく原田さんが返事をしたので、僕も居座ることにした。僕としては普段明莉がお世話になっている原田さんに感謝を込めたつもりだった。

「ぶー……あかりの時は手伝わなかったのに」

「明莉は一人でもできてたじゃないか」

「りょうちゃんが手伝ってくれるならもっと早く終わってたし」

「そう言われても……別に教えるだけだから」

 でも、明莉の方は少し不機嫌になってしまった。遊びじゃなくて宿題だから別にいいと思ったけど、出しゃばり過ぎだったか。原田さんから頼まれたとはいえ、妹の友達との接し方はなかなか難しい。

 一方、頼んだ原田さんはニヤニヤしていた。

「あかちってば、本当にお兄さんのことになるといつもと違うよね」

「は!? 全然違わないし!」

「またまたー 話す時のテンションっていうか……」

「いつも通りだって! ……なにニヤニヤしてるの、りょうちゃん!?」

 そんなつもりじゃなかったけど、以前と同じく顔に出てしまったらしい。明莉に嫌われていない自信はあるけど、好かれていることは直接伝えられるわけじゃないから他の人の意見は貴重で嬉しいものだ。

「あっ、そういえばあか兄さん。高校での方はどうですか?」

「えっ? 高校?」

「あか兄さんは高校で女友達をジャンジャン作ってるとか」

 その言葉を聞いて明莉の方に目を向けると、今度は明莉がニヤニヤしていた。なんか楽しく話している内容が思っていたのと違う。

「全然そんなことはないよ。風評被害」

「えー? そんなこと言って……彼女とかどうなんです?」

「どうなの、りょうちゃん?」

「…………君たち、勉強しなさい」

 明莉がどんな話をしたかはわからないけど、恐らく噂に尾びれが付いて拡大している。それがバド部に広まっているのだとしたら早急に訂正して貰わねば。

「いやー やっぱりいいなー、兄弟がいると。あたしは一人っ子だから家だとこんな賑やかじゃないし」

「べ、別にいいってほどじゃないけど……」

「けど?」

「まー、退屈はしないかな」

 それは明莉からすれば最上級に褒めてくれていると思う。実際、僕も明莉がいなければ家ではもっと大人しい生活をしていただろう。この夏休みは一緒に何かする機会は少なかったけど、それでも暇な日は喋ったりできるものだ。

「あっ、そういえば、この前行った……」

「ちゆりん(原田さん)、そろそろ宿題やろう」

「わー そこはそっくりー」

 原田さんが普段どういう風に授業を受けたり、勉強したりしているかわかった気がする。だからこそ、今日はこの家に呼ばれて宿題をやらされることになったのだろう。明莉はこれでも真面目な方だ。

 その後、原田さんは僕ら兄妹に見張られながら宿題を進めた。たぶん、夏休み中には終わらせられるだろう。
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