産賀良助の普変なる日常

ちゃんきぃ

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1年生夏休み

8月24日(火)曇り 岸本路子との夏創作その8 

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 夏休み35日目。夏祭りに女の子を一人誘うというミッションは発生する中、僕が最も女の子と会う日でも部活の日がやって来た。いや、今まで部活に来てそんなことを意識したことは一度もないけど、僕が頼れそうなのはこの文芸部ともう一つしかない。

 その中で先輩方に頼むのはかなりハードルが高い。いくら仲良くして貰っているからといって、夏祭り誘うのは距離間の詰め方がおかしいし、例え理由を話したとしても巻き込むのは申し訳なさがある。それに加えて一番厄介なのには誘う必要があるのは一人で十分だということだ。複数人誘ってしまうと、たぶん本田くんが望む形にはならない。

 そうなってくると、僕が誘えそうな相手は文芸部だと一人しかいなくなる。

「き、岸本さん、ちょっといい?」

「どうしたの? 産賀くん?」

 声をかけたけど、次になんと言ったらいいか僕はわからなくなってしまった。この前はLINEで約束をしたから良かっただけで、面と向かって誘うのは凄く緊張する。

「……岸本さんはこの休み中にお祭りとか行った?」

「……! ううん、まだ行ってないわ。わたし、人混みはそんなに得意じゃなくて……」

「そうなんだ。僕も人混みだよ」

「産賀くんもそうなの? 夏祭りの雰囲気自体は嫌いじゃないのだけど、それよりも人の多さが気になって……」

「うんうん。わかる」

 って、同意してどうするんだ。今ので完全に誘えなくなってしまった。ただ、今度の祭りはそれほど規模多くないから人混みも……と一瞬思ったけど、無理に誘うのは良くない。目的を優先する余り気遣いを失うところだった。

「だから、7月にあったお祭りには行けなかったわ。でも、今度の日曜日」

「ん?」

「わたし……花園さんと一緒に行くことになってるの」

「ええっ!?」

「そ、そんなに驚く……?」

「あっ、いや……いいことだと思うよ」

 予想外だった。まさか既に予定が埋まっているとは。でも、花園さんと頻繁に遊ぶ約束をしているのは本当にいいことだ。岸本さんには岸本さんだけの夏の思い出を作って貰おう……と思っていたその時だ。

「……もし良かったら、産賀くんも一緒にどう……?」

「えっ……?」

「今度のお祭りは……そんなに人混みはなさそうだから」

 まさかの展開だ。僕が誘うはずの話が、僕が誘われる話になってしまった。そう言われた時、僕は思わず自分の目的を忘れてしまいそうだった。

「……ううん。今回は花園さんと行くんだから、僕は遠慮しとくよ」

「別に産賀くんがいても問題は……」

「それに僕も別で行く予定ができるかもしれないんだ。そっちはいつも行くメンツだから」

「それなら……仕方ないわ」

「誘ってくれてありがとう、岸本さん」


 でも、僕は断るしかなかった。嬉しい誘いであっても先に誘われた方を優先しなければいけない。

 早速頼れるところが一つなくなってしまったけど、残る一つは……どうなるだろう。
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