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第1章 破滅のミルコ
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帰還門から出た三人をまず出迎えたのはグルツだった。グルツはぎゅっとミルコを抱きしめると、感動したように言った。
「あんたは大した子だよ」
「ありがとう」ミルコは言った。「運が良かった、だけです」
続いてボルモルが駆け寄ってきた。
「凄いですね!あの化け物を倒すなんて」しっぽがあったら全力で振っているような声で、獣人は言った。
「本当にすごいです!」
「いや…」ミルコは言った。「ごめん、矢、ありがとう。回収できなかった」
「いえいえ、大丈夫ですよ。命あってのなんとやらですから」
獣人は頭を下げた。
「ありがとうございます。僕は自由契約探索者のフーガといいます。何かあればいつでも呼んでください」
「わかった、考えおくよ」
「ほんま…さっきは助かったわ」
フーガの後ろから先ほどの女魔導士が歩いてきた。
「怪我は大丈夫ですか」
「大丈夫大丈夫」軽い調子で女は言った。「ほんま助かったわ。ウチは東国のメイリィ・ウォンカ。フーガと組んでんねん。金で雇われて仕事してんねんけど、あんたらやったらいつでも歓迎や!火力やったら任せてな」
「めちゃくちゃ喋るじゃねぇか…」呆れたようにハックが言った。
メイリィは意に介さずスラッシュに向かって、その刀は東のやつやんな、などと話しかけている。うるさそうにしているスラッシュを見ながらミルコは実感していた。
生きてる。
「破滅のミルコ、四度目の生還、ですか」
後ろから声がした。
振り向くと、ボロボロの長衣に眼鏡の男が立っていた。
「ギルドマスター」頭を下げる。
いやいや、とバッシュは手を振った。
「特異点は四度目ですか。偶然とはいえ、大したもんです」
「そのことなんですが」ミルコは疑問をぶつけた。
「今回のことは、特異点とは関係ない気がします」
バッシュが目を細めた。「根拠は?」
「岩蟲が迷宮に出たなんて話、聞いたことないんです。全部の記録に当たったわけじゃもちろんないんですけど、岩蟲が迷宮に出て迷宮を広げるなんて話があれば、もっと噂になってもいい」
フーガも言っていた。岩蟲が迷宮に出るなんて話はない。
「俺もそう思う」横で聞いていたハックが口を挟んだ。
「久しぶりですね、ハック・バック・パック」ギルドマスターが挨拶した。
「山窩のあなたも、そう思いますか」
「ああ」
ハックは何故か、険しい顔でバッシュを睨みつけた。
バッシュ・ザ・ギルドマスターは、ふっと笑って続けた。
「そうすると、あの岩蟲はどういう経緯できたのか、調べる必要がありますね。調査しましょう」ギルドマスターはぽん、と手を打った。
「そうそう、今回の件で報奨金が出ます。後で事務所まで」
「ありがとうございます」ミルコは頭を下げた。
「ところで」バッシュはハックに尋ねた。
「今でも迷宮王にお会いになるつもりですか」
ハックは目を逸らした。
「どうでもいいだろ」
何故か不貞腐れたように答えると、ハックはスラッシュの方へ歩き去った。
「どうですか、パーティーは」
「ええ」ミルコは微笑んだ。「あの二人は、すごいです。私なんかより、ずっと」
「それは違うんじゃないですかねえ?」
ギルドマスターは否定した。
「あなたも充分、すごいと私は思いますけどねえ」
ではまた、と言ってギルドマスターは去っていった。
ミルコは振り返った。
銀髪と黒髪がこっちを待っている。
とりあえず、生き延びてまたここに立っている。
それだけで十分だ、とミルコは思った。
「あんたは大した子だよ」
「ありがとう」ミルコは言った。「運が良かった、だけです」
続いてボルモルが駆け寄ってきた。
「凄いですね!あの化け物を倒すなんて」しっぽがあったら全力で振っているような声で、獣人は言った。
「本当にすごいです!」
「いや…」ミルコは言った。「ごめん、矢、ありがとう。回収できなかった」
「いえいえ、大丈夫ですよ。命あってのなんとやらですから」
獣人は頭を下げた。
「ありがとうございます。僕は自由契約探索者のフーガといいます。何かあればいつでも呼んでください」
「わかった、考えおくよ」
「ほんま…さっきは助かったわ」
フーガの後ろから先ほどの女魔導士が歩いてきた。
「怪我は大丈夫ですか」
「大丈夫大丈夫」軽い調子で女は言った。「ほんま助かったわ。ウチは東国のメイリィ・ウォンカ。フーガと組んでんねん。金で雇われて仕事してんねんけど、あんたらやったらいつでも歓迎や!火力やったら任せてな」
「めちゃくちゃ喋るじゃねぇか…」呆れたようにハックが言った。
メイリィは意に介さずスラッシュに向かって、その刀は東のやつやんな、などと話しかけている。うるさそうにしているスラッシュを見ながらミルコは実感していた。
生きてる。
「破滅のミルコ、四度目の生還、ですか」
後ろから声がした。
振り向くと、ボロボロの長衣に眼鏡の男が立っていた。
「ギルドマスター」頭を下げる。
いやいや、とバッシュは手を振った。
「特異点は四度目ですか。偶然とはいえ、大したもんです」
「そのことなんですが」ミルコは疑問をぶつけた。
「今回のことは、特異点とは関係ない気がします」
バッシュが目を細めた。「根拠は?」
「岩蟲が迷宮に出たなんて話、聞いたことないんです。全部の記録に当たったわけじゃもちろんないんですけど、岩蟲が迷宮に出て迷宮を広げるなんて話があれば、もっと噂になってもいい」
フーガも言っていた。岩蟲が迷宮に出るなんて話はない。
「俺もそう思う」横で聞いていたハックが口を挟んだ。
「久しぶりですね、ハック・バック・パック」ギルドマスターが挨拶した。
「山窩のあなたも、そう思いますか」
「ああ」
ハックは何故か、険しい顔でバッシュを睨みつけた。
バッシュ・ザ・ギルドマスターは、ふっと笑って続けた。
「そうすると、あの岩蟲はどういう経緯できたのか、調べる必要がありますね。調査しましょう」ギルドマスターはぽん、と手を打った。
「そうそう、今回の件で報奨金が出ます。後で事務所まで」
「ありがとうございます」ミルコは頭を下げた。
「ところで」バッシュはハックに尋ねた。
「今でも迷宮王にお会いになるつもりですか」
ハックは目を逸らした。
「どうでもいいだろ」
何故か不貞腐れたように答えると、ハックはスラッシュの方へ歩き去った。
「どうですか、パーティーは」
「ええ」ミルコは微笑んだ。「あの二人は、すごいです。私なんかより、ずっと」
「それは違うんじゃないですかねえ?」
ギルドマスターは否定した。
「あなたも充分、すごいと私は思いますけどねえ」
ではまた、と言ってギルドマスターは去っていった。
ミルコは振り返った。
銀髪と黒髪がこっちを待っている。
とりあえず、生き延びてまたここに立っている。
それだけで十分だ、とミルコは思った。
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