召喚されし帝国

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第1章

来客

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西暦1944年6月16日

新世年1686年同月同日

ローラシア大陸の最西端に位置する場所に存在する王政国家、カロリング王国

この国は、大陸西部に存在する王国であり、基本的に中世~近世までの技術を持つ封建制国家であり、この大陸の国の中では、発展し国土も広い分類にあたる、所謂大国とも言える王国である。

そして幸か不幸か今は分からないが、転送されたドイツおよびその同盟国が支配する、ヨーロッパ東部と国境を接する国となった王国である。

そんなカロリング王国の国内、そして宮廷内は、15日前に突如王国西部辺境、ドイツが支配するヨーロッパと国境を接する地方であるトゥルーズ地方の沿岸地帯に現れた謎の陸地の報告が駆け巡り、若干尾鰭がついた状態ではあったが、突如として現れた謎の大陸もとい、ヨーロッパに関しての噂で持ちきりであった。
 
曰く、謎の陸地が現れてから、今まで見た事がない飛龍が上空に多く現れ始めた。
 
曰く、騎士が纏う鋼鉄の鎧のような金属で覆われた、謎の大型生物が現れた。
 
曰く、見たことのない装備を持った謎の騎士達の姿が、突然現れた陸地の向こうで、大勢確認された
 
などなど他にも多くの噂が流れ、一部では、この世界を滅ぼす魔王の国が現れたのではという噂まで起こっていた。
 
その為、時のカロリング王国国王は、謎の陸地を調査する事を決定し、王国第一王子を団長とした、調査騎士団を問題のカロリング王国領西部のトゥルーズ辺境伯領へと派遣する事とした。
 
カロリング王国西部辺境・トゥルーズ辺境伯領

ドイツ領オストプロイセン首都である、ケーニヒスベルクから、西へ約250kmの距離にある、トゥルーズ辺境伯領と、王国中央部を結ぶ、交通の要として発展した、城砦都市リュニンに、王国から派遣されて来た騎士達が、休息の為、同地に駐屯して居た。

領主邸

「まさか、殿下自らこの様な辺境へと調査に来てい頂けるとは、光栄の極みです」

「なに、父上からの命令故に来ただけに過ぎぬよ」

トゥルーズ地方及び、このリュニンの街を収める辺境伯は、相手が王族という事もあり、少し緊張しながらそう述べ、そんな辺境伯に、プラチナブロンドのショートヘァーに、エメラルドグリーンの目を持つ、高貴な雰囲気の男…ナチス的に言うと、理想のアーリア人的見た目をした、調査団長であるカロリング王国第一王子・フランソワ・ド・オルレアンは、落ち着いた様子で、返すようにそう述べると、辺境伯が勧めて来た葡萄酒を一口、口に含んだ。

「ふむ、良い葡萄酒だな」

「我が領土の西部で作られた葡萄酒です。気に入っていただき、なりよりです」

「西部か…西部と言えば辺境伯、卿に聞きたいのだが」

「なんでしょうか?」

「例の、突如として現れた謎の大地の事だ。噂によると、やれ謎の竜だ、見た事が無い格好をした騎士だのと、まるで御伽噺のようなま、眉唾物の報告ばかり上がっているからな」

辺境伯が述べた西部と言う言葉に、突如として現れた、王国内で謎の陸地と呼称されている、ヨーロッパの事を思い出した。

様々な報告が上がっており、フランソワ自身も、調査団を引き連れ、調査に向かう前には、事前説明として、父である国王直々に、それらの報告を聞いては居るが、どれも御伽噺の様な内容の話ばかりであり、正直フランソワにとって、実際はどうなのかと、疑いしか無かった為、この機会にヨーロッパと程近いこの地域を支配する辺境伯に、実際のところはどうなのかと、フランソワは聞いてみた。

「それなのですが…案外、御伽噺や、尾鰭がついただけの与太話とは言い切れないかも知れません」

「と言うと?」

「三日前、我がリュニンの市内上空に、見た事が無い、新種のワイバーンが、領空侵入した事件がありましてな…」

すると辺境伯は、報告を懐疑的に見て居るフランソワに対して、難しそうな顔をしながらそう言うと、三日前に起こった事を、思い出しながらフランソワにその事を語り出した。

三日前

リュニン上空

雲が少ない、晴れ渡った大空が広がっていた当時、リュニンの日常を少なからず乱すソレは、突如として現れた。

「なんだアレは!?」

「ワイバーン…でも、羽ばたいていない!?」

突如としてリュニン上空に現れた緑色と茶色の迷彩カラーの、金属に包まれた、明らかに生物とは思えないソレ、ドイツ空軍の最新鋭ジェットエンジン搭載型爆撃機、Ar 234の偵察機型であるAr 234C-4を最初に発見したのは、12日前に現れた謎の陸地を警戒し、上空の哨戒行動を行なっていた、リュニン駐留の空中騎士団所属のワイバーンにまたがる、二人の竜騎士であった。
 
「兎に角追うぞ!必要とあらば、撃ち落とす!」

「了解しました!」

先任の竜騎士は、後輩の竜騎士に向かってそう言うと、ワイバーンを操り、Ar 234C-4へと接近を試みた。

一方

「中世の街並みの次は、ドラッヘの登場…まるで御伽噺の様じゃ無いか…」

Ar 234C-4のパイロットである、エーリヒ・ゾマー空軍少尉は、自分が撮影した中世の街並みを思わせるリュニンの街並みに続き、自分の機体を追って来る竜騎士の姿に驚愕し、そう呟いた。

「まぁ、見たところ速度は大した事無いようだ。写真を含めた情報も多く手に入れられた事だし、このまま去らせてもらう!」

そう言うとゾマー少尉はそう述べるとAr 234に搭載されて居る、ドイツの航空機メーカーである、ユンカース社製のターボジェットエンジンである、Jumo 109-004Bエンジン二基の出力を上げ、高度10000メートルまで上昇し、引き上げて行った。

「信じられんなんて速さだ…」

「しかもあの距離…ワイバーンでは、到底到達不可能な領空だぞ…」

そして、目の前でワイバーンでは、飛行する事ができないスピードで、同じくワイバーンでは到達が不能な、高さまで一気に上昇して行った、Ar 234の去って行く姿を、二人の竜騎士は、開いた口が塞がらない様子で、ただ眺めるしか出来なかった。




「…と言う事なのです」

「成る程…」

辺境伯が語った、三日前に起こったこの出来事、Ar 234の領空侵犯事件の全貌を聞いたフランソワは、顎に手を当て、神妙な顔立ちでそう述べた。

「正直に申しますと、私は殿下の事が心配です。あの大陸は、まさに未知の世界…それに現在の国内の状況を鑑みると…」

「私の身が、危険…かね?」

心配そうにそう述べる辺境伯の、言葉を聞いたフランソワは、皮肉そうに告げた。

実は現在、カロリング王国は、フランソワの父、現在のカロリング国王である、シャルル・ド・オルレアン国王が、一年後に次期国王の指名発表、所謂後継者を発表すると明言している。

そのして、次期国王の最有力候補として、第一王子であるフランソワ、そしてフランソワと4歳年が離れている妹の、ジャンヌの二人が次の王位として有力視されており、現在宮廷内では、フランソワが中心の王子派、妹ジャンヌが中心の王女派の、それぞれの派閥に属する貴族達が権力闘争に躍起になっている最中であった。

その為、フランソワ派の有力貴族の一翼を任せられて居る、トゥルーズ辺境伯としては、今回の調査中に紛れて、王女派から放たれた刺客が、フランソワが暗殺されないか心配であった。

「卿気持ちはありがたいが、安心しろ。私とて王族の端くれ、いざと言うときはそれなりの対処が出来るよう己を鍛えて居る。それに、これは父上からの勅命である以上、完璧にこなすつもりだ」

しかし、そんな不安を他所にフランソワは、力強くしかし何処か焦っている様な様子で、そうトゥルーズ辺境伯に述べた。

「そうですか…まぁ、殿下がそうおっしゃると言うのならば、私もお止めしません。今回この街は、殿下と調査団の皆様の護衛の為に、我が領土から、腕の立つ者を集めて警備に当たらせています、どうかご安心して滞在してください」

「世話をかけるな」

そして何かを察したのか、先程の焦りが嘘の様に落ち着いた物言いでそう言ったトゥルーズ辺境伯領に、フランソワは、少し笑いながらそう言った。

その頃
 
ポーランド総督府南部

フランソワ達、調査団がドイツ領と程近いトゥルーズに滞在して居る頃、ポーランド総督府の南部に位置するワンツトの郊外に設けられて居る宮殿であり、現在はウクライナが消えた事により、ポーランド南部から、ハンガリー、ルーマニアにかけての国境線の防衛を担当する、ドイツ軍南方軍集団司令部が置かれて居る、ワンツト城に客人が訪れていた。  

「お久しぶりです、マンシュタイン閣下。」

「ロンメル元帥、一年前のラステンブルクでの会議以来だな。まさか西に居るはずの君と、東の地であるポーランドのさらに東の、この場所で会えるとは思っていなかったぞ」

その客人とは、本来は西方において米英の連合軍から、ドイツの占領下にあるフランスの防衛を任されている、西方総軍麾下のB軍集団司令官であるロンメル元帥、そしてそんなロンメル元帥を迎えてくれた人物は、四日前に予備役から復帰させられ、再び南方軍集団司令官に就任した、ドイツ陸軍最高の頭脳と呼ばれる将官、エーリッヒ・フォン・マンシュタイン陸軍元帥であった。

砂漠の狐の異名を持つロンメル元帥、そしてドイツ軍最高の頭脳と呼ばれるマンシュタイン元帥、ドイツ軍の名将として名高い二人は、一度だけ、1943年7月13日の東プロイセンのラステンブルグにて、ヒトラーも参加した作戦会議にて顔を合わせた事があり、その為二人は互いに握手をしながら、それぞれそう述べた。

「それと申し遅れましたが、それと、予備役からの復帰と、南方軍集団司令官の再就任おめでとうございます」

「総統と党の奴等の意向だ。どうやら彼等は、よほど東ヨーロッパの向こう側に広がる世界が恐ろしいらしい。もっとも、東部戦線に属する各空軍から偵察機を飛ばしている上、明日には、総統閣下の命を受けた第502SS猟兵大隊が、調査を行うとの事だがな」

そして二人は、応接室に備えられて居るソファーに腰をかけると同時に、ロンメル元帥は、マンシュタイン元帥にそう述べ、続けてマンシュタイン元帥は、少し笑いながらそう述べた。

本来マンシュタイン元帥は、1944年3月30日、ヒトラーにより南方軍集団司令官を解任され予備役に入っていたが、突如としてドイツが異世界に転送された事、そしてオストプロイセンからルーマニアにかけての国境線の向こう側の謎の陸地などの、多くの不確定要素からの恐れ、そしてそれに漬け込んだ、ドイツ陸軍上層部の働き掛けにより、しぶしぶではあるが、ヒトラーはマンシュタイン元帥を南方軍集団の司令官に、再度任命する事となった。

「それで、君がここに[ポーランド]来た理由だが…まぁ、大体想像は付く。ヒトラー総統より、近いうちに君が統率して居るB軍集団を、西方から東方へと移動させる…とでも言われたのだろ?」

「ご明察の通りです閣下。今から11日前になります。総統閣下より、近い内に我がB軍集団を、謎の陸地と接して居る東部の防衛力強化の為に、東部へと移動させる事を決めたと言われまして」

ロンメル元帥が何故この場所へと現れたのか、その理由をおおよそ予想をつけていたマンシュタイン元帥はそう言うと、それに対してロンメル元帥は、マンシュタイン元帥の予想した内容を肯定すると、そう述べた。

「成る程、それで配属させる前に、例の大地を一目見ようと…それで来たのかね?」

「えぇ、最も、総統からはポーランドには、パルチザンが少なからず居る為、行くのは止めるようにと言われましたが…」

「それでも、見てみたかったか?兵と共に前線に立つ君らしいな。だがまぁ、今回の超常現象により事実上我がドイツとその同盟国の戦争は終わったと言っても過言ではない。さらには、奴等を支援していた連合国ももう居ない以上、近いうちに彼らが戦えなくなるのは目に見えている。何より…」

「何より?」

「何より今回我々ドイツに起こった超常現象は、別の世界へと飛ばされただけでは無い、今までの戦いで敵の捕虜となった者達も、さらには戦死や謀殺された者達も、大勢我がドイツの制圧地や本国に現れている。その中には、あの男も…国家保安本部の初代長官であるラインハルト・ハイドリヒも居る」

ロンメル元帥の言葉を聞いた、マンシュタイン元帥は、少し笑いながらも、厳し顔をしながらそう述べた。

神の手によって、異世界へとドイツを含めたヨーロッパ諸国が、異世界へと転送された時、それと同時に独ソ戦など1941年から44年の間に死んだ、多くの兵士や将校達も生き返っていた。

そしてその中には、ドイツを厳格な監視国家へと作り替え、ヨーロッパ世界にて強力な諜報網を張り巡らせ、そして何よりナチスの悪行であるユダヤ人を含めた非アーリア民族とされた多くの民族の虐殺作戦、所謂"最終的解決"を提案し主導した男

1942年6月4日、ベーメンメーレン保護領の首都である、プラハにてイギリス政府の支援を受けた、チェコスロバキア亡命政府が送りこんだチェコ人部隊により暗殺された、ナチスの一大警察機関である親衛隊国家保安本部の初代長官ラインハルト・ハイドリヒの姿もあった。

「奴は復活して早々、SS上級大将に昇格した後に、SSの情報網再構築という名目で、国家保安本部の長官職に再度就任し、同時にヨーロッパ各地において、レジスタンスやパルチザンの徹底的かつ容赦ない駆り立てを行なっており、すでに多くの人々が殺されていると言う話を聞く」

「それは…」

「面倒な奴が生き返った物だよ。今奴や奴が指揮するゲシュタポの連中は、レジスタンスやパルチザンに向いているが、いつ我々に奴の目が向くか分からん。ロンメル元帥、君も気をつけたまえ」

「肝に銘じておきます閣下」

ハイドリヒに対して、警戒する様言った、マンシュタイン元帥の忠告を聞いたロンメル元帥は、そう一言述べた。

その後も二人の会談は続き、二人の雑談が終わったのは、それから2時間世間話から、軍事に関する事などを話しあった。

2時間後

「本日は面会していただき、ありがとうございました閣下」

「いや、私も色々と有意義な話が出来てよかった」

執務室から出て来たロンメル元帥と、マンシュタイン元帥の二人は互いにそう述べながら、ロンメル元帥が乗って来た車が止めてある玄関まで、歩いていた。

すると

「そう言えば…」

「何かね?」

「東部戦線において武勇を馳せていた閣下ならとある事をご存知では無いでしょうか?」

「とある事?」

「ユダヤ人についてです。現状、我がドイツを支配するナチ党が、ユダヤ人に対して、迫害政策を行なっている事は、私とて耳にした事がありますが、一体どこまで…」

「元帥、その話は今はしない方が良い」

「何ですと?」

ロンメル元帥は、噂で聞いたユダヤ人に対する迫害政策について、ナチスや親衛隊はどこまでの事をやっているのか気になり、マンシュタイン元帥にそう聞いたが、マンシュタイン元帥は、ロンメル元帥の話を遮り、それ以上言わない様警告した。

すると

「マンシュタイ閣下、それにロンメル閣下!」

偶々、マンシュタイ元帥とロンメル元帥が通りかかった部屋から、茶髪のオールバック風七三分けの髪型に、青い目を持つ、30代前半~見方によっては20代半ば~後半ほどの年齢に見える、ドイツ空軍の将校が現れ、彼は二人の姿を見るなり、敬礼をした。

「ジークマイスター中佐か、此処での仕事は終わった様だね」

「はっ、すでに北方、中央、そして此処南方軍集団で集められた謎の大陸に関する情報の回収作業、そして我が空軍の新型機、Ar 234のデータも回収し終えましたので」

「そうか、それは何よりだな。」

マンシュタイ元帥は、敬礼をして来たその将校、ドイツ空軍参謀本部所属将校である、アルフレート・ジークマイスター中佐に敬礼を返すと、そう述べた。

「ロンメル元帥、彼はアルフレート・ジークマイスター空軍中佐。ドイツ空軍参謀本部に所属する将校だ」

「エルヴィン・ロンメルだ、よろしく中佐」

「アルフレート・ジークマイスターであります閣下。北アフリカ戦線で勇名を馳せた、ロンメル元帥閣下にお会い出来て、大変光栄であります」

マンシュタイン元帥が、ロンメル元帥にジークマイスター少佐を紹介すると、ロンメル元帥はそう述べながら手を差し述べ、対するジークマイスター中佐は、敬礼をするとロンメル元帥にそう述べ、ロンメル元帥の手を握り、二人は握手を交わした。

(それにしても若いな…この年で中佐とは…)

ロンメル元帥はそう思いながら、若き中佐の姿を見廻すと、胸に輝くハーケンクロイツのバッジがロンメル元帥の目に止まり、彼がこの若さにして中佐の階級を付けている意味を理解した。

(ナチ党に所属する空軍将校か…確かにそれならば、この歳で中佐の階級を持つのも頷けるな)

ドイツ軍において、ナチス政権成立前から存在した、海軍と陸軍とは違い、ナチス政権誕生と共に新たに設立され、何よりナチスのNo.2であるヘルマン・ゲーリング国家元帥が総司令官を務めているドイツ空軍は、武装親衛隊に次ぐ、事実上のナチスの私兵組織と言っても過言では無い。

無論、実力が第一ではあるが、それでもナチ党に入党している軍人と言う事は、それだけで能力以上に政治的信頼性と言う意味で、大きな強みになるのだ。

その為、ロンメル元帥は若いジークマイスター中佐の年齢に少し見合わぬ地位の高さに納得したが、同時にある違和感を感じた。

(だが…私の直感だが、彼は他のナチス党員の軍人と、何処かが違う…)

何が違うのか、詳しくは分からないがロンメル元帥は、ジークマイスター中佐が、どこかナチス党員の軍人とは思えない何かを感じ、違和感の正体について少し考え込んだ。

すると

「閣下、どうかなさいましたか?」

流石に、ジークマイスター中佐も、先程から黙って、何か考え込んでいるロンメル元帥が気になりそう言った。

「あっ、いや何でもない中佐。すまなかったな、時間を使わせてしまって」

「いえ、お気にならず」

「そうか。それでは、私はこれからドイツに帰るが、また縁があったら」

「はい、お気をつけてお帰りください閣下。では、ハイル・ヒトラー!」

そしてロンメル元帥はがそう述べると、続いてジークマイスター中佐もそう述べると、最後にナチス式敬礼をして、この場を去って言った。

「ジークマイスター中佐…彼は、ゲーリングのお気に入りの将校の一人らしくてな。未来の空軍大臣と言われるほどの逸材だよ」

すると、横にいたマンシュタイン元帥が、ジークマイスター中佐の経歴を軽く述べた。

「…にしては」

「どうしたのかね?」

「彼は…何処かナチスらしくない…」 

そして、その言葉を聞き、さらに先程の事を思い出していたロンメル元帥は、思わずそう呟いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ローラシア大陸

ドイツ及び、その支配下と影響下にあるヨーロッパ諸国が転送された、魔法やドラゴンなどのファンタジー的な技術や生物が存在するこの世界にいくつか存在する大陸の一つである。

大陸に存在する国は、魔法という独自の技術を除けば、全て中世~近世の技術によって成り立ち、政治制度も昔の封建制や絶対王政による統治を行なっている国が多い大陸である。


今のドイツ及びヨーロッパの状況↑


カロリング王国

首都:ヴェルサンテル


国旗↑
ドイツ及び、ヨーロッパの地が転送された、異世界に存在する大陸の一つである、ローラシア大陸の西部に存在する封建制による国土統治を行なっている、王政国家。

魔法などの、この世界特有の技術力以外は、17~18世紀程の文明を持つこの世界の国家の中でも、大国に分類される程の国であるが、最近ではとある政策により発展を遂げている、ライバルでもある隣国と比べて発展が停滞気味となり始めている。

それにより王国内部では隣国の政策を取り入れるべきであると主張する改革派と、現状を貫きたい保守派との、政治的争いが表面化しており、さらに一年以内に現国王が、王国の未来を引き継ぐ次期国王を指名すると宣言した為、争いは益々激しさを増している。


行政区分↑ 


キャラクター紹介

カロリング王国側

フランソワ・ド・オルレアン

年齢:18

異世界の王国の一つ、カロリング王国第一王子で、時期国王候補の最有力候補として目されている人物。

国王の命により今回、転送されて来たドイツとドイツに支配されたヨーロッパの地への調査団の団長として派遣された。

ドイツ側

アルフレート・ジークマイスター

階級:空軍中佐

南チロル出身のドイツ空軍将校であり、現在はドイツ空軍参謀本部に所属している。

士官学校を首席で卒業し、さらに1930年に、祖国ドイツの復活に微力ながら協力する為にナチ党に入党した為、空軍総司令官のゲーリング国家元帥のお気に入りの将校の一人として、数々のドイツ空軍の航空作戦立案に関わり、ドイツ空軍内で早い急速な出世を遂げた、将来を約束された優秀な将校である。

しかし、ポーランドで偶々出会う事となったロンメル元帥からは、直感的にナチス所属の軍人と少し違う物を感じると評されたが、果たして…

因みに、空軍参謀本部所属の将校にも関わらず、高い射撃の腕前を持っている。


エーリッヒ・フォン・マンシュタイン

階級:陸軍元帥

実在したドイツ軍将校

ドイツ陸軍南方軍集団司令官を務める将帥であり、フランスのアルデンヌの森を戦車部隊で突破し、英仏連合軍の背後を襲い殲滅するフランス侵攻作戦、通称マンシュタインプランの立案で有名を馳せ、東部戦線ではクリミア半島のセヴァストポリ要塞の攻略、第三次ハリコフ攻防戦やクルスクの戦いなど数多くの戦いを指揮し、活躍した、ドイツ陸軍最高の頭脳と称される名将である。

しかし、ヒトラーからは才能こそは高く評価されていたが、信用はされていなかった。

そして、一時的な戦略的撤退を認めず、死守命令を連発して、作戦指導への干渉を行うヒトラーと対立し、1944年3月中に南方軍集団司令官を解任されたが、この小説の世界ではその後、ヒトラーとその他ナチス高官の、異世界の大地に対する恐怖と、それに漬け込んだドイツ陸軍の高官や将軍達の説得により、渋々ではあるがヒトラーの決断により、再び南方軍集団司令官に復帰した。
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