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第3話

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緑が広がる平原、人や馬が通ったと思われる土の道に馬車がカラカラと
走っていた。
「ここまでくれば流石におってこないだろうな」とラグは馬車の隙間から
外を覗く。
「ちくしょーもっとボコボコにしてやればよかったぜぇ」とドンカツは不満を
漏らした。
一方セオーの方は隅っこでもたれかかり外を眺めていた。
何かを考えるもなくただただ眺めてるだけだった。
「…旦那…どこまで行けば金をくれるんですかい?」と馬車を引く男は後ろを
向いて3人に聞いた。
「もう少し行けばくれてやるよ」とセオーは言う。
しかし「⁉︎」と何かに気づいた、平原の奥から茶色の馬がこっちに向かって
走ってきた。
セオーはそれをよく見たら騎士隊の一人であったエレンが乗っているのに
気がついた。
「あれはあの時の…」
その馬はすぐに馬車に近づき馬車を停めた。
「すみません、私は騎士隊のものです、馬車の中を調べさせてください」と
馬車の主の承諾を得て調べた。
しかしあったのは木箱と樽だけだった、
「いない…ありがとうございました」と馬を走らせて去っていった。
その脇の草原にはセオーらが走って逃げていた。
「あのチビ助、ここまでおってくるとは…」そのまま彼らは遠く彼方へと
消えた…
その頃フッドら1隊は街で衛兵らと話していた。
「エレン全く勝手にやつを追うなんて」とルーシーは言う。
「まあそのうち見つかりませんでしたーなんて言って帰ってきたりして」
とふざけながら言うドルッグス。
そんな雑談をしている時に奥の方から身なりのいい男が毛並みのいい馬に乗って
現れた。
「?誰だあの着飾りやろーは?」とドルッグスが言うと
フッドはその方向に気付き、その男の元へ駆け寄った。
「アルフォース公爵様!」とひざま付いた。
公爵は鼻をふんと鳴らして言った。
「フッド、セオーは捕まえたか?」
公爵はドルッグスらを見てさらに言った。
「ふん、全くこんなゲスなやつしか隊に入れられないなんてずいぶん落ちたなぁ」
「何⁉︎ゲスだと‼︎」とドルッグスは怒ったがフッドは「待て」と止めた。
「私の推薦で入れた騎士です実力はあります」
「そんな事はどうでもいいんだよ、やつは捕まえたか聞いているんだ!」
それに対してフッドは答えた。
「すみません…取り逃がしました」と謝った。
すると公爵はふうーっとため息をつき馬の下にいる従者に
「おい、水をよこせ」と命令をした。
従者は相手に気をつけながら丁寧に水の入った水筒を公爵に渡した。
その水をクイット口に含んだ、
そして口の水をフッドに吹きかけた。
「役立たずのカスめ!、ただの“駒らしく”命令を遂行できんのか!」
その様子を見てドルッグスは
「この野郎‼︎、何しやがる‼︎」と飛びかかろうとしたが、
フッドは止まれと
手を差し出しドルッグスを止めた。
「…申し訳ありません、必ず命令を達成します…」と頭を下げる。
公爵はふんっとまた鼻を鳴らし。
「次はこんなのでは済まないぞ、次失敗したら首を落とすぞ‼︎」
そして公爵はひざまずくフッドの横を馬で通り兵を引き連れて街の奥へ行った
「どけ‼︎下民ども、目障りだ‼︎」と前にいる町民たちに怒鳴りつけながら。
「隊長‼︎」と手に持った布でフッドの顔を拭くランクリー。
「なんてやつだ…」とルーシーは怒りを混ぜた言葉を放った。
「フッド‼︎なんで黙ってんだよ、こんなことされてよ‼︎」
と激しく怒ったがフッドはこう答えた。
「これも騎士としてのさだめだ、上のものには絶対服従なのだ」
彼は立ち上がり近くに待機していた自分の馬に乗った。
「何をしている、すぐに捜索をするぞ!」と彼らに命令をし
馬を走らせた。



平原で一人馬を走らせているエレンはセオーらを探していた。
しかし奴らはどこにも見当たらなかった。
空はオレンジに染まりすでに夜が近くなった。
「完全に見失ったかも…」
馬はもうゼエゼエと息が荒くなったいたのでエレンは
馬を撫でた。
「ごめんねずっと走らせて」
そして馬をゆっくり歩かせて辺りを見回した。
すると平原にポツんと一軒の廃墟があった、ツタが絡まり壁にヒビが入った
いかにもボロって感じの家だった。
「今日はもう遅いしここで休むか…見つからなかったら謝って帰ろう…」
とその廃墟でエレンは一休みをした…その時だった、誰かが入ってくる気配を感じ
部屋の隅に隠れた。
「兄貴、今日はここで寝ますか」と聞き覚えのある声が聞こえた。
「そうだな」とセオーが現れた。
「!…セオー…」
探していた人物を見つけた、自分の力で捕まえられるかは置いておいて、
今なら…とゆっくり音を立てずに近づいたが。
「出てこい、今すぐに」とエレンのいる方向へ向かって言った。
その言葉に従いエレンは素直に出てきた。
「なんでわかったんだ」と聞くと。
「ゆっくり音を立てずに近づいたと思っているだろうが、
気配が消えてないんだよ」
自分で思って完璧に音を消したと思ったがまさかバレるなんて…
エレンの表情はううっとした表情になっていた。
「というか外に馬がいたからすぐにわかったんだよ」
それにはああそうかっとエレンは思った。
「そんなことより、セオー!大人しく投降しろ!」
エレンは彼らに言い放った。
「何ぃ、お前みたいなチビ助に何ができるんだぁ!」
「待てドンカツ、」とセオーは止めるように手を出した。
「お前ここまで追ってくるなら、覚悟ってものは
あるのか?」
刀を少し鞘から出して威圧するようにセオーはエレンに言った。
その雰囲気に少しビクッとなりながらもエレンは勇気を出した。
「あるよ‼︎、ここで真剣勝負をしてでも捕まえて見せるよ‼︎」
エレンの目には迷いはなかった、そうセオーには見えた途端
彼はこう言った。
「表へでな」
その言葉に従いエレンは外へ出た。
廃墟前で2人向かいあった、するとセオーはエレンに対して
少し頭を下げ礼をした、それに少し驚きながらもエレンも
真似するように礼をした。
そしてエレンは剣を取り出した。
先に剣を放ったのはエレンだった、しかしセオーは刀でそれを受け止めて
エレンを振り払った、ズザーと足を踏ん張って再びエレンは剣を真上から
振り下ろした。
しかしセオーはひらりとかわした。
その瞬間に居合い抜きが彼に飛んできた、しかしそれをすぐさまに剣で
受け止めた。
だが勢いは体で受け止めきれずそのままふっとんでいった。
「兄貴!すごいぜ!」とワーっと歓声を上げる弟分2人。
セオーが刀を鞘に収めようとした時だった、シュバンっとエレンは
飛びかかった、ハッとすぐさま刀を掲げガードしたが脇腹にエレンの剣の“みね”
が入った。
「…こいつ!」
すぐさま鞘に収めた刀をエレンの頭に振り上げた、エレンはその場に倒れた。
セオー自身も脇腹の一撃がきいたのかその場で足をおった。
「兄貴!大丈夫ですかい!」と弟分が駆け寄ってきた。
「すぐに行くぞ、余計な事に時間かけすぎた」
そしてそのまま立ち去ろうとしたがセオーは倒れているエレンに目をやった…。
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