よわむしエレンの物語 水の魔剣士

ハルキ4×3

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その4

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あの事件が起きて朝となった。
騎士学校の医務室の窓際のベットで2人は寝ていた。
無機質の木の天井を眺めながらドルッグスは話した。
「おいルーシー、フッドは水の魔剣士を倒せたのか?」
ルーシーもまた天井に顔を向けて話す。
「まだって先生が話していた」
そのまま顔を向けながらドルッグスはさらに話した。
「だろうな…実際思っていたのと会ってみるのが全然違うって
あの時思ったよ」
「今回の事はあんたのせいだからね」
少しだけ沈黙の間があったがルーシーはさらに口を開く。
「エレン大丈夫かな…」
「怪我一つなかったから平気だよ」
「そうじゃない、あの子私らが大怪我負ったの
責任を感じてるのかもしれないってこと」
しかし鼻でふんっとして寝返りをうつドルッグス、それ以降は何も
2人は話さなかった。
その頃外の中庭はワイワイと声が聞こえた、それとは別に中庭の端っこで
本を読むエレンがいた。
まだ前のことを引きずっているのか、表情は暗く元気はなかった。
その事を知らずか隣の生徒は楽しく話していた。
「まだ自由に外へ出れなくておっくうだよね」
そこから、彼らは水の魔剣士の話に変わった。
「先生達はまだその“水の魔剣士”を倒せてないって」
「騎士達の被害もたくさん出たとか」
その話を聞きながらも本を読むエレン、すると隣の生徒はある事を話した。
「ああそうだ、これね先生達の“噂話”なんだけど」
「え?何?」
と興味を持って聞こうとするもう1人、その“噂話”とやらを聞いた生徒はこう言った。
「この国のお姫様が城を出たという事は知ってるでしょ」
ん?とエレンはその話の方に顔を向けた。
「そのお姫様はこの辺にいるとか」
「ええー!、今は水の魔剣士がいるのに⁉︎」
すると続けて言った生徒の言葉に、エレンは一瞬だけ驚いた。
「でぇそのお姫様は“ルリラ・ルン”と名乗っているらしい」
この名前は聞いたことがある名前だった…、確かあの時の子だ…
エレンはすぐにあるところへ向かった。
彼はフッドの部屋をノックもせずにドアを開けて入った、そして一言彼に言った。
「フッド先生‼︎」
机で座っているフッドは少し顔を上げた。
「我が国の姫君が水の魔剣士のいる地域におられるっと言うのは本当ですか?」
しかしフッドはペンを置き彼に言った。
「それを聞いてどうする?昨日の事を忘れたか?」
エレンはしばらく黙り、弱々しく口を開いた。
「…いいえ、すみませんでした…」彼は静かに部屋を出た。
エレンが遠くへ行った事を確認した後、フッドは再びペンを持ち書類を書いた。
ただトボトボと歩くエレンは思った。
今すぐにでもルリラを助けに行かないと…でも自分にはあの“水の魔剣士”を
倒すことはできない…その上また先生たちに迷惑はかけられない…
悩む彼に後ろから「おい」っと誰かが声をかけた。
あの大柄な体格はドルッグスだ。
「ドルッグス‼︎体は大丈夫なの⁉︎」と心配すると
「あー、ずっと寝てるのも退屈だしな」と言った。
するとエレンは少し困りながらも笑って
「あ…うん、無理しちゃダメだよ…」
と言って彼とすれ違いに後ろへ歩いて行った。
何かを勘付いたのかドルッグスは振り返らずに言った。
「いちいち気にするんじゃねえ!」
その言葉にピタッと立ち止まるエレン、さらに続けてドルッグスは言う。
「今回の事は俺が全部悪いがお前は無事だった、それでいいだろ」
それでも何かに悩むように黙るエレン、その事も彼は察しているように声をかけた。
「行ってこいよ、気になることがあるんだったら、自分でどうにかしな」
それに返事はせずにエレンは走って自室へと向かった。
「…これでまた、なんか言われるだろうなルーシーに…」と医務室に戻って行った。
夕暮れ時、ベットで座り考え込んでいたエレンは、何かを決めたように立てかけてた
剣を腰に下げ。
窓から布で作ったロープを垂らして校舎を出た。
彼女はどこへ行ったのかは考えてる暇はない、すぐにでもルリラのもとへ行かなくてはと
夕闇で暗い森に入り走って向かった。
「ルリラ…無事でいて…」
あの時に訪れた町から少し隣の町の一軒の家に彼女はいた。
そこの家主に一泊と頼み込んでいるところだったが。
「悪いが、知らない人間を簡単には泊められないよ」
とすぐに扉を閉めていった。
彼女は頭を下げて次の家へと頼みにいった。
「早く一泊先を見つけないと…」
と焦る彼女の前に何者かの影が現れた。
「誰かしら…?」とよく目を凝らすがよく見えない。
その影は少しずつこっちへ近づいていき、少しだけ何かわかった。
それは鎧を着た騎士に見えた、彼女は疑問に思った、なぜ騎士がいるのか…
それがなんなのかわかった時はすでに目の前だった。
「‼︎…あ…あなたは…‼︎」
水の魔剣士アクアレイス。
やつは手に持った剣に水の刃を纏い、ガチャガチャと音をたてこっちに近づいてきた。
ルリラは後ずさりをするものの恐怖で足が思うように動かない。
奴がばっと剣を振りかざした…その瞬間だった。
エレンが彼女を抱き剣をかわした。
ずさっと転がり立ち上がる2人。
「ルリラ…いえ、姫様…」
「あなたは…どうして…⁉︎」
エレンは彼女の手を握り言った。
「今は僕についてきてください‼︎さあ‼︎」
走って逃げ出す2人、それをただじっと見つめている水の魔剣士はふいっと消えた。
森の中を振り返りもせずただ走る2人、エレンは少し後ろを見て追ってきていない事を
確認し、立ち止まった。
「もう追ってこない…」
ハアハアと息を切らし、エレンは言った。
「姫、これから僕の騎士学校へ向かいます、そこなら…」
しかしルリラは
「エレン…だっけ?…大丈夫よ私はそこまでしてもらわなくても…」
「え⁉︎」と驚くエレン。
「水の魔剣士は私たちを殺せる余裕があるからここまで逃したのよ…
すぐにでもやってくる…」と険しい表情になるルリラ、続けて彼女は言った。
「元々、王宮の堅苦しい暮らしが嫌で抜け出したけど…こんな事になってたなんて…」
「姫…」
「大丈夫!私は足には自信があるから」
とニコッと笑う彼女を見てエレンは心にある事を決め、彼女の前でひざまずきこう言った。
「お願いです…今日だけでいい、僕をあなたを守る騎士にしてください」
ルリラはその“誓い”にただ黙って見つめていた。私のための騎士になると彼は言った
それに対して答えるまもなく、やつの足音が近づいてきた。
「こっちです‼︎」と彼女の手を引き走り始めた。
水の魔剣士はどこまでも追ってきた、エレンとルリラは追いつかれないように
逃げた。
やがて2人は奇妙な場所へと出た。
そこは大きな屋敷の瓦礫だらけの場所だった。
「ここは…?」
「…確かここには王家に仕える…‼︎」とルリラは何かを見つけ指差した。
瓦礫の上に満月を背を向けたアクアレイスがいた。
やつの周りは円を描くように水が浮かんでいた。
「もう、すでに先回りしていたんだ…」
あの時の恐怖がエレンの中で蘇った、足はすぐに地面に落ちそうになった、しかし
横で震えているルリラを見て、エレンはグッと心の恐怖を抑えこみ覚悟を決め
剣を抜いた。
「姫…どうか安全な場所へ行ってください…僕が守る‼︎」
水の魔剣士はすかさずに剣を振り下ろした、しかしエレンはそれをかわした。
しかしやつの周りにあった水が槍となってエレンに飛んできた。
今度はエレンはそれを剣で防いだ。
隙を与えずに水の魔剣士は水の刃を彼に飛ばした、扇状に真っ直ぐ飛ぶそれを
ジャンプでかわし、手を持った剣を縦一直線に振り落としたが、
それを片手の“水の盾”で止め、そのままエレンをそこの瓦礫に叩きつけた。
そのまま立ち上がったエレンに水の槍を彼に目掛けて飛ばした。
それはエレンの頭をかすった、致命傷ではないが流血の量からかなりの傷を負った。
しかし彼は足をすぐにおこし、そのまま水の魔剣士を切りつけたが、やつの鎧は
何も受け付けなかった。
そしてやつは剣を突き上げた、それをエレンは剣で防ぐが勢いに負けて後ろへ後ずさりした。
ただ見守ることしかできないルリラはエレンの勝利を祈っていた。
その姿を見たエレンは再び奴に剣を振った。
しかし水の盾はそれを防ぎ、さらにエレンを剣ごと後ろへ投げつけた。
エレンはすぐに立ち上がって奴に一撃を喰らわしたがやはり無傷。
水の魔剣士はすぐに剣に水の刃を纏った、その一瞬の隙にエレンはその小さな剣を
やつの兜に突き上げた。
そしてそれは後ろへと飛んでゆき、水の魔剣士は片膝をついた。
顔を上げたやつの顔を見た2人は戦慄をした…
口は大きく裂け歯は牙の如く鋭く目は獣のようになった顔を見て…。
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