よわむしエレンの物語 水の魔剣士

その5

ある者がいた、その者の生まれは王家に仕える名家の一族だった。
しかし彼の母親は敵対する一族の者であった為
名家の長によって母親は殺され、父は追放。
そして幼かった自身も川へと投げ捨てられた。
だが彼は“生き延びた”、幸運にも孤児として拾われ、
やがて彼は地を這いつくばる気持ちで、王家に仕える名騎士にまで
登り詰めた、名は“アクアレイス”
騎士としては位の高い地位になった彼はその立場に満足はせずに
“力”を求めた、王家そしてこの国を守るためのさらなる力を探した。
どこから知ったのかわからないが彼はその“力”を得られる場所へ訪れた。
小さな小屋のようなみすぼらしい家に一人の老人がその力を得る方法を
彼に教えた。
「それはある…ただの人間が死に物狂いの努力をしても得ることの出来ない
力は…」老人はそう答えた。
「ならばすぐにくれ‼︎金はいくらでもある‼︎」とアクアレイスは答えた。
しかし老人は不適な笑みを浮かべて彼に言った。
「この力は金で買える物ではない…お前の“持ってる物”を捧げるのだ…
ある者は目の光…ある者は自由に歩ける足を…」
それに対して彼は笑みを浮かべてこう言った。
「いいだろう！守る盾になるならば我が心を捧げよう！
俺は“人間としての心”を捧げる‼︎」
「では取引成立だ…」
と老人は本に描かれた謎の魔法陣を彼の手に置いた…



目の前の大きな岩は最も簡単に二つに切った。人を遥かに超えた力を得た彼にとっては山の如く大きな岩は
なんてこともなかった。
これを得られたアクアレイスは満足げに笑い剣を鞘に収めた。



ある夜だった、叫び声と断末魔が屋敷に響いた。
そこには大量の老若男女の切り刻まれた死体が転がり、あたりは血で染まっていた。
大広間にはその一族の長とされる老人と鎧の騎士がいた。
一族の長は怯えながら壁に背を向けて震えて言った。
「み…水の騎士…何の真似だ…こ…国王陛下がこんな事…許さぬぞ…」
血に塗れたアクアレイスは剣に水の刃を纏わせ
有無を言わさず長を切り捨てた。
その瞬間、アクアレイスの目は鬼が宿っているようだった。
全てを殺し尽くした彼は姿を消した。
国王はそのことに怒り、玉座の取手に大きな拳を落とした。
「まだか⁉︎、ロギュス家皆殺しの犯人は見つからないのか‼︎」
激怒をしている国王の前でひざまずく火の騎士“フランルード”は彼に意見を言った
「陛下、現在犯人は我々騎士隊で捜索しております、なので…」
「とにかく‼︎、生死かかわらずに今すぐに犯人を探せ‼︎」
フランルードは頭を下げた。
その夜、王宮の外は雨が降った、王の城へ続く道をアクアレイスが歩いていた。
王の城の前門には一人の騎士が立っていた、フランルードだ。
彼は目の前のアクアレイスに呼びかけた。
「アクアレイス…剣を置いて俺と共にこい！」
何も返してこない彼にさらに言った。
「何とか言うんだ‼︎、来ないなら力ずくでも…」と斧を構えたがすでに攻撃は始まっていた。
フランルードの体を水の槍が貫いた。
「⁉︎…この力は…本当だったのか…」
そしてアクアレイスは剣に水の刃を纏い彼を切りつけた。
深く長い傷を負いフランルードは倒れた。
ただ死にゆく彼をアクアレイスは眺めた。
「…俺は…お前を…信じ…」
雨は激しく降り注いだ。