贖罪の救世主

水野アヤト

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第20.5話 みんな愉快な?ヴァスティナ帝国

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 数日後。

「おい槍女」
「何だ?」

 ヴァスティナ城内の廊下を歩いていたレイナは、突然後ろからクリスに呼び止められた。
 右手に小さな紙袋を持って、彼女を呼び止めたクリスは、その紙袋を差し出した。

「お前にやる」

 突然小さな紙袋を手渡され、少々困惑気味のレイナではあるが、丁寧に紐で封をされていた紙袋を開き、中身を見て驚愕する。
 紙袋の中身はクッキーであった。このクッキーは城下のとある店で売られている、彼女のお気に入りである。

「・・・・・・・熱でもあるのか?」
「ねえよ。この前の詫びだ」

 この前とは、勿論洋館調査の事を差す。
 洋館から帰還し、目を覚ましたクリスは、リックから自分が気絶した後の事を聞いている。気絶した自分を運び出したのが、犬猿の仲の彼女である事も含めてだ。
 
「貴様も、ようやく礼儀というものを知ったのだな」
「うるせえ、俺は最初から礼儀なんざ身に付けてんだよ。・・・・・・まああれだ、俺は借りを作らねぇ主義なんだよ。だからとっとけ」
「・・・・・・・わかった、受け取っておく」

 彼女がそう答えて、二人はその場を後にする。
 お互いが別々の方向を目指して歩いていく。しかし、歩いている途中でレイナが立ち止まり、クリスの背中へと振り返った。

「おい、破廉恥剣士」
「ああん?」
「・・・・・・いや、何でもない」
「用もねぇのに呼び止めんな。俺だって忙しんだよ」

 その場を去っていくクリス。彼を呼び止めたレイナは、振り返って歩みを再開する。
 この場を去りゆきながら、彼女は自分が言おうとした言葉を思い返す。

(感謝の言葉など・・・・・・私達には不要だな)





 帝国参謀長の右腕、槍士レイナ。帝国参謀長の左腕、剣士クリス。
 二人は犬猿の仲であり、それは誰もが知っている。とにかく二人は仲が悪く、一度喧嘩すると中々収拾がつかない。
 そんな二人だからこそ、お互いをよく理解している。
 それがこの二人、参謀長配下の帝国軍最強戦士、レイナ・ミカヅキとクリスティアーノ・レッドフォードであるのだ。


~終~
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