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249話 - 知識
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『知恵……?』
「知恵、もしくは知識かのぉ。我はお主らの役に立ちたいのじゃ……」
『ここに来る前にも言ったけど、家族としておばあちゃんと過ごしたいから誘ったんだよ?役に立つとか立たないとか……』
「あぁ、いや。それは重々承知しておるのじゃ。ただ、我の本質的な部分なんじゃよ……。我の事を大切に思ってくれているのがわかるから尚の事役に立ちたいと思うんじゃ。以前みたいにお主らの役に立てんから居る意味がない、とまでは思わん。ただ、やはり力になりたいと思うんじゃよ」
僕にもそう言った気持ちはある。
エステルの集落を助けたことだって、100%ハイエルフの為かと言われるとそうじゃないもん。
僕は正義のヒーローじゃないんだ。
エステルに笑って欲しかったからやった。
それだけだもん。
『まぁ言いたいことは理解できるよ?ただ、充分力になってもらってるけどなぁ。逆になんでそんなに力になれてないと思うの?』
「まず、我は戦闘では役に立たん」
『その”まず”、が全然理解できん。超頼りにしてるけど……』
「……うん。いつも傷を治してもらってる」
おばあちゃんって自分のトレーニング以外の時は基本僕と反対の行動をするんだよね。
絶対に回復要因が皆のところに回るように動いてるんだよ。
「そうできるように意識はしておるのじゃ。ただ、クロムとクラムがおればなんとかなる事が多いじゃろ?それに、お主らが訓練で負う傷程度、異次元倉庫にいれている治癒の魔石で事足りるのじゃ」
『その魔石も最近はおばあちゃんが作ってくれてるけどね?』
「クロムでもクラムでも作れるじゃろ?」
『いや、まぁそりゃそうなんだけど……』
うーん。
みんな基本怪我が無いように立ち回ってるからなぁ。
死ぬ可能性があったのなんてダンジョン進行を進めているときくらいだ。
進行してないのに大ダメージを受ける確率のある特訓はさすがにしないよ。
……僕は自爆ダメージ訓練やってるけどさ。
というか最近擦り傷すらお互いの組手する時にしか負わないレベルだもん……。
訓練にならなくてクラムの結界切ってやってるよ……。
「もう少し早く一緒に来ればよかったのじゃ……。我が変な意地を張っておったばかりに役に立てる機会を逃してしまったのじゃ。空中階層や溶岩階層で一緒に進行できればよかったんじゃが……」(ショボーン)
『あぁ、まぁ……それは……』
70、80階層とかおばあちゃんが居ればめちゃくちゃ楽だったかも……。
ってか正直、多分余裕だったな。
『でも、おりょーりとか、おうちたてたりするのもてつだってもらってるよ~?クラムいっぱいてつだってもらってる~!』
そうだそうだ!
戦闘が全てじゃないよ!
おばあちゃんが地魔法覚えたのだってクラムの為なんだ。
クラムがいろいろ建築しているときに周りの整備とか細々した事をおばあちゃんがしてくれてるんだもん。
それに近頃家ですごく料理作ったり裁縫したりしてるんだ。
実はおばあちゃんって料理や細工や裁縫みたいな制作系のスキル軒並み覚えてるんだからね!?
「でも、それも本来クラムだけでもできるじゃろ?」
『そうだけど~』
「そうじゃろ~?我が皆の力になっているとは思えんのじゃ……」ウジウジ……
『本当にそんなことないんだけどなぁ。サポートってすごくありがたいんだよ?』
サポーターってみんな出来ることじゃないと思うよ?
僕だってこんな能力持ってなかったらサポーターに徹したい性格だもん。
チームを支えるってすごく大切なことじゃん……
僕はそれがやりがいになるタイプなんだけど……
「それはそう思うのじゃ。じゃがのぉ……それが1番もどかしいのじゃ……」
『あら?サポーターが嫌なんじゃないの?』
「違うのじゃ。何と言えばよいかのぉ……。もちろん目立ちたいとかそういったことではないぞ?我はお主らを支えるのは好きでやっておるのじゃ。ただのぉ……」
サポートがもどかしい?
目立った活躍ができないってことが悩みなんじゃないのか……。
僕の想像と違った……。
「そういえば、おばあ様は近頃王都の本屋や図書館に行っているのですよ?この前図書館で見かけました。とても真剣な顔をしていたので声はかけなかったのですが……」
『読書が趣味になったの?』
「いえ、それが、おばあ様が読んでいる本は料理本や街づくりに役立ちそうな本ばかりなんですよ……」
「見ておったのか……。なにかできることが無いかと思って頻繁に図書館に通っておったのじゃ……。本屋や図書館は静かじゃし人見知りも考えんでよいからのぉ」
「あまり人気はないですよねぇ。獣人国の方々はあまり本を読む文化はないのでしょうか……」
そうだったんだ……。
みんなの自由時間まで全て把握してるわけじゃないからなぁ。
確かにおばあちゃんって自由時間になるとよく出かけるよなぁ。
村の中を色々見回ってるのかと思ってた。
「ただのぉ、色々見てみたのじゃが、対して役立つ本がないのじゃ。見なくともわかる情報や村のものに聞けばわかる程度のもの。あとは娯楽品しかないのぉ。裁縫や料理、建築に関してもクロムやクラムから聞く情報以上のものは見当たらぬ……」
「そうなのですか……。私は娯楽目的だったので、参考書のようなものはあまり見たことがなかったです……」
『ちぇ~。たくさん本よんでるんだったら、おりょーりおしえてもらおうとおもったんだけどな~』
「そうじゃろ?我も世界の料理を知ることができればクラムに教えてやれると思ったのじゃが……。それだけではないぞ?戦闘技術なども一応調べてみようと思ったのじゃ。医療の心得などもあればよいと思った。……じゃが戦闘技術の系統はクラマやキャシーに聞く以上の知識が得られるようなものはないし、医療に関しては論外じゃ。クロムの前世以上の知識はそもそもこの世界には存在せぬしのぉ」
「……ぼくの技術なんかじぃじに比べたらまだまだ。この程度……」
僕の知識にしても前世でネットサーフィンして覚えている程度のもんだぞ……。
前世の人なら、調べたことがあればみんな知ってるレベルの事だよ……。
「そんなことはないぞぇ?じゃが、我が知識としてでも戦闘技術を知っていればクラマに伝えてやることもできたのじゃ……」
「……それはうれしい。ぼく、本読むの苦手」
「そうじゃろ?じゃから我は知識担当になりたかったのじゃ。我は読書も好きじゃからのぉ」
『そんなに色々してくれてたんだ……。気付かなくてごめんね……』
「違うのじゃ!これは我の趣味なのじゃ!婆が孫と遊ぶのが楽しいのは普通じゃろ?我にとってこれがお主らとの遊びなんじゃ」
『まぁそう言われれば……。僕が家族のみんなに魔法を教えて楽しんでるのと同じでしょ?』
「うむ、そうなのじゃ!じゃから全く気にせんでええんじゃ!……じゃがのぉ。本屋にすら何の情報もないとは……。我が自然界で生きておる方が情報が集まるくらいじゃ……」
それならいいけど……。
でも、本屋にそこまで情報が何もないってどうなってんだ……。
「それに王から借りた歴史書等の書物。あれもおかしい。我はこれでも長らく生きておるのじゃ。都合が合わん歴史や書物によって矛盾しておることが多数ありすぎるぞ……。大陸に存在しておらんような国まであるんじゃぞ?飛び回っておっただけの我でもわかる……。あれらはきっと本来の歴史ではない。都合よく捻じ曲げられておる気がするのじゃが……」
それは逆におばあちゃんにしか気付けないことだ……。
1万年とか生きてたらそりゃわかるよな。
昔そんなとこに家なかったけど!?
って言うのが国のスケールであるってことでしょ?
やばすぎるだろ……。
あ!!
『わかった。ソフィア様が言ってたんだ。この世界の人は情報を秘匿する傾向にあるんだって。料理でも建築でも何でも、飯のタネや自分の利、地位やお金に代わりそうな事は多分書物に記してないんだよ。書いてあるのは娯楽系統か、くだらない情報ばっかなんだと思う。歴史は抹消されているとも言ってた。国に都合の良いことしか書いてないって』
「やはりそうじゃったのか……。思った通りじゃ。まだ我がノアと暮らしておった時の書物の方が知識が得られるほどじゃぞ……。ではいったい何のために本が存在するんじゃろうのぉ……」
ノアさんって確かおばあちゃんの古い友人だよね。
1万年くらい経ってるのに劣化してる情報って……。
ソフィア様から聞いたこと間近に感じるとこの世界本当にやばいな……。
『正直エステルが好きな作り話や自伝みたいな物語以外に読む価値のある本はないかもしれないなぁ』
「えぇ。それを聞くと私も参考書の類のものは読みたくなくなりましたね……。参考にならない参考書や歴史を捻じ曲げられた歴史書を読んでも間違った知識が入ってくるだけです。他の皆の魔法のように……」
うん、デメリットにしかならん。
間違った常識を植え付けられるだけだ。
『うそつきなんだね~!クラムも本いらない~!パパにきく~!』
「……うん。勉強嫌い。でも、まだパパに教えてもらうほうがわかりやすい」
「それを我が補助したかったんじゃがのぉ……。クロムしか知らぬ知識が多すぎるんじゃ……」
『まぁそれは仕方ないところはあるけどね。僕は違う世界から来たんだもん。気持ちは受け取るよ。ありがとう』
それにしてもこの世界の書物って最悪だな……。
きっとそんなだからこの世界って製紙技術が進んでないんだ……。
綺麗な紙じゃなかったけど、紙はあることはあるんだよ?
でも紙1枚100円だよ!?やばいよね。
書物あってもなくてもいいんだもん。
その程度の情報しか書かれていない、と……。
主に商売人が売り上げや商品を書き留めるくらいにしか使わないんだ。
だから対して紙の製造がされていないんだ。
一応僕等が主に拠点にしてるところって王都なんだよ?
それでこれだもん。
本が沢山あるように感じてた。
それって王都だから世界中の本が集まってきてるだけなんだよ。
他の街で図書館なんか見たことなかったもん。
本って本来知識を広めるために作るもんでしょ?
高いお金払って娯楽に本を購入する人なんてごくわずかしかいないよ……。
「おばあ様は、それで知恵が欲しい、と……」
「そうなのじゃ。知恵、もしくは知識じゃのぉ。知ることが出来れば、お主らの知らないことを教えてやることもできるじゃろ?気になったことは村のものに聞くようにはしておるのじゃがのぉ。これほど情報を知る事ができぬことをもどかしいと思ったことはないんじゃ。はぁ……」
僕の知識ってネットで調べてただけなんだもん。
知らないことは検索するって癖がついてたから人よりはうんちくの量は多いかもしれない。
でも何でも覚えてるわけじゃないんだ。
例えば、前に言ったことあるけど僕毛染めの染料の作り方とかしらないよ?
ビールだって結局作れなかった。
やってみたけど結局よくわかんなかったんだよね……
適当に買った麦っぽい植物が適してなかったのか作り方が悪かったのか……
まぁいいんだけどね。
今果実酒の方が好きだし。
『僕がわかることなら伝えるけどねぇ。僕もこの世界の人よりわかる事は多くても何でもわかるわけじゃないからなぁ。僕が調べた経験がないことまで知らないよ……』
「それは当たり前じゃ。それに、そうなると結果的にクロムの手を煩わせるだけじゃろ?自分で調べられるのがよかったのじゃが……。無理そうじゃのぉ……」
おばあちゃんが知恵が欲しいって言ったのはそういうことか。
この世界では情報を調べることすらできない……。
それは確かに、サポーターしてるなら尚の事もどかしくなるかも。
サポーターって情報命なところあるもんなぁ。
「知恵、もしくは知識かのぉ。我はお主らの役に立ちたいのじゃ……」
『ここに来る前にも言ったけど、家族としておばあちゃんと過ごしたいから誘ったんだよ?役に立つとか立たないとか……』
「あぁ、いや。それは重々承知しておるのじゃ。ただ、我の本質的な部分なんじゃよ……。我の事を大切に思ってくれているのがわかるから尚の事役に立ちたいと思うんじゃ。以前みたいにお主らの役に立てんから居る意味がない、とまでは思わん。ただ、やはり力になりたいと思うんじゃよ」
僕にもそう言った気持ちはある。
エステルの集落を助けたことだって、100%ハイエルフの為かと言われるとそうじゃないもん。
僕は正義のヒーローじゃないんだ。
エステルに笑って欲しかったからやった。
それだけだもん。
『まぁ言いたいことは理解できるよ?ただ、充分力になってもらってるけどなぁ。逆になんでそんなに力になれてないと思うの?』
「まず、我は戦闘では役に立たん」
『その”まず”、が全然理解できん。超頼りにしてるけど……』
「……うん。いつも傷を治してもらってる」
おばあちゃんって自分のトレーニング以外の時は基本僕と反対の行動をするんだよね。
絶対に回復要因が皆のところに回るように動いてるんだよ。
「そうできるように意識はしておるのじゃ。ただ、クロムとクラムがおればなんとかなる事が多いじゃろ?それに、お主らが訓練で負う傷程度、異次元倉庫にいれている治癒の魔石で事足りるのじゃ」
『その魔石も最近はおばあちゃんが作ってくれてるけどね?』
「クロムでもクラムでも作れるじゃろ?」
『いや、まぁそりゃそうなんだけど……』
うーん。
みんな基本怪我が無いように立ち回ってるからなぁ。
死ぬ可能性があったのなんてダンジョン進行を進めているときくらいだ。
進行してないのに大ダメージを受ける確率のある特訓はさすがにしないよ。
……僕は自爆ダメージ訓練やってるけどさ。
というか最近擦り傷すらお互いの組手する時にしか負わないレベルだもん……。
訓練にならなくてクラムの結界切ってやってるよ……。
「もう少し早く一緒に来ればよかったのじゃ……。我が変な意地を張っておったばかりに役に立てる機会を逃してしまったのじゃ。空中階層や溶岩階層で一緒に進行できればよかったんじゃが……」(ショボーン)
『あぁ、まぁ……それは……』
70、80階層とかおばあちゃんが居ればめちゃくちゃ楽だったかも……。
ってか正直、多分余裕だったな。
『でも、おりょーりとか、おうちたてたりするのもてつだってもらってるよ~?クラムいっぱいてつだってもらってる~!』
そうだそうだ!
戦闘が全てじゃないよ!
おばあちゃんが地魔法覚えたのだってクラムの為なんだ。
クラムがいろいろ建築しているときに周りの整備とか細々した事をおばあちゃんがしてくれてるんだもん。
それに近頃家ですごく料理作ったり裁縫したりしてるんだ。
実はおばあちゃんって料理や細工や裁縫みたいな制作系のスキル軒並み覚えてるんだからね!?
「でも、それも本来クラムだけでもできるじゃろ?」
『そうだけど~』
「そうじゃろ~?我が皆の力になっているとは思えんのじゃ……」ウジウジ……
『本当にそんなことないんだけどなぁ。サポートってすごくありがたいんだよ?』
サポーターってみんな出来ることじゃないと思うよ?
僕だってこんな能力持ってなかったらサポーターに徹したい性格だもん。
チームを支えるってすごく大切なことじゃん……
僕はそれがやりがいになるタイプなんだけど……
「それはそう思うのじゃ。じゃがのぉ……それが1番もどかしいのじゃ……」
『あら?サポーターが嫌なんじゃないの?』
「違うのじゃ。何と言えばよいかのぉ……。もちろん目立ちたいとかそういったことではないぞ?我はお主らを支えるのは好きでやっておるのじゃ。ただのぉ……」
サポートがもどかしい?
目立った活躍ができないってことが悩みなんじゃないのか……。
僕の想像と違った……。
「そういえば、おばあ様は近頃王都の本屋や図書館に行っているのですよ?この前図書館で見かけました。とても真剣な顔をしていたので声はかけなかったのですが……」
『読書が趣味になったの?』
「いえ、それが、おばあ様が読んでいる本は料理本や街づくりに役立ちそうな本ばかりなんですよ……」
「見ておったのか……。なにかできることが無いかと思って頻繁に図書館に通っておったのじゃ……。本屋や図書館は静かじゃし人見知りも考えんでよいからのぉ」
「あまり人気はないですよねぇ。獣人国の方々はあまり本を読む文化はないのでしょうか……」
そうだったんだ……。
みんなの自由時間まで全て把握してるわけじゃないからなぁ。
確かにおばあちゃんって自由時間になるとよく出かけるよなぁ。
村の中を色々見回ってるのかと思ってた。
「ただのぉ、色々見てみたのじゃが、対して役立つ本がないのじゃ。見なくともわかる情報や村のものに聞けばわかる程度のもの。あとは娯楽品しかないのぉ。裁縫や料理、建築に関してもクロムやクラムから聞く情報以上のものは見当たらぬ……」
「そうなのですか……。私は娯楽目的だったので、参考書のようなものはあまり見たことがなかったです……」
『ちぇ~。たくさん本よんでるんだったら、おりょーりおしえてもらおうとおもったんだけどな~』
「そうじゃろ?我も世界の料理を知ることができればクラムに教えてやれると思ったのじゃが……。それだけではないぞ?戦闘技術なども一応調べてみようと思ったのじゃ。医療の心得などもあればよいと思った。……じゃが戦闘技術の系統はクラマやキャシーに聞く以上の知識が得られるようなものはないし、医療に関しては論外じゃ。クロムの前世以上の知識はそもそもこの世界には存在せぬしのぉ」
「……ぼくの技術なんかじぃじに比べたらまだまだ。この程度……」
僕の知識にしても前世でネットサーフィンして覚えている程度のもんだぞ……。
前世の人なら、調べたことがあればみんな知ってるレベルの事だよ……。
「そんなことはないぞぇ?じゃが、我が知識としてでも戦闘技術を知っていればクラマに伝えてやることもできたのじゃ……」
「……それはうれしい。ぼく、本読むの苦手」
「そうじゃろ?じゃから我は知識担当になりたかったのじゃ。我は読書も好きじゃからのぉ」
『そんなに色々してくれてたんだ……。気付かなくてごめんね……』
「違うのじゃ!これは我の趣味なのじゃ!婆が孫と遊ぶのが楽しいのは普通じゃろ?我にとってこれがお主らとの遊びなんじゃ」
『まぁそう言われれば……。僕が家族のみんなに魔法を教えて楽しんでるのと同じでしょ?』
「うむ、そうなのじゃ!じゃから全く気にせんでええんじゃ!……じゃがのぉ。本屋にすら何の情報もないとは……。我が自然界で生きておる方が情報が集まるくらいじゃ……」
それならいいけど……。
でも、本屋にそこまで情報が何もないってどうなってんだ……。
「それに王から借りた歴史書等の書物。あれもおかしい。我はこれでも長らく生きておるのじゃ。都合が合わん歴史や書物によって矛盾しておることが多数ありすぎるぞ……。大陸に存在しておらんような国まであるんじゃぞ?飛び回っておっただけの我でもわかる……。あれらはきっと本来の歴史ではない。都合よく捻じ曲げられておる気がするのじゃが……」
それは逆におばあちゃんにしか気付けないことだ……。
1万年とか生きてたらそりゃわかるよな。
昔そんなとこに家なかったけど!?
って言うのが国のスケールであるってことでしょ?
やばすぎるだろ……。
あ!!
『わかった。ソフィア様が言ってたんだ。この世界の人は情報を秘匿する傾向にあるんだって。料理でも建築でも何でも、飯のタネや自分の利、地位やお金に代わりそうな事は多分書物に記してないんだよ。書いてあるのは娯楽系統か、くだらない情報ばっかなんだと思う。歴史は抹消されているとも言ってた。国に都合の良いことしか書いてないって』
「やはりそうじゃったのか……。思った通りじゃ。まだ我がノアと暮らしておった時の書物の方が知識が得られるほどじゃぞ……。ではいったい何のために本が存在するんじゃろうのぉ……」
ノアさんって確かおばあちゃんの古い友人だよね。
1万年くらい経ってるのに劣化してる情報って……。
ソフィア様から聞いたこと間近に感じるとこの世界本当にやばいな……。
『正直エステルが好きな作り話や自伝みたいな物語以外に読む価値のある本はないかもしれないなぁ』
「えぇ。それを聞くと私も参考書の類のものは読みたくなくなりましたね……。参考にならない参考書や歴史を捻じ曲げられた歴史書を読んでも間違った知識が入ってくるだけです。他の皆の魔法のように……」
うん、デメリットにしかならん。
間違った常識を植え付けられるだけだ。
『うそつきなんだね~!クラムも本いらない~!パパにきく~!』
「……うん。勉強嫌い。でも、まだパパに教えてもらうほうがわかりやすい」
「それを我が補助したかったんじゃがのぉ……。クロムしか知らぬ知識が多すぎるんじゃ……」
『まぁそれは仕方ないところはあるけどね。僕は違う世界から来たんだもん。気持ちは受け取るよ。ありがとう』
それにしてもこの世界の書物って最悪だな……。
きっとそんなだからこの世界って製紙技術が進んでないんだ……。
綺麗な紙じゃなかったけど、紙はあることはあるんだよ?
でも紙1枚100円だよ!?やばいよね。
書物あってもなくてもいいんだもん。
その程度の情報しか書かれていない、と……。
主に商売人が売り上げや商品を書き留めるくらいにしか使わないんだ。
だから対して紙の製造がされていないんだ。
一応僕等が主に拠点にしてるところって王都なんだよ?
それでこれだもん。
本が沢山あるように感じてた。
それって王都だから世界中の本が集まってきてるだけなんだよ。
他の街で図書館なんか見たことなかったもん。
本って本来知識を広めるために作るもんでしょ?
高いお金払って娯楽に本を購入する人なんてごくわずかしかいないよ……。
「おばあ様は、それで知恵が欲しい、と……」
「そうなのじゃ。知恵、もしくは知識じゃのぉ。知ることが出来れば、お主らの知らないことを教えてやることもできるじゃろ?気になったことは村のものに聞くようにはしておるのじゃがのぉ。これほど情報を知る事ができぬことをもどかしいと思ったことはないんじゃ。はぁ……」
僕の知識ってネットで調べてただけなんだもん。
知らないことは検索するって癖がついてたから人よりはうんちくの量は多いかもしれない。
でも何でも覚えてるわけじゃないんだ。
例えば、前に言ったことあるけど僕毛染めの染料の作り方とかしらないよ?
ビールだって結局作れなかった。
やってみたけど結局よくわかんなかったんだよね……
適当に買った麦っぽい植物が適してなかったのか作り方が悪かったのか……
まぁいいんだけどね。
今果実酒の方が好きだし。
『僕がわかることなら伝えるけどねぇ。僕もこの世界の人よりわかる事は多くても何でもわかるわけじゃないからなぁ。僕が調べた経験がないことまで知らないよ……』
「それは当たり前じゃ。それに、そうなると結果的にクロムの手を煩わせるだけじゃろ?自分で調べられるのがよかったのじゃが……。無理そうじゃのぉ……」
おばあちゃんが知恵が欲しいって言ったのはそういうことか。
この世界では情報を調べることすらできない……。
それは確かに、サポーターしてるなら尚の事もどかしくなるかも。
サポーターって情報命なところあるもんなぁ。
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