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64話 - 死んだ方がマシ
しおりを挟む明日が任期終了の日になってしまった。
あれからも集落にずっと様子を見にはいっていたのだが全く日常に変化はない。
エステルは外に出ていたのが知られているのでもうここには来られない。
一日一度、帰るタイミングを見計らって話かけに言っているがあれから暗くふさぎ込んでしまっている。
ずっと「悩んでいるので」という返答しかしない。
絶対にうそだ……それは分かっている。
一応毎日話しかけにいく。ほんの少しの時間。
でもあまり話すと僕がエステルを責め立ててしまいそうでここ数日はほぼ会話がない。
どうすればいいんだ……
ハイエルフにはおそらく誰にも言っていない。
エルフに対し尻ごんでしまっているハイエルフもいたが、大半は今のこの状態がどうなってもいいというような雰囲気を感じた。多分エステルが狙われていると話すと反乱をおこすハイエルフが多い気がした。
そうなると家族がたくさん死ぬ。
だからエステルはその選択はしない。
僕に言うと僕がエルフを殺しに動くとエステルは知っている。
だから僕には話せない。殺してほしくないと言っていた。
エステルがあのエルフを殺したくないのではない。
この世界では自分を害するものがいた時にそういう選択になることは仕方ないと言っていた。
家族が苦しんでいる姿を見てきたと言っていた。恨みはあるはずだ。
自分の為に僕に殺させるのが嫌なんだ。
だからその選択もしない。
奴隷になることをもう決意している気がする。
≪パパーどうするの~?≫
『………』
≪エステルたすけないの~≫
『どうしたらいいのか考えてるんだよ。エステルは助けるつもりだ』
≪もうわるいやつみんなたおしてにげちゃう~?≫
『それもかんがえたよ。でもたぶんずっとおなじことになっちゃう』
エステルは嫌だと言っていたが、いっそ僕がエルフを全滅させてとも考えた。けどそうなると迎えに来た騎士が気付く。僕らが逃げれば集落が滅ぼされる。
じゃあ迎えに来た騎士もろとも僕が倒してこの集落にのこって……堂々巡りになるだけだ……。騎士が帰ってこなくて不信がった国が兵をよこすだけだ。どんどん規模は膨らんで……ずっとそれを繰り返しても僕が戦争を引き起こすだけになる。
エステルはそんなこと望まない。
家族の為にも、僕の為にも。
いい案が思い浮かばない……
今日もそろそろ帰宅時間か……今日で最後か……
・
・
・
『エステル…』
「クロムさん……明日になっちゃいましたね」
『そうだな。エステルを助ける方法をずっと考えてはいるが……』
「私が明日ここから出ていったら、エルフの騎士が脱走者を処刑したと報告するらしいです。不自然になるから家族との別れの挨拶もさせてもらえません。」
『そうなのか……』
「どちらにしろそれで反乱が起きると皆が殺されてしまうので挨拶なんてできるわけないのですが……」
『………』
「私、奴隷になります」
そういうと思ってたよ。
『……もう一度考え直さないか?僕がなんとか助ける方法を考えるから』
「そもそも私がずっと集落の外へ出ていたからわるいのです。あのリズを助けに行った一件がきっかけにはなりましたがそれまでも気付かれていた、とのことだったので結果は一緒だったでしょう」
『……』
「私のせいで皆に迷惑をかけるわけにはいきませんから」
『でもそれはそもそもエルフが悪いことで!』
「もうどうしようもできないのです。私がここから逃げてしまえば皆が殺されてしまいます。倒しても同じでしょう?また別の騎士がやってきて集落を攻められます。クロムさんもわかっているでしょう?」
『……そうなるな』
『……魔の森で僕が襲い掛かってエルフを全滅させるのはどうだ!?それなら魔物に襲われたという風になる!魔物が人を殺しても自然だろ!?実質僕は魔物だから嘘にもならない!』
「私を助けてくれた大切な方々にそんなことさせたくありません!……私がこの先罪悪感でつぶれてしまいます。」
『………』
「私はこの集落で生きていくことができなくなってしまいました。死人をどう扱ってもいいと言われました。でも奴隷にならずともこの集落で一生を終えることは死んでいるのと同じだとずっと思ってたんです。死んだ方がマシだとも考えたこともありました。なので死ぬのなんて怖くありません。でもそれなら死ぬより奴隷になっても念願の外の世界が見れるのですよ?奴隷の方がマシじゃありませんか?ずっとこの狭い世界で暮らしていくなら……。だからそれでいいではありませんか?ふふ。」
『………奴隷だぞ?何をされるかわからないんだぞ!?』
「私が招いた結果なのです。それにクロムさんとクラムちゃんを巻き込みたくありませんから。最初言っていたでしょう?僕とクラムを巻き込むなら殺すって。」
『今はそんなことおもってない!!』
「知ってます!!お二方に大切にしてもらっていることは……充分伝わっております……。幸せな時間でした。夢のようでした。私でも強くなることができた!ここから冒険がはじまるはずだったのです……困らせ…ないでください……もう……決めたんです……決意が……揺らいでしまい…ます……」
『……』
「……グス……1つだけ心残りがあります……お二方に作ってもらったこちらの剣、一度くらい使ってみたかったですね。きっとこれを持っていたら取り上げられてしまいます。受け取ってください。お返ししします。」
窓から剣を受け取った。エステルの手が震えている……
≪エステル~……≫
くそ……何が死人をどう扱ってもいいだ。
エステルはこの集落でお前らのせいで元々死んだような生活をおくっていたんだぞ!?
エステルが悲しんでるのは全部お前らのせいなんだ……
死ぬより奴隷の方が……いいなんてそんな……言葉……
死人をどう扱ってもいい?
死ぬより奴隷の方がマシ……?
『エステル。お前死ぬのは怖くないって言ったか?』
「はい……ずっとこの集落で暮らしていくくらいならその方が……」
『わかった』
「わかった?」
『僕はエステルがあんなやつの奴隷になることを納得は出来ない』
「でももう決めましたから……」
『だったら僕が!……お前を殺してやる。』
「え?」
『僕の奴隷になれ』
・
・
・
翌日……
エステルは早朝に集落をでたようだ。
今騎士があのクソエルフを迎えに来ている。
「少し野暮用がある。この先の池で荷馬車を止めろ」
よし今からだな。先回りだ。
………
エルフを乗せた馬車が進んでいく……
目の前に池が見えてきた。エステルが待っているのが見える。
エルフが馬車から降りてきた。
「家族と別れは済ませて来たか?」
「別れなんて言わせてもらえなかったじゃありませんか。」
「はっはっは。この期におよんでもまだ強気だな。これから私が主になるんだぞ?せいぜい態度には気をつけるんだな」
「後ろの荷馬車に乗れ」
エステルが荷馬車にはいった。
よし、エルフとは一緒に乗らないみたいだ……
魔力も1人分しかない。あの荷車にはエステルしか入っていないみたいだ。
『クラム、準備はいいか?』
≪任せて~!≫
実はあれから夜通しちょうどいい魔物を捕まえにいっていた。
またグレイウルフとフレイムウルフの群れが集団でいたのでそいつらをボコボコにして捕獲してきた。
こいつらどこにでもいるな……
そして引きずって木に縛り付けていた。
いいだろ。お前らには苦労させられたし。
行くぞ……
”クリーンッ”!
狼の群れを全力のクリーンで回復させる……
grrrrrrrrrrrrrrrrrrr
AOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!
まぁ僕にむかってくるよな??
全力で魔力と殺気を込めて……殺気ってどうやって出すんだ!?
まぁなんでもいい!
”威圧”!
(キャイ~ンキャンキャン)
馬車の方向を目掛けて狼達は走り出した。
お!よし!馬車の方に行ってくれた!!
これは別に計算通りにいかなくてもよかったんだが……
そうなれば正々堂々とやっただけだ。
馬車見つけて喰いつけよ~??
後ろの荷馬車とは少し距離が離れているようだ。
で、だ。
フレイムウルフがやったように見せかけて荷馬車を吹き飛ばす!
どう見てもエステルが死んだように!!
『クラム!作戦通りにな!全力でエステルにシールド!』
≪まかせて~!≫”し~るど~”
今だ!”ファイアブラスト”ーーッ!!
(ゴオオオオオオオオオォォォォ)
あっち!あっちあちあちあちあち!!”シールド!”
急いでエステルのとこ行かないと!
火炎放射使いながらそれに紛れてエステルを連れ去るんだ!!
僕の速度なめるなよ…?火の勢いと同時に走るくらいわけないぞ。
ZUDOOOOOOOOOOOOONNN!!
「きゃあああああああああああああああああああああ」
荷馬車が大破した。
エステルの叫び声がきこえた!!
いや、これ作戦だからね!?思いっきり叫んでって言っておいたんだ。
いやでも迫真の演技だな。だいじょぶかエステル!?クラムの全力シールド効いてるはずだから僕のファイアブラスト程度じゃダメージはいらないでしょ?
ある程度に抑えてはいるが、普通直撃したら死ぬ勢いで……
いや塵も残らないくらいの勢いで打つ方がエステルは死んだと思われるからあまり手加減できなかったんだよな……こわいだろうなぁ……
「魔物だあああ!フレイムウルフがでたぞ!!」
AOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!
(ゴオオオオオオオオオォォォォ)
お!向こうでも火炎放射してる!僕らを困らせた分せいぜい働いてくれよ。
まぁあいつらじゃないんだけどね。クリーンで全快にしてあげたから許してくれ。
あいつら騎士とちょうど強さ同じくらいなんだよ。
どっちが勝つかしらんがいいところまで戦ってくれるだろ!?
火炎の中に飛び込む………
エステルは……いたッ!!!うわ……気絶してんじゃん……
隠密……
・
・
・
それから僕は……
騎士の意識がすべて狼に移ったのを確認し、火炎放射で大破した荷馬車の中からエステルを救出。
そしてクラムに向かって放り投げる!
もちろんシールドしてるよ!
クラムはエステルを連れて隠れながら全力で逃亡!!
僕は念の為ずっと姿を隠しながら隠蔽工作に励んだ。
火炎放射や砂煙、その他様々な魔法を使い狼の味方をしていたとも言う。
エステルとクラムから目線そらす為だよ!!
イライラしていたのではない!……とも言えないかもしれなくもない。
そして森は燃えまくった。
目くらましに手っ取り早かったんだもん…
またクラムと後日修復しに来まーす……
数時間後……
『おーい』
≪エステル~?≫
「んん……ここは……」
『生きてるか~』
≪いきてるか~?≫
エステルが目覚めた。
「ん……はい!死にました♪」
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