116 / 270
114話 - 贅沢ってなんだろう……
しおりを挟む
(ガチャ)
「いらっしゃいませ。どうぞおかけになってお寛ぎください。今お茶をお出ししますね」
おお……すごい丁寧で落ち着いた接客だ。
わざわざ立ってお辞儀してくれた。
白のシャツっぽい落ち着いた洋装してる獣人さん。
この人は犬獣人さんかな?
尻尾が丸まってるから柴犬っぽくて折れてる耳が可愛い。
でもダンディーなおじさまだな。
さすが不動産……。
いや、まぁそこは場所によるか。
元気いっぱい!ってところもあったもんな。
すげー派手なネクタイ締めてる人とか不動産業界の人で良く見たし。
あれなんでなんだろ。気になったことない?
不動産業界にはいたことないからわかんないな。
とかどうでもいい事考えてたらエステルとクラマに紅茶出してくれた。
「さて、本日はどのような物件をお探しですか?」
『じゃあ僕が言うことそのまま伝えてね?』
『大丈夫です!』
「えっと……ダンジョンに通うことになるのでここから出来るだけ近くて、少し鍛冶作業とかもできればありがたいので集合住宅系は除外していただければ……」
「なるほど……間取りやご予算のご希望はありますか?」
「物価がわからないのですが……金貨50枚程で足りますか?」
「ご購入ですか?全然足ります。というより民家の中でしたらより取り見取りかと。さすがに貴族様のお屋敷は買えませんがこの辺りの民家の平均ですと……金貨10枚にもならないですね。」
ああ、王都でも日本に比べると安いのか。
日本も物価高い方だもんな。
1000万ほどで充分足りるんだ。よかった。
じゃあ買ってもいいかな?いらなかったら売却すればいいし。
そもそもこの家族お金使わないんだもん。
こういうところで使わないと使うとき一生来ないな多分……
「その金額なら購入でも大丈夫ですね。もちろん借家でも」
「そうですか。かしこまりました。ダンジョンからは徒歩で四半刻圏内ほどで宜しいですか?」
この世界では一刻が隣り合わせの星の時間。
3時間くらいだね。
で、それの4分の1だから45分程……
「いや、少し遠いです……もう半分程の距離の方が……」
「そうですか……困りましたねぇ……」
「あら。あまりいい物件はないでしょうか?」
「いえ……。ダンジョン近くは少し治安がよろしくないのですよ。冒険者が借家で暮らしていることが多く夜遅くまで酒場も開いておりますので深夜までこの辺りは騒がしいですよ。他の国から来られた方も多いですしマナーの悪い方も多いです。ですので……家族連れの方や落ち着いて暮らしたい方には人気は全くないのですよ……。逆に安くなってしまいます。その割に冒険者の入れ替わりが激しいので空き家の数だけは多い。お買い得なのは良い事なのですが、金貨50枚がご予算と言われた方におそらくご納得いただける物件がない、という感じでしょうか。ただ近ければいいというなら金貨10枚あればいくらでもご紹介できますが……」
あー。治安問題か。
考えてなかったあああ。
ダンジョン付近なんかこの上なく悪そうだわ……
家より騒がしいのと治安悪いのが1番いやかも。
『クロムさんクラマ君どうします!?』
『部屋はどうでもいい。不便でもいいし……。でもうるさいのと変な人多いの絶対やだ……』
『ぼくも……』
『おなじく……』
「できるだけ静かなほうがありがたいです……。不便でもいいので人も少ない方が……。物件の希望は特にないので……」
「治安重視なのですね?静かなところということであればこの辺りは王都の端になるのでさらに郊外へ行けば。でも不便になるのでさらにお安くなりましたねぇ……。部屋のご希望なしだとまだ絞れないですね……。では例えば最低基準はどれくらいですか?間取りや築年数等で……」
まぁそうよなぁ。
希望ないが一番困るよねぇ……
『最低なぁ……1部屋だもん……。築年数はどうでもいいかな……。虫が出ない所!はこの世界では無理だろうし』
『同じく……屋根があれば……』
『……寝られたらいい』
無理だって!!
元引きこもりと森っ子と野生児2人よ!?
家に希望ない……
『逆に部屋数むしろいらないってのは希望になるかな?せいぜい4かな……1人1部屋以上は無理、僕はね?みんなは?』
『私もです……むしろ私は個室いりません……持て余します……』
『……みんな一緒じゃないの?』
あぁ……希望を言う度に安い方向へ進んでいく……
「最高4部屋までで……」
「部屋数を限定するのですか?狭くすると。絞れはしますが……ただもっと贅沢していただいても……それならもう金貨5枚もいらないですかね」
「贅沢ですか……」
『贅沢ってなに……』
『私は……ご飯が頂けて本があれば……』
僕は……
ベットから届く範囲にマンガがあってノートパソコンも寝転びながら触れて……。
ゲームもベットの上で出来て……
あぁ!ちっちゃい冷蔵庫欲しかったかも!
もちろんベットの横にね?
動かないことが僕にとっての最大の贅沢なんだけど……
部屋のデカさなんか1番要らないよ?
相反するんだけど……。
なんでトイレ行くまでに廊下歩かないとダメなの。
めんどいじゃん。部屋の前に置いてよ。
『……ぼく……寝ていい?……なんでもいい』
『うんうん、ありがとね。こっちで決めとくよ』
クラマここでギブアップ。
興味ないだろうによく付き合ってくれた!
そしてクラムは起きてこない!
クラムもどーでもいいとしか言わなそうだ。
クラムと住んでた海底洞窟が静かで居心地よかったんだよなぁ。
あれで充分なんだが……。
じゃあもう家要らないかも。穴掘ろっかな。
自分で好きに作れるし……風呂とかも作るし……
あ!!そうじゃん!!
『お風呂!もしくは自分で改造してもいいところ!』
『いいですね!そうしましょう!』
「では……お風呂付きの物件ってありますか?」
「いえ、今度はゼロになります。一般民家にはついていないですね。貴族様のお屋敷でも好まれる方が特注でつくっておりますので……」
OMG
「では……好きに家を作り直したり改造してもいい物件はありますか?」
「ほう……。なるほど……」
お!?いい感じか!?
すると小さな声でこちらに顔を近づけてそっと話してきた。
「それでは……私が個人的に所有している物件はいかがですか?一応ここで売りに出しております」
お?この人が持ってる物件か……。
「前の所有者が別の街へ引っ越すというときに破格で売られておりまして郊外の土地を購入したのですが持て余しているのです。こういう商売をしているのでつい目的もなく飛びついてしまいまして。土地はギリギリ王都内で周りに住宅もほとんどありません。この不動産での所有物件では1番静かな場所です。その分店などが周りにないのが少し不便かと……。ちょうどご希望通りの距離くらいです。前の所有者が馬を飼っていたのと家庭菜園もしていたくらいなので土地はそれなりに広いですよ?ただ……」
いいんじゃない?
そもそもそんなお店使わないし。
王都ご飯あんまりだからどっちみち自炊しようと思ってた。
クラム菜園してみたかったしそこも含めめちゃくちゃ良いのでは?
ただ…?
「城壁の外なのですよ……魔物がすこし……。王都で魔除けをしているので強い魔物は来ないのですれども稀にゴブリン等は近場を通るかもしれません。キラーラビットですとか……その辺りですかね」
あ、逆に弱いのがくるんだ?
そういう障壁みたいなのがあるのかねぇ。
ゴブリンとあの獰猛兎でしょ?
全然いいよ?
そもそも野宿ばっかだもん。
たぶん殴られようが傷もつかないし。
あと魔石てにいれたらシールド魔法込めてみたかったんだよね。
バリア魔道具できるじゃん。
『だいじょぶっす!問題ないっす!』
「問題ないですよ?」
「あと、4部屋ではなく5部屋です。郊外の物件なので家自体はご希望より大きいです。その代わり部屋をつぶしていただいても取り壊して建て直していただいても好きにしていただいて結構です。古いので物件自体にはもう価値はありませんのでどちらにしても壊すつもりでした。土地を購入されると思っていただければ」
『全然そこでいいっす。もう見なくていいくらいっす。この上ないです』
『そうですね。好きにしていいなら助かりますね、そこにしましょう!』
「助かりますね。そこでお願いします」
「あっはっは。さすがにお見せもせずにどうぞとはいえませんよ。では今から見に行きましょうか。一応こちらで売りにだしているので今から下見に行っても問題ございません。もしお客様に持ち合わせがあるなら本日現場でそのままお譲りします。土地が広いので金貨10枚程でいかがですか?見て決めて頂ければ大丈夫ですが、一応目安に」
『おっけー!交渉もいらないっす』
「大丈夫です。物件が良ければそのまま購入しますね。持ち合わせもあります」
「値下げ交渉もなしですか。得してしまいましたね。儲けが出ると思いませんでしたよ。実は土地代だけですと金貨8枚程なのです。なので金貨9枚までなら値下げしようとも思ったのですが、物件価値はないのですが取り壊すのにも費用がかかるのでそれだと土地だけの売却に切り替えるなら少し足がでてしまう感じでして……。本当に宜しいのですか?」
どうせ全部潰したかったら魔法一発だし。
静かな日常の方が大事だから場所の方が重要だ。
治安問題は予想外だったなぁ……
ここまで内部事情ぶっちゃけてるんだから本当に持て余してたんだろうね。
で、ちょっと利益のせてみたらストレートすぎて逆に罪悪感出たんだろう。
あるあるそういうこと。いいよーん。
「全然問題ないですよ。土地だけでも想像以上の条件です。家は特に気になりませんのでほぼ購入は決定だと思います」
「かしこまりました。ありがとうございます。では馬車を持ってきますので少々お待ちください」
・
・
・
そこから郊外に向けて馬車で20分……
クラムがさっき起きた。
そしてクラマが馬車に揺られて寝た。
『おうちもうつくの~?』
『そうみたいだよー』
『馬車……遅いですね……』
ほんとにね!乗ってる意味ねぇじゃん!
人通りで飛ばせないから速度全然かわらんやん!!
座れるってくらい……逆にもどかしいわ!
もう多分街中で乗合馬車乗る事もないな……
これに銅貨50枚出すのやだ。
乗ってみてよかった。
城壁の外に出たら少し加速した。
専用の通行書があるらしく専用の小さな通路からさくっと出れたの。
これ持ってたら王都の出入りめっちゃ楽じゃね?
「城壁の外はのどかですねぇ」
「そうですね。城壁の中にほとんどの建造物は入っていますので。外に建造物を好き好んで建てる人はあまりいないですね。専用の許可もいりますし」
周り本当に何もない。外最高!人混みもうやだー!
ってか建物ほとんどないからもう家見えてるんだけどさ。
あれなの……?まじ……?
「あれですね」
おお、エスパー。
「そうですよね。あの建物しかないですし。でもあれですか……」
『おっきい~!』
『だよな……想像の倍以上あったわ。豪邸って注文したっけ……』
なんでだ。
広めの馬小屋が来ると思ってたのに。
外観だと日本のかなり大きい家のサイズは全然あるよ。
日本で都会でこのサイズは億越えしそうだよ?
2階建てでこのサイズで逆に5部屋しかないのも不思議。
どういう構造?10部屋あってもいいくらいでしょ……。
土地囲うように木の柵がしてあるんだけど本当にここ全部なの?いやデカくね?
土地は想像の5倍以上あるんだけども……
「柵で囲っている部分が売却する土地になります」
ですよね~。
もう言われることわかってんだなこの人。
田舎のスーパーマーケット特有の無駄にデカい駐車場くらいのサイズあるよここ。
外周500mくらいある……これがむしろ1000万なの?
あとは外に厠がある。
この世界だいたいそうだもんね。
そこはもう気にしてもしゃーない。
敷地内に馬飼ってた名残があるね。
馬小屋は別にあったわ。
「ちなみに雨漏りはします?」
「古いですが欠陥はないですよ。点検はしております。雨漏りももちろんございませんし床抜けなどもございません。古さが気にならないならこのまま住んでいただけます。ただ木が多く使われてますので少しカビはあると思いますね。清掃は念入りにしていただく方がいいと思います。ご要望があれば手配しますよ」
うん、古い木の家の独特な匂いはするね。
田舎のおじいちゃんの家の匂いって感じ?
ただ、日本家屋じゃないからね。
この王都ヨーロッパ風だからめっちゃかっこいいよこの建物……
外に骨組みがむき出し建物の大っきな緑色の三角屋根で煙突が付いてる。
下の方が石造りで壁は泥とかでつくられてるんだろうか……。
淡い黄色の壁だ。ちょっと黒く汚れてるけどね。
ハーフティンバーっていうらしいよこういう建物の事。
むしろ憧れるくらいなんだけど……
『なんでこれ……?馬小屋レベルかと思ってきたんだけど……。超かっこよくね?永住してもいいんだが。異世界よくわからん……』
『なんででしょうか……。私もわかりません……。集落の私の家の方が全然古いと思いますが……古いとはなんでしょうか……。素敵すぎてびっくりしてます』
『このおうちすごいね~。これぜんぶ~?』
これを壊すつもりだったの?
勿体なさすぎるでしょ……
日本なら企業が買い取っておっきな喫茶店とか作るぞ多分。
販売するにはちょっと厳しいのかなぁ。はて……
ちなみにこの家に全力クリーンかけたらどうなるんだろう。
建物に試したことってなかったなそういえば。
「このお家が販売できないんですか……?」
「作りが古いのと販売できる築年数ではないですね。もう建てられて50年は経っていますからこの家自体に資産価値はもうないのですよ。土地としてなら売りに出せますがそうなるとこの家は邪魔でしょうね……さらに城壁の外なので買い手もつかず……」
あー。固定資産って減価償却とかあるよね。
詳しくないんだけど年数とかで資産価値がなくなっていくって仕組みだったと思う。
この世界にもあるんだな。
『まぁ一旦内装見てみよっか』
『そうですね。内装がボロボロなのかもしれませんから』
まずドアが緑色だ。
で輪っかの取っ手が付いてる。
これでノックするのかな?
入ると綺麗な小さな玄関があって壁に横に靴箱が埋め込まれているな。
で玄関の正面が部屋になってる。ひっろ。
家具はなにもないけれどこの部屋30畳以上あるんじゃないかなぁ……
内装も柱むき出し。むしろかっこいい。
木造で大きな窓が正面に2つあるね。もちろんガラスではないよ。
木の棒で下から開けて支えるタイプ。
なんと!さらに窓の間に暖炉あんの!
暖炉憧れるー!
ロッキングチェア置いて猫ちゃんひざの上でなでながらウトウトしてぇ!
『きれいだよ~?』
『都会は……わかりません……』
うん。ちょっと意味わかんない。本当に。
「家具はもうカビていたので全て捨ててしまいました。広いでしょう?前の所有者が農作業を室内でしていたので余分な部屋は作らないようにしたらしいですね。左の部屋が炊事場、右が寝室です。あと脇の階段から2階へ上がれます。上はお子様2人の部屋だったそうです」
キッチンの方にはアーチ型の出入り口があってドアはない。
カーテンでもつければいいのかな?
キッチンもなにもないね。
ただ外につながっている溝があるから水仕事をしてたんだろうな。
で、反対の寝室には茶色の木造のドアがあった。
こっちにもなにもないけど……
もうデカいし綺麗しか言うことないって。
ついでに柱むき出しの天井かっこいい!
全体的に天井高い!
この3部屋で1階。
全部で70畳以上あったよ……たぶんね。
広すぎて畳数換算ができねぇわ。
「中も結構きれいでしょう?古い家は作りが丈夫なんですよ。それに加えて床は退去前近くに張り替えていたらしいですね。急に引っ越しが決まったそうです」
「そうですか……。綺麗ですね……」
エステル口数減っちゃってるじゃんか。
2階にあがると廊下があって2部屋それぞれにドアがあった。
間取りは同じ。どっちも20畳くらいある四角い部屋。
大きな窓がひとつずつついていた。
こっちは横開きのドアっぽい窓だね。
これで内装の紹介はおわったんだけど……なんていうか……
これ金貨10枚で断る人いるの?
「この物件とてもお安いと思うんですけど……」
「そうですねぇ。築年数を除けば……もしこれが城壁内にあればもっと高かったでしょうか。金貨20枚は土地価格だけでも超えていたかと思います。一般の方に販売するには少し問題が多いのですよ。冒険者でも城壁外に家を構える方はいないですから。家で魔物に怯えるのは嫌でしょう?ここのご主人は元冒険者だったそうでその辺りも気にならなかったそうですが……」
まぁ、そりゃそうか……。
地球で言えば家の前ヤンキーの通学路って感じ?
違うかな。
『どうします?』
『うん、僕は問題ないよ。城壁の外なのも僕らには全然問題ないでしょ。そもそもだいたい野宿してたしもう外とかどうでもいいよ。むしろ城壁内のほうが騒がしくて嫌まである』
『わかります……。王都の城壁内よりは魔の森のほうがよかったかもしれません……』
『クラムも~おうちひろいね~?どこで寝よっかなぁ~?』
『どこで寝ような本当に。ただ倉庫作ったり風呂作ったりトイレも中に作ったりすれば実質使える範囲減るかな?』
『そうですね。生活区間以外のことで潰せば気にならないかもしれませんね?』
『庭も草茂ってたけどちゃんと刈って家庭菜園でも作ろう。イメージしてた家庭菜園よりかなりデカいけどね。まあ要らない分は柵狭めちゃえばいいっしょ』
『あ、それもそうですね?別に全部使う必要もないですし……』
『クラムがひろった木の実のタネうえるね~』
『おー?木生やしちゃうのか……。いいかも!じゃあブドウつくってワインつくろーぜ!!』
『ふふ、いいですね♪木を生やせば気にならないかもしれません』
……ふと我に返った。
『……なんで僕ら必死に家小さくしようとしてるんだろ』
『さぁ……』
『まぁ、いいや。ここにしよう!我が家決定!』
『はい♪』
『おうちやった~!』
「……ん……おはよ……決まった?」
「ここでお願いします。金貨10枚です。他費用は必要ですか?」
「清掃を手配するならその分が必要ですがいかがいたします?」
『いらない。建物まるごとクリーンしてみる。うまくいけば一発』
「大丈夫です。こちらで掃除はしますね」
「かしこまりました。ではこちらで権利の受け渡し手続きをして後日書類をお届けします。鍵と、門の通行書です。このままお使いになっていただいて大丈夫ですよ。いやー助かりました。いい取引でした。ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました!」
「それでは、馬車で一緒に王都に戻られますか?」
『NO!』
『やだ~』
「もう少し……寝ていい?」
「また気が向いたら徒歩で帰りますね。ありがとうございます」
「かしこまりました。また何かお困りでしたらお気軽にお越しください。では」
はー!家決まったああ!
まさかこんな方向で悩むとは……
ここで落ち着けるかなあ……おっきいなぁ。
地球基準だけどゼッタイ億越え物件だってこれ。
異世界よくわからんわ。
そして家でも結局そんなにお金使えなかった。
この家族本当にお金要らないな……
減らない……。急いで魔物狩ってすらないのに……。
あ……家受け取っちゃったけど宿……
帰りたくない……うう。
「いらっしゃいませ。どうぞおかけになってお寛ぎください。今お茶をお出ししますね」
おお……すごい丁寧で落ち着いた接客だ。
わざわざ立ってお辞儀してくれた。
白のシャツっぽい落ち着いた洋装してる獣人さん。
この人は犬獣人さんかな?
尻尾が丸まってるから柴犬っぽくて折れてる耳が可愛い。
でもダンディーなおじさまだな。
さすが不動産……。
いや、まぁそこは場所によるか。
元気いっぱい!ってところもあったもんな。
すげー派手なネクタイ締めてる人とか不動産業界の人で良く見たし。
あれなんでなんだろ。気になったことない?
不動産業界にはいたことないからわかんないな。
とかどうでもいい事考えてたらエステルとクラマに紅茶出してくれた。
「さて、本日はどのような物件をお探しですか?」
『じゃあ僕が言うことそのまま伝えてね?』
『大丈夫です!』
「えっと……ダンジョンに通うことになるのでここから出来るだけ近くて、少し鍛冶作業とかもできればありがたいので集合住宅系は除外していただければ……」
「なるほど……間取りやご予算のご希望はありますか?」
「物価がわからないのですが……金貨50枚程で足りますか?」
「ご購入ですか?全然足ります。というより民家の中でしたらより取り見取りかと。さすがに貴族様のお屋敷は買えませんがこの辺りの民家の平均ですと……金貨10枚にもならないですね。」
ああ、王都でも日本に比べると安いのか。
日本も物価高い方だもんな。
1000万ほどで充分足りるんだ。よかった。
じゃあ買ってもいいかな?いらなかったら売却すればいいし。
そもそもこの家族お金使わないんだもん。
こういうところで使わないと使うとき一生来ないな多分……
「その金額なら購入でも大丈夫ですね。もちろん借家でも」
「そうですか。かしこまりました。ダンジョンからは徒歩で四半刻圏内ほどで宜しいですか?」
この世界では一刻が隣り合わせの星の時間。
3時間くらいだね。
で、それの4分の1だから45分程……
「いや、少し遠いです……もう半分程の距離の方が……」
「そうですか……困りましたねぇ……」
「あら。あまりいい物件はないでしょうか?」
「いえ……。ダンジョン近くは少し治安がよろしくないのですよ。冒険者が借家で暮らしていることが多く夜遅くまで酒場も開いておりますので深夜までこの辺りは騒がしいですよ。他の国から来られた方も多いですしマナーの悪い方も多いです。ですので……家族連れの方や落ち着いて暮らしたい方には人気は全くないのですよ……。逆に安くなってしまいます。その割に冒険者の入れ替わりが激しいので空き家の数だけは多い。お買い得なのは良い事なのですが、金貨50枚がご予算と言われた方におそらくご納得いただける物件がない、という感じでしょうか。ただ近ければいいというなら金貨10枚あればいくらでもご紹介できますが……」
あー。治安問題か。
考えてなかったあああ。
ダンジョン付近なんかこの上なく悪そうだわ……
家より騒がしいのと治安悪いのが1番いやかも。
『クロムさんクラマ君どうします!?』
『部屋はどうでもいい。不便でもいいし……。でもうるさいのと変な人多いの絶対やだ……』
『ぼくも……』
『おなじく……』
「できるだけ静かなほうがありがたいです……。不便でもいいので人も少ない方が……。物件の希望は特にないので……」
「治安重視なのですね?静かなところということであればこの辺りは王都の端になるのでさらに郊外へ行けば。でも不便になるのでさらにお安くなりましたねぇ……。部屋のご希望なしだとまだ絞れないですね……。では例えば最低基準はどれくらいですか?間取りや築年数等で……」
まぁそうよなぁ。
希望ないが一番困るよねぇ……
『最低なぁ……1部屋だもん……。築年数はどうでもいいかな……。虫が出ない所!はこの世界では無理だろうし』
『同じく……屋根があれば……』
『……寝られたらいい』
無理だって!!
元引きこもりと森っ子と野生児2人よ!?
家に希望ない……
『逆に部屋数むしろいらないってのは希望になるかな?せいぜい4かな……1人1部屋以上は無理、僕はね?みんなは?』
『私もです……むしろ私は個室いりません……持て余します……』
『……みんな一緒じゃないの?』
あぁ……希望を言う度に安い方向へ進んでいく……
「最高4部屋までで……」
「部屋数を限定するのですか?狭くすると。絞れはしますが……ただもっと贅沢していただいても……それならもう金貨5枚もいらないですかね」
「贅沢ですか……」
『贅沢ってなに……』
『私は……ご飯が頂けて本があれば……』
僕は……
ベットから届く範囲にマンガがあってノートパソコンも寝転びながら触れて……。
ゲームもベットの上で出来て……
あぁ!ちっちゃい冷蔵庫欲しかったかも!
もちろんベットの横にね?
動かないことが僕にとっての最大の贅沢なんだけど……
部屋のデカさなんか1番要らないよ?
相反するんだけど……。
なんでトイレ行くまでに廊下歩かないとダメなの。
めんどいじゃん。部屋の前に置いてよ。
『……ぼく……寝ていい?……なんでもいい』
『うんうん、ありがとね。こっちで決めとくよ』
クラマここでギブアップ。
興味ないだろうによく付き合ってくれた!
そしてクラムは起きてこない!
クラムもどーでもいいとしか言わなそうだ。
クラムと住んでた海底洞窟が静かで居心地よかったんだよなぁ。
あれで充分なんだが……。
じゃあもう家要らないかも。穴掘ろっかな。
自分で好きに作れるし……風呂とかも作るし……
あ!!そうじゃん!!
『お風呂!もしくは自分で改造してもいいところ!』
『いいですね!そうしましょう!』
「では……お風呂付きの物件ってありますか?」
「いえ、今度はゼロになります。一般民家にはついていないですね。貴族様のお屋敷でも好まれる方が特注でつくっておりますので……」
OMG
「では……好きに家を作り直したり改造してもいい物件はありますか?」
「ほう……。なるほど……」
お!?いい感じか!?
すると小さな声でこちらに顔を近づけてそっと話してきた。
「それでは……私が個人的に所有している物件はいかがですか?一応ここで売りに出しております」
お?この人が持ってる物件か……。
「前の所有者が別の街へ引っ越すというときに破格で売られておりまして郊外の土地を購入したのですが持て余しているのです。こういう商売をしているのでつい目的もなく飛びついてしまいまして。土地はギリギリ王都内で周りに住宅もほとんどありません。この不動産での所有物件では1番静かな場所です。その分店などが周りにないのが少し不便かと……。ちょうどご希望通りの距離くらいです。前の所有者が馬を飼っていたのと家庭菜園もしていたくらいなので土地はそれなりに広いですよ?ただ……」
いいんじゃない?
そもそもそんなお店使わないし。
王都ご飯あんまりだからどっちみち自炊しようと思ってた。
クラム菜園してみたかったしそこも含めめちゃくちゃ良いのでは?
ただ…?
「城壁の外なのですよ……魔物がすこし……。王都で魔除けをしているので強い魔物は来ないのですれども稀にゴブリン等は近場を通るかもしれません。キラーラビットですとか……その辺りですかね」
あ、逆に弱いのがくるんだ?
そういう障壁みたいなのがあるのかねぇ。
ゴブリンとあの獰猛兎でしょ?
全然いいよ?
そもそも野宿ばっかだもん。
たぶん殴られようが傷もつかないし。
あと魔石てにいれたらシールド魔法込めてみたかったんだよね。
バリア魔道具できるじゃん。
『だいじょぶっす!問題ないっす!』
「問題ないですよ?」
「あと、4部屋ではなく5部屋です。郊外の物件なので家自体はご希望より大きいです。その代わり部屋をつぶしていただいても取り壊して建て直していただいても好きにしていただいて結構です。古いので物件自体にはもう価値はありませんのでどちらにしても壊すつもりでした。土地を購入されると思っていただければ」
『全然そこでいいっす。もう見なくていいくらいっす。この上ないです』
『そうですね。好きにしていいなら助かりますね、そこにしましょう!』
「助かりますね。そこでお願いします」
「あっはっは。さすがにお見せもせずにどうぞとはいえませんよ。では今から見に行きましょうか。一応こちらで売りにだしているので今から下見に行っても問題ございません。もしお客様に持ち合わせがあるなら本日現場でそのままお譲りします。土地が広いので金貨10枚程でいかがですか?見て決めて頂ければ大丈夫ですが、一応目安に」
『おっけー!交渉もいらないっす』
「大丈夫です。物件が良ければそのまま購入しますね。持ち合わせもあります」
「値下げ交渉もなしですか。得してしまいましたね。儲けが出ると思いませんでしたよ。実は土地代だけですと金貨8枚程なのです。なので金貨9枚までなら値下げしようとも思ったのですが、物件価値はないのですが取り壊すのにも費用がかかるのでそれだと土地だけの売却に切り替えるなら少し足がでてしまう感じでして……。本当に宜しいのですか?」
どうせ全部潰したかったら魔法一発だし。
静かな日常の方が大事だから場所の方が重要だ。
治安問題は予想外だったなぁ……
ここまで内部事情ぶっちゃけてるんだから本当に持て余してたんだろうね。
で、ちょっと利益のせてみたらストレートすぎて逆に罪悪感出たんだろう。
あるあるそういうこと。いいよーん。
「全然問題ないですよ。土地だけでも想像以上の条件です。家は特に気になりませんのでほぼ購入は決定だと思います」
「かしこまりました。ありがとうございます。では馬車を持ってきますので少々お待ちください」
・
・
・
そこから郊外に向けて馬車で20分……
クラムがさっき起きた。
そしてクラマが馬車に揺られて寝た。
『おうちもうつくの~?』
『そうみたいだよー』
『馬車……遅いですね……』
ほんとにね!乗ってる意味ねぇじゃん!
人通りで飛ばせないから速度全然かわらんやん!!
座れるってくらい……逆にもどかしいわ!
もう多分街中で乗合馬車乗る事もないな……
これに銅貨50枚出すのやだ。
乗ってみてよかった。
城壁の外に出たら少し加速した。
専用の通行書があるらしく専用の小さな通路からさくっと出れたの。
これ持ってたら王都の出入りめっちゃ楽じゃね?
「城壁の外はのどかですねぇ」
「そうですね。城壁の中にほとんどの建造物は入っていますので。外に建造物を好き好んで建てる人はあまりいないですね。専用の許可もいりますし」
周り本当に何もない。外最高!人混みもうやだー!
ってか建物ほとんどないからもう家見えてるんだけどさ。
あれなの……?まじ……?
「あれですね」
おお、エスパー。
「そうですよね。あの建物しかないですし。でもあれですか……」
『おっきい~!』
『だよな……想像の倍以上あったわ。豪邸って注文したっけ……』
なんでだ。
広めの馬小屋が来ると思ってたのに。
外観だと日本のかなり大きい家のサイズは全然あるよ。
日本で都会でこのサイズは億越えしそうだよ?
2階建てでこのサイズで逆に5部屋しかないのも不思議。
どういう構造?10部屋あってもいいくらいでしょ……。
土地囲うように木の柵がしてあるんだけど本当にここ全部なの?いやデカくね?
土地は想像の5倍以上あるんだけども……
「柵で囲っている部分が売却する土地になります」
ですよね~。
もう言われることわかってんだなこの人。
田舎のスーパーマーケット特有の無駄にデカい駐車場くらいのサイズあるよここ。
外周500mくらいある……これがむしろ1000万なの?
あとは外に厠がある。
この世界だいたいそうだもんね。
そこはもう気にしてもしゃーない。
敷地内に馬飼ってた名残があるね。
馬小屋は別にあったわ。
「ちなみに雨漏りはします?」
「古いですが欠陥はないですよ。点検はしております。雨漏りももちろんございませんし床抜けなどもございません。古さが気にならないならこのまま住んでいただけます。ただ木が多く使われてますので少しカビはあると思いますね。清掃は念入りにしていただく方がいいと思います。ご要望があれば手配しますよ」
うん、古い木の家の独特な匂いはするね。
田舎のおじいちゃんの家の匂いって感じ?
ただ、日本家屋じゃないからね。
この王都ヨーロッパ風だからめっちゃかっこいいよこの建物……
外に骨組みがむき出し建物の大っきな緑色の三角屋根で煙突が付いてる。
下の方が石造りで壁は泥とかでつくられてるんだろうか……。
淡い黄色の壁だ。ちょっと黒く汚れてるけどね。
ハーフティンバーっていうらしいよこういう建物の事。
むしろ憧れるくらいなんだけど……
『なんでこれ……?馬小屋レベルかと思ってきたんだけど……。超かっこよくね?永住してもいいんだが。異世界よくわからん……』
『なんででしょうか……。私もわかりません……。集落の私の家の方が全然古いと思いますが……古いとはなんでしょうか……。素敵すぎてびっくりしてます』
『このおうちすごいね~。これぜんぶ~?』
これを壊すつもりだったの?
勿体なさすぎるでしょ……
日本なら企業が買い取っておっきな喫茶店とか作るぞ多分。
販売するにはちょっと厳しいのかなぁ。はて……
ちなみにこの家に全力クリーンかけたらどうなるんだろう。
建物に試したことってなかったなそういえば。
「このお家が販売できないんですか……?」
「作りが古いのと販売できる築年数ではないですね。もう建てられて50年は経っていますからこの家自体に資産価値はもうないのですよ。土地としてなら売りに出せますがそうなるとこの家は邪魔でしょうね……さらに城壁の外なので買い手もつかず……」
あー。固定資産って減価償却とかあるよね。
詳しくないんだけど年数とかで資産価値がなくなっていくって仕組みだったと思う。
この世界にもあるんだな。
『まぁ一旦内装見てみよっか』
『そうですね。内装がボロボロなのかもしれませんから』
まずドアが緑色だ。
で輪っかの取っ手が付いてる。
これでノックするのかな?
入ると綺麗な小さな玄関があって壁に横に靴箱が埋め込まれているな。
で玄関の正面が部屋になってる。ひっろ。
家具はなにもないけれどこの部屋30畳以上あるんじゃないかなぁ……
内装も柱むき出し。むしろかっこいい。
木造で大きな窓が正面に2つあるね。もちろんガラスではないよ。
木の棒で下から開けて支えるタイプ。
なんと!さらに窓の間に暖炉あんの!
暖炉憧れるー!
ロッキングチェア置いて猫ちゃんひざの上でなでながらウトウトしてぇ!
『きれいだよ~?』
『都会は……わかりません……』
うん。ちょっと意味わかんない。本当に。
「家具はもうカビていたので全て捨ててしまいました。広いでしょう?前の所有者が農作業を室内でしていたので余分な部屋は作らないようにしたらしいですね。左の部屋が炊事場、右が寝室です。あと脇の階段から2階へ上がれます。上はお子様2人の部屋だったそうです」
キッチンの方にはアーチ型の出入り口があってドアはない。
カーテンでもつければいいのかな?
キッチンもなにもないね。
ただ外につながっている溝があるから水仕事をしてたんだろうな。
で、反対の寝室には茶色の木造のドアがあった。
こっちにもなにもないけど……
もうデカいし綺麗しか言うことないって。
ついでに柱むき出しの天井かっこいい!
全体的に天井高い!
この3部屋で1階。
全部で70畳以上あったよ……たぶんね。
広すぎて畳数換算ができねぇわ。
「中も結構きれいでしょう?古い家は作りが丈夫なんですよ。それに加えて床は退去前近くに張り替えていたらしいですね。急に引っ越しが決まったそうです」
「そうですか……。綺麗ですね……」
エステル口数減っちゃってるじゃんか。
2階にあがると廊下があって2部屋それぞれにドアがあった。
間取りは同じ。どっちも20畳くらいある四角い部屋。
大きな窓がひとつずつついていた。
こっちは横開きのドアっぽい窓だね。
これで内装の紹介はおわったんだけど……なんていうか……
これ金貨10枚で断る人いるの?
「この物件とてもお安いと思うんですけど……」
「そうですねぇ。築年数を除けば……もしこれが城壁内にあればもっと高かったでしょうか。金貨20枚は土地価格だけでも超えていたかと思います。一般の方に販売するには少し問題が多いのですよ。冒険者でも城壁外に家を構える方はいないですから。家で魔物に怯えるのは嫌でしょう?ここのご主人は元冒険者だったそうでその辺りも気にならなかったそうですが……」
まぁ、そりゃそうか……。
地球で言えば家の前ヤンキーの通学路って感じ?
違うかな。
『どうします?』
『うん、僕は問題ないよ。城壁の外なのも僕らには全然問題ないでしょ。そもそもだいたい野宿してたしもう外とかどうでもいいよ。むしろ城壁内のほうが騒がしくて嫌まである』
『わかります……。王都の城壁内よりは魔の森のほうがよかったかもしれません……』
『クラムも~おうちひろいね~?どこで寝よっかなぁ~?』
『どこで寝ような本当に。ただ倉庫作ったり風呂作ったりトイレも中に作ったりすれば実質使える範囲減るかな?』
『そうですね。生活区間以外のことで潰せば気にならないかもしれませんね?』
『庭も草茂ってたけどちゃんと刈って家庭菜園でも作ろう。イメージしてた家庭菜園よりかなりデカいけどね。まあ要らない分は柵狭めちゃえばいいっしょ』
『あ、それもそうですね?別に全部使う必要もないですし……』
『クラムがひろった木の実のタネうえるね~』
『おー?木生やしちゃうのか……。いいかも!じゃあブドウつくってワインつくろーぜ!!』
『ふふ、いいですね♪木を生やせば気にならないかもしれません』
……ふと我に返った。
『……なんで僕ら必死に家小さくしようとしてるんだろ』
『さぁ……』
『まぁ、いいや。ここにしよう!我が家決定!』
『はい♪』
『おうちやった~!』
「……ん……おはよ……決まった?」
「ここでお願いします。金貨10枚です。他費用は必要ですか?」
「清掃を手配するならその分が必要ですがいかがいたします?」
『いらない。建物まるごとクリーンしてみる。うまくいけば一発』
「大丈夫です。こちらで掃除はしますね」
「かしこまりました。ではこちらで権利の受け渡し手続きをして後日書類をお届けします。鍵と、門の通行書です。このままお使いになっていただいて大丈夫ですよ。いやー助かりました。いい取引でした。ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました!」
「それでは、馬車で一緒に王都に戻られますか?」
『NO!』
『やだ~』
「もう少し……寝ていい?」
「また気が向いたら徒歩で帰りますね。ありがとうございます」
「かしこまりました。また何かお困りでしたらお気軽にお越しください。では」
はー!家決まったああ!
まさかこんな方向で悩むとは……
ここで落ち着けるかなあ……おっきいなぁ。
地球基準だけどゼッタイ億越え物件だってこれ。
異世界よくわからんわ。
そして家でも結局そんなにお金使えなかった。
この家族本当にお金要らないな……
減らない……。急いで魔物狩ってすらないのに……。
あ……家受け取っちゃったけど宿……
帰りたくない……うう。
67
あなたにおすすめの小説
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学4巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
青い鳥と 日記 〜コウタとディック 幸せを詰め込んで〜
Yokoちー
ファンタジー
もふもふと優しい大人達に温かく見守られて育つコウタの幸せ日記です。コウタの成長を一緒に楽しみませんか?
(長編になります。閑話ですと登場人物が少なくて読みやすいかもしれません)
地球で生まれた小さな魂。あまりの輝きに見合った器(身体)が見つからない。そこで新米女神の星で生を受けることになる。
小さな身体に何でも吸収する大きな器。だが、運命の日を迎え、両親との幸せな日々はたった三年で終わりを告げる。
辺境伯に拾われたコウタ。神鳥ソラと温かな家族を巻き込んで今日もほのぼのマイペース。置かれた場所で精一杯に生きていく。
「小説家になろう」「カクヨム」でも投稿しています。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる