異世界でダンジョンと過ごすことになりました

床間信生

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二戦目

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どうやら俺は勘違いをしていたようだ。

これまでのゴブリンの行動を見ると、どいつもこいつも自分勝手にただ何も考えず、感情のままに襲ってくる。
それがゴブリンだと思っていた。

だからゴブリンたちが少女を探しているのは、予想がついていても、どうにかなるだろうなとどこか軽く考えていたのだが、一部なのか全体なのかは定かではないが、やつらも距離をとったり仲間を呼んだりという、考えを必要とする行動をとることもあるらしい。

遠くにいるゴブリンの叫び声は時間がたってもやむことはなく、それに応じて時間ごとにやつの周囲には仲間が集まってくる。
後ろを見るとリンは俺とは反対方向、既に撤退を決めていた。
一瞬、切ない気持ちになってしまったが、前回のように判断をミスしてせっかく集めた魔石を無駄にはしたくない。
なので昨日の夜、彼女には打ち合わせにないことや判断に迷うことがあったらその場ですぐに逃げろと伝えている。

そんなことを考えていると、ほどなくしてゴブリンの叫び声がやんだ。
声をあげたゴブリンは、俺を倒すのにじゅうぶんな数が集まったと判断したのだろう。
その数は全部で12匹。

だが、このくらいの数なら後ろさえとられなければ今の俺でもじゅうぶんに戦えるはずだ。

ヤツラの考えはまだ甘い。

そう思って俺は、近くにある大きな木を背にしてヤツラを思いっきり睨み付ける。

だが、いつまでたっても襲ってこない。
あいつらの性格であれば、数が揃っているんだから躊躇うということはないはずだ。

何故だろう…

「先にこっちから仕掛けた方がいいのかな?」なんてことを思っていると、その答えがすぐに判明する。

集まったゴブリンたちの後ろの草かげが不自然に揺れて一匹のゴブリンが現れた。
そのゴブリンは、右手に包丁を持ち、左手で何を招くような動作をしている。

あの包丁は、そう!
俺が奪われた包丁だ。

そして、そのゴブリンに招かれるようにホブゴブリン、ヤツが現れた。

服装や腰にさげている剣などは、前回と変わりはないが頭にはあの時、俺がしていた『安全第一』と書かれたヘルメットをしている。

全くそのヘルメットに書かれている言葉の意味をヤツは理解しているのだろうか…

そんな俺の考えなど関係なしとでも言いたげに、ヤツは周囲のゴブリンを脇に寄せ、ゆっくり歩み寄りながら俺を睨み付けた。

その視線に安全第一なんてことが全く込められていないのは誰だって分かる。
明らかにハイリスクハイリターンしか頭にないのだろう。
俺は勝てる見込みがないのは承知で思いっきり睨み返す。

すると…
ヤツの歩みが止まった。

俺との距離数メートルといった位置だ。

ヤツの眉間にシワがより、その目線が俺から外れる。

その理由はすぐに分かった。
昨日の記憶がヤツの中にあるということなのだろう。

「昨日、確かに自分がシッカリと止めをさして、最後にはみんなで食べたはずのヤツが何故今自分の前にいるのか」というようなことを考えているに違いない。
少なくとも俺がヤツの立場であれば、間違いなく考えている自信がある。
その理由は、ホムンクルス人造人間ということになるのだが、もちろんそんな事を親切丁寧にヤツに教えてやる必要など微塵もない。

というか言葉が通じるのかも不明だ。

そして同時に、この一瞬というのは俺にとってチャンスである。

ヤツと俺の単純な力量を比べると先ず間違いなく、俺の方が格下だ。
その事は俺の方も自覚している。
恐らく俺の外見からヤツも少なからず似たような感覚があるのだろう。
それ故にヤツは俺から視線を外したのだ。

それは即ち、俺にとって千載一遇のチャンスに他ならない。

そう思った俺は、自分の右手に持っていた包丁を両手でシッカリと握り直す。
そして、そのまま腰に構えてヤツを見据えながら一気に走り出した。

目の前のヤツにとっては、俺の行動は予想外だったのだろう。
一瞬だが狼狽えたような素振りを見せる。
そして剣を抜いて威嚇でもしてやろうとか考えていたのだろうが、俺との距離数メートルで一瞬狼狽えてそんなに余裕などあるわけがない。
焦ったヤツは、腰に指している剣がスムーズに抜けなくて更に焦る。

そして次の瞬間には俺の体がヤツの体と重なった。

俺は自分の左足をヤツの右足に引っ掻けて自分の体重をあずける。
更にそのまま両手でシッカリと握った包丁を渾身の力を込めて突きつけ、ヤツを下にしたまま一緒に倒れた。
手先の力だけではない。
自分の全体重をかけて、ヤツの左腹に包丁を突き立ててやった。

これが今の俺の渾身の一撃だ。

ヤツは左腹から血が流れると、そのまま暴れだす。
もちろん俺の方もこの一撃で終わらせるつもりなど毛頭ない。
せっかく巡ってきた千載一遇のチャンスなのだから、更なる追撃をここで加えここでシッカリとヤツと決着をつけておきたいのだ。

暴れるヤツから離れたくない俺、「仕切り直しでは絶対に勝てる気がしない」と思い、振りほどかれないように必死に馬乗りポジションをキープしたまま、包丁を抜いてすぐさま両手で逆さ持ちに持ち帰る。

後はこのままヤツの喉元にでも追撃できれば、後は一気にケリがつけられるはずだ。
そう思い包丁を振り下ろそうとしたところ、今度は周囲にいたゴブリンたちが一斉に俺の元に押し寄せてきた。

最初の一匹がわざと俺に刺されるように身をていする。
その次に二匹のゴブリンがそれぞれ左右から俺の両手を掴みとるようにした後、その他のゴブリンが一気に俺に体当たりを浴びせてきた。

そしてそのまま俺とホブゴブリンの間に距離が生まれると、ヤツは腹を押さえながら立ち上がり、俺を思いっきり睨み付けた後、他のゴブリンと一緒に俺の元から姿を消す。

ヤツの姿が見えなくなった後で、山全体を震わせたのではないかと思えるほどの咆哮が聞こえた。

なんてことだ…
千載一遇のチャンスだったのに…

いまだに多数のゴブリンに押さえつけられている状況には変わらない
だが、なんだか抵抗する気が起きない。

直後、リンが助けに戻ってくるのだが、それまで俺は好き勝手ゴブリンにいたぶられていた。
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