世界のためなら何度でも

つぼっち

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第一章、長い長い英雄譚のはじまりはじまり

#2 与えられたアメとムチ

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そう言って女神は魔術か何かで空間に穴を開け、何かを取り出した。

「あ、あった! はいこれ。この中から好きなのを選んでね。」

そう言って何枚かのカードを渡される。

カードには文字が書かれていている。

「何ですかこれ?」

「えぇ~? 言わなくてもわかるでしょ。はぁー、これだから大罪認定されるバカは…」

いちいちムカつくやつだな。

今度顔面をグーで殴ってやる。

「これは好きな魔術を1属性だけプレゼントしてあげるカード。ほら、さっさと選んで。次の人がつっかえてんだから。」

「なんでこんなものを俺に?」

「異世界転移の特典ってやつ。大罪人にも渡さないといけないのよ。ほら、武士の情けってやつよ」

「武士って、あんた女神だろ」

「……別にいいでしょ!!女神の情け!!!!」

俺はあらためてカードを見る。

ほんとだ、魔術の属性と詳細みたいなのが書かれている。

えーっと、どれどれ?


火炎魔術・・・灼熱の炎を操る魔術。


氷結魔術・・・絶対零度の氷を操る魔術。


猛毒魔術・・・敵を苦しめる猛毒を操る魔術。


雷鳴魔術・・・轟く雷鳴を操る魔術。


浄化魔術・・・ものを清め、直すことができる魔術。


死霊魔術・・・死体や魂を操る魔術。


ふーむ。

こういうところでは間違った選択が生死を分けるからな、慎重に選ばないと。


30分経過

「ねぇまだ? そろそろ次の人たちが詰まってきたから早くしてくれない?」

「もうちょっと待ってください!」



1時間経過

「チッ」

女神がイラついてとうとう舌打ちまでしてきた。

だが、ここで下手に選べば死ぬ可能性もある。

焦らず、じっくり考えないと



2時間経過

「スースー」

女神はよほど暇になったのか30分前に寝てしまった。

そして肝心な俺はというと

「これだ!」

試行錯誤を繰り返し、たどり着いた答えは

〈火炎魔術〉

だ。

「おい女神。もう選んだから送ってもらっていいぞ」

「あ、まだやることが残ってるわよ」

そういうと、女神の手のひらから青黒く、禍々しいオーラのようなものが出る。

「あ、あのー女神様? それは一体……」

「あら? まさか大罪人をそのまま野放しにすると思った?これは〈大罪スキル〉って言って大罪を犯したものへの足枷みたいなものよ。」

そういうと、禍々しいオーラは俺の体に吸い込まれていった。

「グァァァァァァァァ!」

全身を突き刺すような痛みが襲う。

「名前も異世界っぽく改名しましようか。そうね、暴食だしグラトニーとかどう?ふふ、罪人にぴったりな名前ね。」

女神が何か言っているが痛みで何も聞こえない。

だんだん意識が遠のいていく。

「さてと、そろそろ時間ね。それじゃあこの世界で自分の罪を償いなさい。さようならグラトニー。」

そのまま俺は視界が暗くなっていくのを感じ、目を閉じた。
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