世界のためなら何度でも

第六章、偽物注意報発令中

#94 生きていく理由

「私はアスモデウス。地獄に君臨する色欲を司る大悪魔よ、よろしくね。」

「よ、よろしく。」

普段女性と喋らないせいか無駄に緊張するな。

そしてムラムラする。

『こいつの力なら相手の固有結界に入ることも簡単だろ。頼むぞアスモデウス。』

『任せて！』

アスモデウスはそう言って魔剣の中に憑依する。

「この状態で彼の胸を突き刺すのよ。」

「突き刺すの！？」

「大丈夫、私の力で痛くないから。」

「え～……、わかった。」

俺はダークの胸をそっと突き刺した。

自分で自分の胸を突き刺すってなんか嫌だな。

剣が突き刺さると俺はゆっくりとダークの頭の中へ吸い込まれるような感覚がした。




目が覚めると黒い空間に寝ていた。

「ここはどこだ？」

「おいおい、自分できたくせにどことかいうなよ。」

声の主はダークだった。

「お前に謝りたいことがあったんだ。」

「なんだ？」

「実は命令っていうのは嘘だったんだ。」

「は？」

ここに来て衝撃の事実を言われた。

「俺は天之川研究会で作られた人造人間、ただ作られた目的はお前を殺すわけではなく、単なる生物兵器として作られた。」

ダークは寂しげな表情をして話を続ける。

「俺は生まれた瞬間から兵器としての職務を全うすべく人間の国に攻め込んでいた。お前の戦闘データを取るためでもあったらしいけどな。ある日俺にお前の記憶が流れてきたんだ、お前がゼロやミルドと一緒に楽しく生きている記憶が。それが俺の中では許せなかった、偽物として作られただけでお前みたいに楽しい人生をおくれなかったんだって、お前が存在するから俺が作られてこんな状況になったんだって！！！！」

ダークは拳を握りしめて吐き捨てる。

「だから天之川にデータを取るためにお前のところに送られた時嬉しかったんだよ。復讐としてお前を殺すためにここにきた。でもその考えは変わったんだよ、仲間に心から信頼されているお前を見て、これは復讐なんかじゃない。ただの逆恨みなんだって。」

ダークは涙をボロボロと地面にこぼす。

「殺してくれ……。」

ダークは膝から崩れ落ちた。

「俺の不死は心臓を真っ二つにすれば溶ける。だから憑依を解いて殺してくれ。」

「…………。」

「俺にはもう生きていく意味もない。もう疲れたんだよ、生きていくのが。」

「それは違う。」

俺は口を開いた。

「全生物には生きている理由がある。それはどんな生物だって例外じゃない。犯罪を犯すようなクズでも普通の人間でもお前みたいに無から作られたとしてもだ。」

「でも俺には……。」

「でもじゃないんだよ。生きていく理由がないなら探せばいい、意味がないなら作ればいいんだよ。」

ダークは泣きながら仰向けに倒れる。

「俺と融合しろ。そして明日を迎えるんだ。」

「…………。」

俺はダークに手を

ダークは無言で俺の手を握り返した。

「「融合！！」」

魂だけの存在となったダークは俺の魂と融合されていった。